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レゴビルダーokkaがつくる「レゴの手のひら建築」が楽しい!

  • 2025.12.22
SATOSHI TAMURA

「LEGOで手のひらサイズの建築を作ってみる」というテーマで、名建築をレゴで再現し、Xで投稿を続けているレゴビルダーのokka(オッカ)さん。12月1日には、319作品目、妹島和世・設計の日本女子大学図書館棟が投稿された。基本は手のひらに乗るくらいの大きさで、建物の特徴をうまく捉え、レゴブロックならではのかわいらしさがある。

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初めてつくったのは安藤忠雄建築

幼い頃からレゴは好きだったというokkaさん。建築をレゴで再現し始めたのはおよそ7年前のこと。

「20代の頃から建築に関心が生まれ写真を撮りに行ったりしていたんです。子どもが成長して遊ばなくなったレゴが家にあって。レゴが好き、建築が好き、という2つの好きが一緒になって生まれた趣味ですね」

最初に挑戦したのは安藤忠雄・設計の「住吉の長屋」だ。レゴで建物をつくる時、外観を似せてつくるが、「住吉の長屋」は家の中に庭を設けた点が特徴なので内側もつくりたいと考え、壁の一部を取り外せるようにしてつくった。

「写真や図面は既にたくさん見てきた建物でしたが、レゴで再現するために、改めて細かい部分まで見たくなりました。調べ直すことで構造を詳しく知ることもできて楽しい。実際は両隣に建物があって見られない部分がありますが、レゴで再現すると建物を丸ごと見られるのもいいですね」

<写真>okkaさんがレゴでつくった安藤忠雄・設計「住吉の長屋」。記事中のレゴ作品はすべてokkaさんが制作。

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次につくった安藤忠雄・設計の「光の教会」は、シンプルに見えるが、十字架の部分が難関だった。

「『光の教会』はコンクリート壁にスリットを入れて十字架を表現した点が重要です。この部分がレゴブロックでも十字架に見えないと成立しません。縦方向の組み方と横方向の組み方を混ぜて、マニアックな組み方をしています」

こうして、okkaさんは日本の名建築や、海外ではル・コルビュジエの名建築など、さまざまな名建築をつくるように。

「レゴから発売されている建築をテーマにした“レゴアーキテクチャー”というセットもあり、それも良いのですが、大きさがネックでした。好きな建築はいくつも部屋に飾りたいので……。そこで、手のひらにのるくらいのサイズにこだわってつくるようになりました。このくらいなら本棚にも並べられます」

<写真>レゴでつくった安藤忠雄・設計「光の教会」。

Photo SATOSHI TAMURA

手を使って、部品と相談するようにして考えていくのがokkaさんのやり方だ。「組み立ての説明書がないのがいいんです」と話す。

階や窓の数は、実際とは違うことがある。比率をブロックで厳密に再現すると完成形がとても大きくなってしまうのだ。建物の特徴や、好きなポイントを軸に全体的な見た目をまとめていく。

<写真>安藤忠雄・設計「住吉の長屋」のファサード部分の組み立てを見せてくれたokkaさん。

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東京駅のドームは雪の結晶のパーツで

okkaさんのレゴ建築のルールは、レゴだけを使ってつくること。レゴブロックの改変や、他のモノを用いることなく、レゴのブロックやパーツだけでつくり上げる。

「ブロックは直方体が基本なので、曲線を出すのが難しい。辰野金吾が設計した東京駅も、ドームの部分に悩みました。レゴに雪の結晶の形のパーツがあって、その6つの先端にブロックをはめることで円の形を出しそこからドームをつくって解決しました」

<写真>上から、レゴでつくった東京駅と実際の東京駅。辰野金吾が設計した東京駅は1914年竣工。第2次世界大戦でドームなどを焼失、2012年に創建時の姿に復元された。

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難しかったフランク・ロイド・ライトの旧帝国ホテル

レゴ作品を展示発表する機会ができ、東京駅やフランク・ロイド・ライト・設計の旧帝国ホテルなど、大きく、複雑な建築にも挑戦するように。両手で抱えるくらいのサイズになるが、作品は大きくなっても細部をきっちり再現するのではなく、その建築の個性をレゴでシンプルに表現することを大切にしている。

