1. トップ
  2. 恋愛
  3. 【28年ぶりの快挙】イランの巨匠パナヒ監督、カンヌ制覇からアカデミー賞へ…“不当投獄”を描いた衝撃作とは

【28年ぶりの快挙】イランの巨匠パナヒ監督、カンヌ制覇からアカデミー賞へ…“不当投獄”を描いた衝撃作とは

  • 2025.12.17

カンヌでの喝采は偶然ではなかった。第78回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作『IT WAS JUST AN ACCIDENT(英題)』が、第98回アカデミー賞国際長編映画賞のショートリスト入りを果たし、再び世界の映画界をざわつかせている。フランス代表としての選出という異例の経緯も含め、本作は今季最大級の話題作だ。

その中心に立つのが、イランの巨匠ジャファル・パナヒ監督である。長年にわたり制作禁止、渡航禁止、投獄という過酷な現実を背負いながら、それでもカメラを手放さなかった男。映画を撮ること自体が罪とされた状況下で生み出された作品群は、常に体制への静かな抵抗であり、観る者への問いかけだった。世界三大映画祭すべてで最高賞を制覇したという事実は、彼の映画が持つ普遍性を雄弁に物語る。

本作が描くのは、不当に自由を奪われた人々の復讐計画という、極めて切実な物語だ。だが、そこにあるのは単純な怒りや暴力ではない。ユーモアが緊張を切り裂き、観客の倫理観を揺さぶる構造が随所に仕込まれている。笑いと恐怖が交錯するその感覚は、まさにパナヒ作品の真骨頂と言えるだろう。

皮肉にも、映画が世界的評価を集める一方で、パナヒ監督自身には再び厳しい判決が下された。プロモーション活動中に言い渡された欠席裁判による有罪。それでもなお、この作品は止まらない。アカデミー賞本選ノミネートという次なる舞台で、パナヒの魂の叫びがどこまで届くのか。その行方は、映画の力そのものを問い直す試金石となる。

監督・脚本:ジャファル・パナヒ『人生タクシー』『チャドルと生きる』
出演:ワヒド・モバシェリ、マルヤム・アフシャリ、エブラヒム・アジジ、ハディス・パクバテン、マジッド・パナヒ、モハマッド・アリ・エリヤ
2025 年/フランス・イラン・ルクセンブルグ/ペルシャ語/103 分/日本語字幕:大⻄公子/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン
配給:セテラ・インターナショナル/協力:ユニフランス ©LesFilmsPelleas

2026 年、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開

元記事で読む
の記事をもっとみる