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「酒じゃないから健康的」は誤解…「ノンアルコールビール」飲み過ぎが招く“健康リスク”とは【糖尿病専門医が解説】

  • 2025.12.21

近年、健康志向の高まりを受け、ノンアルコールビールが注目されています。スーパーに行くとさまざまな商品が売られているほか、ノンアルコールビールを取り扱う飲食店も増えており、愛飲している人は多いのではないでしょうか。SNS上では「休肝日はノンアルコールビールを飲んでいる」「最近のノンアルコールビールの味はおいしい」「長期間お酒を我慢できているのは、本当にノンアルコールビールのおかげ」などの声が上がっています。

一方、「三鷹駅前たなか糖尿病・内科クリニック」(東京都三鷹市)院長で、糖尿病専門医の田中祐希さんは、「『ノンアルコールビールは、アルコールが含まれていないから健康的』と誤解している人が多く、中には毎日2~3本飲んでいる患者も少なくありません」と話しており、飲み過ぎには注意が必要だと指摘します。

もしノンアルコール飲料を飲み過ぎた場合、どのような健康リスクが生じる可能性があるのでしょうか。田中さんに聞きました。

ノンアルビールでもアルコールを微量含む商品も

ノンアルコールビールを飲み過ぎるとどうなる?(画像はイメージ)
ノンアルコールビールを飲み過ぎるとどうなる?(画像はイメージ)

Q.ノンアルコールビールを飲む際の注意点や、1日の摂取目安量について、教えてください。

田中さん「運転前や、医師に飲酒を止められていてお酒が飲めないときによく飲まれるのがノンアルコールビールですが、一口にノンアルコールビールといっても、全くアルコールを含まない商品もあれば、アルコールを微量含む商品もあります。

また、糖質について、全く含まない商品と多く含む商品があり、実はその実態はさまざまです。まずノンアルコールの定義ですが、アルコール分が1%未満であれば、法律上お酒に該当しないため、ノンアルコール飲料といわれます。

そしてアルコール分0.00%で全く含まないノンアルコールビールと、1%未満ではありますが、微量のアルコールを含む微アルコールビールいう形に分けられることもありますが、その区別が分かりにくいこともあります。

微アルコール飲料の場合は、いくら1本当たりのアルコール含有量が少なくても、ちりも積もれば山となるで、ごくごくと数本飲んでしまうと、アルコール5.5%程度の通常の缶ビール1本分相当のアルコールを摂取してしまう恐れがあります。アルコールがないという安心感から飲み過ぎてしまう人も多いですが、運転の前などは、アルコール度数表記が0.00%のノンアルコールビールを選ぶと良いでしょう。

飲む量の目安ですが、アルコール0.00%、糖質0グラムのノンアルコールビールのある製造元は、1日3本を4週間摂取した試験で安全性の確認を行い、1日1本を目安とアナウンスしています。しかし、アルコールを少量含むもの、糖質を含むものについては飲み過ぎない方が良いと考えられます」

Q.では、ノンアルコールビールを飲み過ぎた場合、どのようなリスクが想定されるのでしょうか。

田中さん「実際に私の近所のスーパーでは、ノンアルコールビールが7種類販売されていました。7商品ともアルコールは0.00%でしたが、糖質量は1缶(350ミリリットル)当たり、最も少ない商品で0グラム、最も多い商品で22グラム程度の糖質を含んでいました。通常のビールは1缶当たり10グラム程度の糖質の商品が多いので、ビールよりも糖質が多いノンアルコールビールがあることになります。

ノンアルコールビールを飲み過ぎた場合にどのようなリスクがあるか考えてみましょう。まず、アルコールについては、アルコールが0.00%のものについては、全くアルコールを含まないため、アルコールの害を受けることはありませんが、1%未満の微量のアルコールを含む微アルコールビールは、量が多くなるとビールと変わらないアルコールを摂取することになります。

1%未満の微量のアルコールを含む飲料については、微アルコール飲料と分かりやすく表記されている商品もありますが、成分表示を見て確実にアルコールが0.00%であることを確認すると良いでしょう。

次に糖質についてです。糖質については、先述のように1缶当たり最小で0グラム、多いもので22グラムと、通常のビール以上に多い商品もありました。糖尿病の検査で、75グラムブドウ糖負荷試験という、高糖質のジュースを飲んでどこまで血糖値が上がるかを調べる試験があります。糖質が多いノンアルコールビールを3缶ほど飲むと、これに匹敵する糖質量となり、かなり多いことが分かります。

飲料に含まれている糖質は消化、分解の手間が少なく、急速に体に吸収されるため、血糖値の急激な上昇を招きやすいです。そのため、糖尿病などで糖質を制限している人、日頃から糖尿病予防に努めている人は糖質が0グラムの商品を選ぶと良いでしょう。また糖質の過剰摂取が続くと、肝臓に脂肪が蓄えられ、脂肪肝になっていくため、アルコールが0.00%の商品を選んだとしても、結局、肝臓を傷めることになってしまいます。

アルコール0.00%、糖質0グラムのノンアルコールビールであれば、好きなだけ飲んでもよいかというと、そういうわけではありません。こうした商品はアルコールを全く含まず、糖質も含まないので血糖値や肝臓への影響がなさそうだと感じるかもしれませんが、商品に含まれている人工甘味料が問題になります。人工甘味料を大量に摂取すると過食をしやすくなったり、『腸内細菌叢(そう)』(腸内フローラ)が変化し、下痢をしたりするようになるため、ノンアルコールビールを飲む際は、やはり適量を守ることが重要です」

適量を守れば毎日飲み続けてもOK?

Q.では、ノンアルコールビールは適量を守れば、毎日飲み続けても問題ないのでしょうか。それとも、飲まない日を設けた方が良いのでしょうか。

田中さん「適量を守れば、ノンアルコールビールを毎日飲み続けてもよいかどうかについては、飲む人がアルコールの摂取を完全に避ける必要があるか、糖質をどの程度控える必要があるかによります。例えばアルコール0.00%、糖質0グラムのノンアルコールビールであれば、1日1本程度であれば飲んでも良いと考えられます。また、何をビールやノンアルコールビールに求めているかですが、シュワっとした爽快感であれば、糖質を含まない炭酸水なども、良い代替になるかもしれません」

Q.健康診断で血糖値が高いと診断された人、糖尿病の人がノンアルコールビールを飲んでも問題はないのでしょうか。また、健康診断で脂肪肝と指摘された人についてはいかがでしょうか。

田中さん「健康診断で血糖値が高いと指摘された人、糖尿病の人は糖質0グラム、アルコール0.00%のノンアルコールビールを選んだ方が良いと考えられます。先述の通り、液体から摂取する糖質は血糖値の急上昇を招くため、糖質が少量でも入っているものは避けた方が良いでしょう。脂肪肝を指摘されている人も、やはり糖質でも脂肪肝が進んでしまうので、糖質0グラム、アルコール0.00%の商品を選んだ方が良いと考えます」

オトナンサー編集部

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