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別れた恋人のSNS監視は「心の回復」を妨げる

  • 2025.12.23
Credit: canva

別れた恋人のことはもう終わったはずなのに、気づくとSNSで近況を確認してしまう。

実はこの行動は、ただの「未練」では片づけられないかもしれません。

カナダ・マクマスター大学(Mac)の最新研究で、別れた恋人をSNSで見続けることは、心の回復を遅らせ、苦痛や嫉妬、ネガティブな気分を強める傾向が示されました。

研究の詳細は2025年11月20日付で学術誌『Computers in Human Behavior』に掲載されています。

目次

  • 元恋人のSNSチェックにより心的ダメージ
  • なぜSNSは「元恋人」を刺激的に見せてしまうのか

元恋人のSNSチェックにより心的ダメージ

研究チームは今回、元恋人をSNSで観察する行動が、単に「今つらい人がSNSを見る」だけなのか、それとも「見ることでさらに回復が悪化する」のかを切り分けるため、異なる方法で複数の研究を実施。

まず一つ目では、過去3カ月以内に破局を経験した成人194人(Facebookユーザーで、元恋人のプロフィールを少なくとも一度見た経験がある人)を対象に、最初の時点と6カ月後で、苦痛や嫉妬、Facebook上での能動的な監視行動などを測定しました。

その結果、元恋人のFacebookを頻繁にチェックする人ほど、開始時点でも6カ月後でも、苦痛と嫉妬が高い傾向がありました。

多くの参加者では時間とともに苦痛が下がっていきましたが、能動的な監視が強い人では、ネガティブな気分が6カ月の間に上がっていくというパターンも見られました。

2つ目は、過去1年以内に破局を経験した米国の成人407人を、ランダムに次の3つのグループに割り当てました。

元恋人のFacebookプロフィールを見ている場面を想像する群、知人のFacebookを想像する群、SNSとは無関係に学校や職場で元恋人に会う場面を想像する群です。

すると、元恋人のFacebookを想像した群が最も嫉妬を強く感じ、その嫉妬はネガティブ感情と破局の苦痛の高さにつながっていました。

単に元恋人を思い浮かべるだけでなく、SNSという場が特別に嫉妬を引き起こしやすいことが示唆されます。

なぜSNSは「元恋人」を刺激的に見せてしまうのか

SNSで元恋人を見ることがつらいのは、思い出が蘇るからだけではありません。

先の研究が示唆するように、SNSという文脈そのものが嫉妬を増幅させる要素になり得ます。

現実の場面で元恋人を思い浮かべるとき、私たちは想像の中で情報量をある程度コントロールできます。

しかしSNSは、写真や交際ステータス、投稿頻度、誰が「いいね」をしたか、誰と絡んでいるかといった、関係の気配を生々しく提示します。

しかも、こちらが望まなくてもフィードに流れ込むことがあります。

一方で、より深刻なのは能動的観察です。

「確認しに行く」行為は、一瞬だけ気が済むように見えて、翌日まで苦痛を引きずる方向と結びついていました。

ここには、かゆい所をかくほど皮膚が荒れるのに似た力学があります。

情報を得れば得るほど、比較や想像が増え、さらに気になってまた見に行きたくなる。

その循環が回復の足を引っ張る可能性が、複数の研究で一貫して示されました。

恋人との別れの回復は、気合や根性だけで早まるものではありません。

今回の研究は、元恋人をSNSで見続けること自体が、苦痛や嫉妬を増やし、回復を遅らせる方向と結びつく可能性を示しました。

特に、自分から探しに行く能動的な監視は、翌日の苦痛まで引き上げるという点で要注意です。

今後は、元恋人をブロックやフォロー解除した群のほうが回復が速いかどうかを確かめる介入研究も提案されています。

参考文献

Social media surveillance of ex-partners linked to worse breakup recovery
https://www.psypost.org/social-media-surveillance-of-ex-partners-linked-to-worse-breakup-recovery/

元論文

Social media observation of ex-partners is associated with greater breakup distress, negative affect, and jealousy
https://doi.org/10.1016/j.chb.2025.108869

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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