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【漫画】「この最期でよかったのか」看取る度に悩む看護師が、一人の患者さんから得た“気づき”

  • 2025.12.22

看護師兼イラストレーターの「ツナ看。」さんの漫画「さいごを決めたあなたへ。」(全5話)がインスタグラムで合計2万3000以上の「いいね」を集めて話題となっています。

「この人にとっての最期って、何が最善なんだろう」。看護師として働く作者がそう感じるとき、いつも思い出す患者さんがいました。その患者さんとの日々がもたらした、彼女の考え方の変化とは…という内容で、読者からは「深く考えさせられる作品でした」「同業者として、勉強になりました」などの声が上がっています。

何度経験しても慣れない「最期」と向き合うこと

漫画「さいごを決めたあなたへ」のカット(ツナ看。さん提供)
漫画「さいごを決めたあなたへ」のカット(ツナ看。さん提供)

インスタグラムで漫画を発表している「ツナ看。」さんに、作品についての話を聞きました。

Q.今回、漫画「さいごを決めたあなたへ」を描いたきっかけを教えてください。

ツナ看。さん「この物語自体は、数年前からずっと描きたいと思っていました。看取りを何度も経験する中で、どうして毎回『やりきった』『これでよかった』と思えないんだろう、と感じていました。そのときは最善と思っていたのに、みんなで何度もカンファレンスして決めたのに、なんで亡くなった後は『これでよかったのかな』っていう思いになるんだろうと。これが新人だけではなく、十何年も経験年数のある先輩ですら同じだったことがとても不思議で。恐らく『これでよかった』という権利があるのは患者さん本人だけなんですが、亡くなってしまわれたら答えを聞くことなんてできないので、私たちは一生悩み続けるんだろうなと思います。『これでよかった』と自分で言い切るには傲慢すぎるけれど、『でも誰かに言ってもらいたい』『でなければ、一体何のために頑張ったのか分からない』と苦しむ医療者は、たくさんいるんじゃないでしょうか。きっとその虚しさのあまり、辞めてしまう人もいると思います。 この漫画は、そんな優しい人たちが『正解じゃないなら、自分たちがしてきたことは無駄だ』と勘違いしてしまわないように、という思いで描きました。特に、正解がないだけに葛藤の多い医療の現場で、尽力されているスタッフや、患者家族の方々の心が軽くなればいいなという気持ちが込められています」

Q.看護師として、特に「やりがい」を感じるのはどのようなときですか。

ツナ看。さん「今年から訪問看護を担当することになり、病状的に安定した人に関わる機会が多くなりました。『利用者さんとの距離が縮まった』と実感できたときや、看護師として頼りにしてもらえたときなどに、特にやりがいを感じますね。初めてお会いしてからしばらくは、お互いにどこかよそよそしい感じになりがちですが、ある日を境に『実は…』と本音を話してくれるようになったり、『相談してよかった』『来てくれて安心した』と頼りにしてもらえたりするんです。苦しいことやつらいことってなかなか人に話しにくいと思うのですが、『この人なら話してもいいかな』と信頼してもらえた気がして。その瞬間はこの仕事を続けていてよかったなと感じますね」

Q.反対に「大変だな」と感じるのはどのようなときですか。

ツナ看。さん「この漫画の内容とひもづけて答えるなら、『患者さんの意向を最優先としてケアを組み立てること』でしょうか。この言い方は語弊があるかもしれないのですが、実際大変なことなので、あえてこのように回答しました。 登場人物の患者さんが、しんどい思いでポータブルトイレを利用している描写があるのですが、身体的な負担を考えると膀胱留置カテーテルを入れた方がいい状況なんです。でもそれをしないのは、患者さんが自分でトイレに行きたいという思いがあったからです。これを教科書で書くとしたら『患者さんの思いを尊重する』っていう端的な言葉になるんですけれど、これによって私たち看護師サイドの負担は倍以上になります。トイレのたびに訪室して、移乗介助して、ルート類が絡まらないように気を付けて、用を足すまで待機して。これが1日に何回・何日も続くので、実際本当に『大変』です。でも、死に直面している人の心境を思うと、私の『大変』ってその場限りなんですよね。忙しいと忘れてしまいがちなんですけれど…」

Q.「看護師として生きる」、今後はどのような看護師を目指していきたいですか。

ツナ看。さん「型にはまりすぎない、落ち着く距離感を保てる看護師でいたいなって思います。看護師って問題解決思考なので、患者さんが『こうしたい』って言っても、『こうした方がいい』って言ってしまうのですが、『患者さんがそうしたいならいいと思います』って言える人でいたいなあと。もちろんリスクは説明しますし、本人が気付いていない危険がある場合は知らせるのですが、後はある程度離れた距離にいるみたいな。そうしないと患者さんは自分で選んだ実感もないし、その結果起こったことを受け入れられないと思うんです。『長年会っていないけれど、話したいことや聞きたいことなどがあったら連絡する友達』くらいの距離感がいいなって思います」

Q.「これから看護師を目指す」という方々に向けて、エールやメッセージをお願いします。

ツナ看。さん「異論はあるかと思いますが、『結果ではなく、過程を大事にしてください』と伝えたいです。皆さんは今後も、自分が行動したことに対するいろいろな『結果』を経験されるかと思います。たとえその結果が望んでいなかったものでも、そこに至ったあなたの努力や葛藤、費やした時間、凝らした工夫や思いを無駄と思わないでください。 今回の漫画に沿って考えるなら、患者さんは予期せぬ形で亡くなってしまう結果でしたが、そこに至るまでのスタッフの努力は決して間違いではありませんでした。『結果こうなってしまったけれど、自分たちは確かに全力を出した』と、自信を持てる人でいてください。『なんでこんなことをしたのだろう』『こうすればよかった』と思うことは多々あるかもしれませんが、そのときはそうしたいと思う理由がきっとあったと思います。実習や初めての臨床を経験されるにあたって、少しでもこの考え方が、皆さんの心を軽くする一助となればうれしいです」

Q.漫画「さいごを決めたあなたへ」について、どのようなコメントが寄せられていますか。

ツナ看。さん「看護師さんだけでなく、介護士さんや医療事務さん、ご遺族の方々など、たくさんのコメントがあって驚きました。多かったのは『看取りのたびに感じていたモヤモヤが消えました』『まったく同じことを毎回悩んでいます』といったコメントですね。私が感じていた思いは、想像以上に多くの人たちが感じていたんだなと。『モヤモヤが消えました』という言葉は、やはり漫画を描いてよかったなと純粋に思えましたし、うれしかったです」

オトナンサー編集部

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