「旧帝国ホテルは特に難しかったですね。1968年に解体され、博物館明治村に玄関が移築されて残っていますが、そのほかは現存していないので写真や図面から想像するほかありません。ライトの建築は意匠がこっているので窓一つをとっても、どのレゴのパーツを選んだらライトの建築らしく見えるだろうかと随分考えました」

<写真>上から、レゴでつくったフランク・ロイド・ライト設計の旧帝国ホテルと、旧帝国ホテルが現存していた頃の写真。okkaさんは玄関前の水盤から取り掛かり、バランスを決めていった。

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初めての人にもおススメ、ル・コルビュジエのサヴォア邸

レゴは子どもの頃に遊んだきりだが建築をつくってみたい、という人に、おススメの建築を聞いてみた。

「ル・コルビュジエのサヴォア邸でしょうか。シンプルなのでパーツがそろえば比較的つくりやすいと思います。レゴでつくってもやはり美しいですし、完成した時にこの名建築を部屋に飾れる!という達成感があるのでおススメです。建築や図面が好きな方でしたら1時間半くらいでつくれるのでは。自分は安藤忠雄さんが出されたル・コルビュジエの本で何十回と図面を見ていたというのもありますが、1度で形が決まりました」

<写真>上から、レゴでつくったル・コルビュジエ設計のサヴォア邸。下は北西側から見たサヴォア邸。

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ソニーの新旧のビルを並べ、銀座メゾンエルメスはLEDを点灯

建物を並べて眺められるのもレゴ建築の良いところ。例えば銀座・数寄屋橋交差点のランドマーク、1966年築のソニービルから、2018~2021年の建て替え中、2025年に完成した銀座ソニーパークまで、ソニーの歴代の建物を並べ、その隣に2001年築の銀座メゾンエルメスを置くと、街並みの移り変わりが目に浮かんでくる。

建物によっては照明を組み込むことも。レンゾ・ピアノが設計した銀座メゾンエルメスは、特徴的なガラスブロックの外壁を透明なレゴブロックで。さらにLEDを仕込んで、店内に明かりがともっている様子も演出した。建物の中央部に設置されている新宮晋のアートや屋上の騎馬像はその通りの形ではないが、パッと見て銀座メゾンエルメスを感じさせる仕上がりだ。


考えてみれば、幼い頃は手にしたブロックで家らしきものをつくったもの。レゴの名建築に親しみが湧くのは自然なことなのかもしれない。

okkaさんのレゴ作品を以下にいくつか紹介しよう。合わせて「500作品を目指しています」というokkaさんのXをぜひチェックしてみてほしい。

<写真>上は、左から銀座メゾンエルメス、ソニービル(1966年築)、建て替え中の銀座ソニーパーク(2018-2021年)、現在の銀座ソニーパーク(2025年-)を並べたところ。下は中に仕込んだLEDを点灯させた銀座メゾンエルメス。

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中銀カプセルタワー

黒川紀章設計、1972年築の中銀カプセルタワーは、レゴ建築をつくり始めた7年前に初めて制作し、それから何度かつくり直している。「メタボリズム建築の有名作品ですし、カプセルが積み重なるところはレゴっぽさもありつくりたくなりました」とokkaさん。カプセルは、車のライトの部分に使うパーツでつくっている。

<写真>左から、レゴでつくった中銀カプセルタワー。右はかつて銀座にあった中銀カプセルタワー。2022年に解体、一部のカプセルは美術館や企業が保存している。

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セイコーハウス(SEIKO HOUSE)

服部時計店本社として1932年竣工、設計は渡辺仁。1952年、服部時計店本店と銀座・和光の社屋に。2022年に和光本館より現名称「セイコーハウス(SEIKO HOUSE)」となった銀座のランドマーク。2024年に制作。後に、これも何度かつくり変えている。正面の曲線の部分は、東京駅のドームでも使ったレゴの雪の結晶のパーツを活用。実際の比率よりも時計塔を大きくつくっている。地下鉄駅の入り口が添えられているのもニクイ。

