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3700年前の「父娘の近親相姦」の証拠を発見

  • 2025.12.19
近親相姦の証拠が見つかった発掘現場/ Credit: MHAAM – Bronze Age DNA from Calabria reveals a distinct mountain community(2025)

イタリア南部で発見された3700年前の人骨から、考古学史上でもあまり例のない発見がありました。

それは父と娘の間に子どもが生まれていたという、近親相姦を示す明確なDNA証拠でした。

父娘間の近親相姦の考古学証拠としては最古とのことです。

研究の詳細は独マックス・プランク=ハーバード古代地中海研究センター(MHAAM)により、2025年12月15日付で科学雑誌『Communications Biology』に掲載されています。

目次

  • 父と実の娘との間の子供の遺骨か
  • 父娘間で最古の近親相姦の証拠

父と実の娘との間の子供の遺骨か

この発見の舞台は、イタリア南部カラブリア州にある洞窟遺跡「グロッタ・デッラ・モナカ」です。

この洞窟は、紀元前1780年から1380年ごろ、青銅器時代の人々によって集団墓地として使われていました。

研究チームは、この洞窟に埋葬されていた23人分の人骨から古代DNAを解析し、集団の出自や家族関係を調査。

当初の目的は、山岳地帯に暮らしていた人々の遺伝的背景を知ることでしたが、分析の途中で、研究者たちは「異常な数値」に気づきます。

それが、ある少年の遺骨のDNAに見られた「ホモ接合性連続領域(ROH)」の多さです。

これは、同じ遺伝情報が長く連続して並ぶ部分で、両親が血縁関係に近いほど増えることが知られています。

多くの人は、数世代前に遠い親戚関係があった程度のROHを示していました。

しかし、この少年だけは、これまで古代DNA研究で報告された中でも突出して多いROH値を持っていたのです。

父娘間で最古の近親相姦の証拠

詳しい解析の結果、研究者たちは衝撃的な結論にたどり着きました。

この少年は、洞窟に埋葬されていた成人男性と、その男性の実の娘との間に生まれた子どもだったのです。

つまり、父娘間の近親相姦によって生まれたことを、DNAがはっきりと示していました。

これは、考古学的記録の中で確認された最古かつ初めての父娘間近親相姦の証拠です。

人類は一般に、近親関係での配偶を避ける傾向があります。

文化的なタブーだけでなく、遺伝的な問題が生じやすいためです。

実際、兄妹婚の例は過去にも知られていますが、それでも「第二親等」にあたります。

親子関係は「第一親等」であり、さらにリスクが高いと考えられています。

チームは、この少年に重い遺伝性疾患がなかったかも調べましたが、明確な異常は確認されませんでした。

なぜ、このような関係が生じたのかについては、慎重な姿勢が取られています。

この共同体は極端に小さかったわけでもなく、王族のような権力集中型の社会構造も見られていません。

研究者たちは「社会的に容認された行動だった可能性」「一度きりの例外的な出来事だった可能性」「強制や暴力が関係していた可能性」のいずれも否定できないとしています。

この発見が教えてくれるのは、単なるスキャンダルではありません。

DNAという動かぬ証拠が、私たちの常識がそのまま過去にも当てはまるわけではないことを示しているのです。

洞窟に残された骨は、沈黙したままですが、遺伝子は3700年の時を超えて、当時の人間関係を語り始めました。

この少年がどのように生き、どのように扱われていたのかは、もう知ることはできません。

それでも、古代社会の複雑さと人間の多様性を理解するうえで、この発見は極めて重要な手がかりとなっています。

参考文献

Bronze Age DNA from Calabria reveals a distinct mountain community
https://www.mpg.de/25882013/bronze-age-dna-from-calabria-reveals-a-distinct-mountain-community

Oldest known evidence of father-daughter incest found in 3,700-year-old bones in Italy
https://www.livescience.com/archaeology/oldest-known-evidence-of-father-daughter-incest-found-in-3-700-year-old-bones-in-italy

元論文

Archaeogenetics reconstructs demography and extreme parental consanguinity in a Bronze Age community from Southern Italy
https://doi.org/10.1038/s42003-025-09194-2

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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