1. トップ
  2. 恋愛
  3. クマを狩る北海道犬はわずか300グラムの命…年間100匹の唯一の血統を守り次世代へ

クマを狩る北海道犬はわずか300グラムの命…年間100匹の唯一の血統を守り次世代へ

  • 2025.12.20

ゲージの奥に小さく見える子犬たち。
生まれて2日目の北海道犬は、まだ目も開いていません。

手のひらにすっぽり収まる体重わずか300グラムほどの小さな命が、そこにありました。

Sitakke

札幌で北海道犬を育てて半世紀。
梅本博さん(80)は、小さな命に触れながら「子犬に触ってると時間がすぐ経ってしまう」と話します。

Sitakke
梅本博さん

子犬を見つめる梅本さんの表情には、深い愛情と同時に、強い使命感が宿っていました。

天然記念物でありながら…

1937年に国の天然記念物に指定された北海道犬。
かつて「アイヌ犬」と呼ばれた時代もあったこの犬種は、北海道の厳しい自然のなかで育まれ、小さめの厚い耳と密集した被毛を持ちます。

Sitakke

前胸部がたくましく発達し、重心が低く、ほかの中型日本犬よりがっちりした印象を与えます。

本来の飼育目的は、北海道に生息するヒグマなどの獣を狩ることでした。

「その昔、アイヌの人たちは狩りをする犬として使っていた。そういう犬なんだよね」と梅本さんは語ります。

しかしいま、北海道犬は危機に瀕しています。

1970年代の年間繁殖数は約7000匹でしたが、近年はわずか100匹ほどにとどまっているのです。
天然記念物でありながら、その数は急速に減少し続けています。

ある北海道犬との運命的な出会い

Sitakke

北海道犬には元々6種類の系統がありました。
しかし現存しているのは、梅本さんが飼育する千歳系のみです。
そのルーツといわれているのが、1927年生まれの「阿久号」です。

Sitakke
北海道犬・千歳系のルーツ 阿久(1927年生まれ)

「この阿久号から数えて15代目になる北海道犬に僕はすっかり魅せられちゃってね」。

梅本さんと北海道犬との運命的な出会いは、15代目にあたる「北海猟王」でした。

Sitakke

「力強い後ろ足の立ち具合とか、もうキリッとした佇まいが力強いんですよね」。

梅本さんの自宅には現在、阿久媛、阿希雄、純有牙姫、北勇女、純優女、北海純女の6匹が暮らしています。
血統を大切にした名前をつけ、その系譜を守り続けています。

Sitakke

「やっぱり動物でも植物でも何でも原種が大事なんだぞと。ひとりでもいいから残れば原種は残るんだっていうことをいわれたのが、30代のころでした」

梅本さんの胸には、その言葉がいまも強く刻まれています。

梅本さんは特別な方

Sitakke

生まれて3週間が経つと、子犬たちの目はぱっちりと開き、つぶらな瞳が愛らしくなります。
父親の犬は、初めて対面した子犬たちに顔を寄せて…自分の子どもだとわかっているんでしょうか。

Sitakke

「わからないと思うよ。どの子にも優しいんだわ」

梅本さんは微笑みます。

Sitakke

そして、梅本さんを訪ねてきたのは宮城県に住むご夫婦です。
男性は20年ほど前まで北海道犬を飼育していました。
梅本さんの存在を知り、遠く宮城から会いに来たのです。

かつて飼育していた北海道犬の血統がここで大事にされていることを知った夫婦。

Sitakke

「梅本さんは特別な方。ここまでやらないと保存ができなくなりますから。数が減っているのも事実だと思う」

一方、梅本さんは「自然体で絵になる犬が僕からしたら『いい犬』だなという考え方。その血筋をずっと受け継いでいってほしい」と熱い胸のうちを語りました。

出演者たちもメロメロ

Sitakke
白い毛の子犬

北海道県は毛色は赤毛が多く、白毛、黒毛、胡麻毛、虎毛と、日本犬のなかでは多彩な毛色を持ちます。

今回生まれた5匹の子犬のうち、白い子犬の白花は両親とも茶色ですが、このように白い子が生まれることもあります。

Sitakke
宮城県の夫婦のもとへ

肉球は黒っぽいですが、大きくなるとだんだん色も薄くなっていきます。一方、背中の毛が濃い茶色の子犬は、宮城県のご夫婦のもとへ旅立つ予定です。

スタジオで子犬を抱いた出演者たちも、その小さくも力強い命に魅了されました。

「今日ドキッ!」放送後も…生後・日の子犬たち

Sitakke
大きくなっている!

生後50日となる12月14日。梅本さん宅に伺うと、生後間もないころとは打って変わって、子犬たちは元気に駆け回っていました!

Sitakke

カメラに果敢に向かってくるほどのパワフルさ。

この日、先日梅本さん宅に訪れた宮城県の夫婦も、自分の家に迎える子犬「阿久雄(あくゆう)」に挨拶するために再び来ていました。

Sitakke

男性は「この匂い覚えておいてね~」と、早くも自分の子どものようにメロメロです。

阿久雄は、12月20日に飛行機に乗って宮城県へと旅立ち、仙台空港で夫婦が迎えるということです。

次世代へ希望を託して

Sitakke

現在80歳の梅本さんは、90歳までがんばりたいと語っています。
北海道犬協会や保存会に集う、強い思いを持つ人たちが、次世代へとこの血統を繋いでいます。
天然記念物であり貴重種であり、なおかつ千歳系という唯一の血統。その未来を考えてくれる人たちに、梅本さんは希望を託しています。

Sitakke

小さな手のひらで包まれた300グラムの命は、やがて立派な北海道犬へと成長していきます。
その無邪気な姿に込められているのは、半世紀にわたって守り続けられてきた血統と、次の世代へつなぐ人びとの深い愛情でした。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年12月3日)の情報に基づきます。

元記事で読む
の記事をもっとみる