1. トップ
  2. レシピ
  3. 【お酒は本当に体に悪い?楽しく飲み続けるためにはどうすべきか②】楽しみながら健康を守る晩酌習慣

【お酒は本当に体に悪い?楽しく飲み続けるためにはどうすべきか②】楽しみながら健康を守る晩酌習慣

  • 2025.12.19

飲酒は多かれ少なかれ、体に負担がかかるもの。でも大好きなお酒、やめるなんて考えられない!それなら、適量を守って体をいたわりつつ、楽しんで飲む方法を探っていきましょう。1回目に引き続き、食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。

【お酒は本当に体に悪い?楽しく飲み続けるためにはどうすべきか②】楽しみながら健康を守る晩酌習慣

■「休肝日」は本当に必要なのか?

前回は飲酒によるデメリットについてお話ししました。そうはいっても……と思われた人もいるかもしれません。お話ししたとおり、性別や年齢、体質によって差はあるものの、その人その人の適量を超えない範囲で楽しむのであれば、無理をして禁酒をする必要はないでしょう。

お酒を飲む人は、アルコールを分解する肝臓への負担を気にしている人が多くいます。健診での数値に一喜一憂という人も多い。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状がないままに病気が進行している場合もありますから、人知れず働き続ける肝臓を定期的に休めてあげることは大切なこと。やはり「休肝日」を設けることは大切なことといえます。

ではどのくらい間を開けたらよいか?実は肝臓は修復能力の高い臓器です。飲み会でたくさん飲んでしまい、肝臓の分解能力を超えてしまったとしても、およそ48時間あれば、肝臓はもとに戻ることができます。つまり丸2日間あれば、肝臓はまた元気に働けるのです。飲み過ぎた晩の翌日を休肝日として飲まずにいれば、その翌日の晩はまた飲んでも大丈夫ということになります。

病気のリスクを高めない目安とされる量(純アルコール量にして男性40g以下、女性20g以下)くらいであれば週に1〜2日、たくさん飲んでしまったときは、翌日は必ず休肝日として肝臓を休ませてあげましょう。

余談になりますが、大ヒット映画「国宝」を観た人の間では「糖尿病」が話題に上ることもあるようです。糖尿病は生活習慣と遺伝が同じくらい関わってきますが、飲酒と関連があるとよく言われる「痛風」の発症においては、確かに飲酒習慣も影響しますが、それよりも遺伝、体質が大きく関わります。お酒を飲む人でも、身内に痛風の患者がいなければあまり心配することはないかもしれませんが、身近に痛風の患者がいる人は、休肝日をはじめ、飲酒習慣を見直してみることをおすすめします。

■つまみはたんぱく質を中心にバランスよく

前回、飲酒のデメリットのひとつに「つまみを食べ過ぎてカロリーオーバーを招く」と書きました。お酒の効果で食欲が増進され、ついつい食べ過ぎてしまうということです。食事が楽しくなるのはメリットでもありますが、血糖値の急上昇や肥満を予防する意味でも、食べ過ぎには注意が必要です。

とはいえ、つまみを全然食べないというのもよくありません。アルコールの吸収が早まって、肝臓に負担がかかります。酔いが早く回ってしまい、飲酒量が増えてしまうことにもつながります。

ではどんなつまみが向いているのか?肝臓の負担を減らすなら良質なたんぱく質を含むものがおすすめです。ただし高カロリーの肉などをとってしまっては元も子もありません。低カロリーで栄養バランスのよいものを選びましょう。枝豆や豆腐などはつまみ向きの食材といえるでしょう。

カロリーオーバーを避けるなら、やはり野菜のつまみです。満腹感が得やすい野菜スティックなどがおすすめです。

ちなみにカロリーオーバーはつまみだけのせいではありません。お酒そのもののカロリーも考慮しておく必要があります。糖質は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcalですが、アルコールは1gあたり7kcalあります。アルコール5%のビール500mlのアルコール量は20g、つまり140kcalという計算になり、小さめの塩むすび1個分くらいのカロリーに相当します。アルコール度数の強い缶チューハイなどは甘味料が多く含まれる場合がありますので、アルコールのカロリーに加え、糖質も多くとることになりますので特に注意が必要です。頭の片隅においておいてください。

酒とつまみ
酒とつまみ

■同量の「水」が飲み過ぎを防ぐ

よく酒を飲むときは同時に水を飲むとよいと聞きますが、これは理にかなっていると思います。お酒のアルコール度数が水で薄められて低くなることで、臓器への負担が少なくなるからです。薄められたからといってたくさん飲んでしまっては意味がないのですが、一緒に水を飲むことで、おなかがいっぱいになって、たくさんは飲めなくなります。大体同量くらいの水を飲むとよいでしょう。二日酔い対策としても有効です。

アルコール度数の強いお酒を好んで飲む人は、チェイサーとして水を飲むことが多いと思いますが、これも大事です。アルコールを薄めるという意味もありますが、咽頭や食道に強いアルコールが残ってしまうと咽頭がん、食道がんのリスクが高まります。水でアルコールを流しながら飲むことをおすすめします。特に寝酒を楽しむ人は要注意。日本人は「眠れないから」といって寝る直前に高アルコールのお酒を飲む人が多いといわれていますが、体のためにはあまりよくありませんので、気をつけてください。

■健康は自分で守るもの。年1回は健診を

前回、自分の飲酒量を見える化して把握しておくことが大事と書きましたが、体にどんな変化が出ているのかを知るためには健康診断も大切です。肝臓は自覚症状が出たときには、もう脂肪肝などが進行しているといわれます。定期的に血液検査をして、体の状況を確認しておくことは、心置きなくたのしく飲むためには大切なこと。ふだん健康体の人は年に1回くらいでもいいでしょう。少しでも健康面で心配ごとのある人は、半年に1回など、定期的に調べてもらうことをおすすめします。

最後にお伝えしておきたいのは、お酒は「飲む」のではなく、「味わう」という気持ちでつきあうということです。たとえば地酒を飲むときは、その土地の食べものを合わせてみる、飲み会やイベントなどで飲むときは、その場を楽しむことを第一に考えて飲むと、お酒のおかげで食事の満足度も高まり、飲み過ぎたり食べ過ぎたりすることも少なくなるはずです。

お酒は人づき合いを楽しくしたり、食事をおいしくする絶好のツールでもあります。適量を守っていつまでも楽しいアルコールライフを送ってください。


――教える人

「三浦 雅臣先生」

東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業。糖尿病や肥満症を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。


編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock

元記事で読む
の記事をもっとみる