<写真>上から、レゴでつくったセイコーハウス。銀座四丁目交差点に立つセイコーハウス。

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歌舞伎座

銀座の歌舞伎座も、屋根の意匠などレゴでの再現が難しかった作品の一つ。現在の歌舞伎座は、第5期(2013年築、三菱地所設計、隈研吾建築都市設計事務所による共同設計)で、戦後、第3期(1924年築、岡田信一郎設計)の建物を踏襲して建設された第4期(1950年築、吉田五十八設計)の外観を再現して建替えられている。破風(はふ)など伝統建築の華やかな造形をレゴで組み立てるのは楽しいとokkaさん。

<写真>上から、レゴで再現した歌舞伎座のファサード。下は第5期の歌舞伎座、29階建てのタワーが一体となっている。

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太宰府天満宮仮殿

太宰府天満宮の御本殿の大改修に際し、藤本壮介が設計、2023年5月より参拝の場となっている仮殿。太宰府で実際に見て、圧倒されてつくり出したという。草木をのせた屋根は実際にはカーブしているがそのままをブロックで再現するのは難しいので、そこは割り切り、屋根の上の樹木や草木の表現を工夫した。黒く細い柱がこの建物のポイントだと見極め、配置に注意して組み立てている。

<写真>上から、レゴでつくった太宰府天満宮仮殿、これは2作目。下は草木がぐんぐんと育ってきた太宰府天満宮仮殿の様子。

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すみだ北斎美術館

妹島和世が設計、2016年に開館したすみだ北斎美術館。okkaさんは建築に興味を持ち始めた20代の頃から、透明感のある妹島和世建築が好きでいろいろと見に行ったという。この建築は大きな三角の切り込みと、淡い鏡面のアルミパネルが輝く外壁が特徴的だが、レゴには残念ながら金属のように輝き、三角の形状を出せるパーツがない。シンプルにグレーのブロックでつくり、建物の下部の角度が付いている部分は、レゴのヒンジのパーツを使って角度を出している。

<写真>上から、レゴで制作したすみだ北斎美術館。下はすみだ北斎美術館を公園側から見たところ。

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落水荘

フランク・ロイド・ライト設計、1936年築の落水荘。建物の特徴を出すのはもちろん、水の流れや木立などの環境も工夫して制作。1年前くらいにつくったが、もっと落水荘らしく表現できるのではと3カ月おきくらいにつくり直している。ブラッシュアップも楽しい時間だそうだ。

<写真>上から、レゴでつくった落水荘。下の写真のように落水荘は滝の上に張り出すようにして立ち、木々に覆われている。

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マルセイユのユニテ・ダビタシオン

ル・コルビュジエを代表する仕事の一つ、フランス・マルセイユの集合住宅ユニテ・ダビタシオン、1952年築。このほかにナントやベルリンにもユニテ・ダビタシオンは建設された。ユニテ・ダビタシオンはokkaさんが、ずっとレゴでつくりたかった建築の一つ。実際とは階数をはじめさまざま異なる部分があるが、この建物に特徴的なピロティやカラフルな壁面などによってユニテ・ダビタシオンらしさが表現されている。

<写真>上から、レゴでつくったマルセイユのユニテ・ダビタシオン、西側から見たところ。下はマルセイユのユニテ・ダビタシオンを東側から見たところ。

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迎賓館赤坂離宮

迎賓館赤坂離宮は、東宮御所として1909年に建設された。片山東熊が設計したネオ・バロック様式による宮殿建築。デコラティブでつくっていて楽しいタイプの建築とokkaさん。「レゴなんですが、もう建物を建てているような気分になってきます」。装飾の部分を工夫しつつ、建物の曲線をうまく出していった。

<写真>上から、レゴでつくった迎賓館赤坂離宮、持ち運べるように左右2つに分けてつくった。下の写真を見るとレゴでは両端が実際よりも短い比率でつくっているのがわかる。


okkaさん X @okka5lego


*出典:迎賓館ウェブサイト(geihinkan.go.jp)、PDL1.0(digital.go.jp/resources/open_data/public_data_license_v1.0)

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