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「パーク ハイアット 東京」のDNAを継ぐリニューアルデザインとは

  • 2025.12.12
Courtesy of Park Hyatt Tokyo

丹下健三・設計の超高層ビル、東京・西新宿の「新宿パークタワー」39~52階に位置する「パーク ハイアット 東京」。開業は1994年。シカゴ、シドニーに次いで、アジアで初めて誕生したパーク ハイアットだ。

Park Hyatt Tokyo, Jouin Manku © Yongjoon Choi

多くのファンを持つホテルの大規模改修

ジョン・モーフォードによる心地よくコンテンポラリーなインテリア、摩天楼の眺望、温かなホスピタリティによって、国内外に熱いファンを生み出したのはご存じの通り。開業30周年を迎え、2024年5月より大改修のため一時休館へ。2025年12月9日、待望のリニューアルオープンを果たした。

<写真>新宿パークタワーの41階、エレベーターを降りて目にする竹林はオープン当初から変わらないゲストを迎える象徴の一つ。このアトリウムの下に広がる「ピーク ラウンジ」は、シーティングやテーブル、照明などは一新された。

Park Hyatt Tokyo, Jouin Manku © Yongjoon Choi

スタジオ ジュアン マンクによるデザイン監修

記者発表で告げられたのは、ホテルブランドの「ハイアット」を創業したジェイ・プリツカーが掲げた「もうひとつのわが家」という理念に基づいた、開業時のジョン・モーフォードが手掛けた洗練されたデザインとその精神を大切にする姿勢だ。プリツカーは建築やアートに造詣が深く、建築界のアワード、プリツカー賞を創設。建築家、丹下健三は、プリツカー賞を日本人で初めて受賞した人物でもある。

今回の大規模改修ではほぼ全てをスケルトンの状態にまで戻した。リニューアルのデザイン監修という大役を務めたのはパリを拠点とする建築デザイン事務所、スタジオ ジュアン マンクだ。

客室は全面リニューアル、室内の動線から考え直され、ベッドやチェア、造作家具、設備類は全て新しくなり、バスルームもつくり直されている。種類として新たなスイートルームが加わり、客室数が177室から171室に。唯一、ホテルの一つの象徴として「トーキョー スイート」(220㎡)は、従来のデザインが保たれている。

<写真>「パーク ハイアット 東京」のルームタイプのうち最も数が多いデラックス、広さは55㎡。超高層からの眺望を大切に考えたレイアウトが計画され、ベージュとグリーンを基調とし上品に仕上げられている。

Girandole by Alain Ducasse_Park Hyatt Tokyo, Jouin Manku © Yongjoon Choi

ラウンジやダイニングのうち、「ピーク ラウンジ&バー」はチェアや照明などインテリア全体が新しくなった。壁面に飾られたヴェラ・マーサーのモノクロ写真がインパクトを放つ41階のメインダイニングは、「デュカス パリ」と提携し、フレンチブラッセリー「ジランドール by アラン デュカス」と名前も新たに、バーガンディーをキーカラーとしてまとめ上げられた。

<写真>41階の「ジランドール by アラン デュカス」は朝食、ランチ、ディナーと多くのゲストを迎えるメインダイニング。「ポラダ」のチェア“エラ”の曲線や、レザーや大理石の質感がエレガンスを醸し出す。

Courtesy of Park Hyatt Tokyo

変わらぬ姿を美しく

一方で、変わらぬ姿で迎えてくれるところがある。41階のエレベーターを降りたゲストが目にする、ガラスのアトリウムと竹林。「ニューヨーク グリル&バー」やスパ&フィットネス「クラブ オン ザ パーク」はデザインを変えていない。しかしこれらの場所も、一度スケルトン状態まで解体し、床・壁・天井といった建材、厨房設備を新しくし、家具は同じデザインのものを新調している。「パーク ハイアット 東京」のDNAを大切にするという姿勢だ。スタジオ ジュアン マンクのパトリック・ジュアンとサンジット・マンクは次のように語った。

<写真>52階の「ニューヨーク グリル」。ヴァレリオ・アダミの色鮮やかなアートワークはそのまま。建築と、東京の街の力強さと共鳴し、このレストランを特別な空間にしている。以前より使われてきた「カッシーナ」のチェア“412 CAB”も全て新調した。

Patrick Jouin et Sanjit Manku © Adrien Dirand

多くの人が愛したホテル

「私たちはこの仕事を、丹下建築とモーフォードのインテリアデザインの魅力を深く理解するところから始めました。パーク ハイアット 東京は多くの人に愛されてきた、文化的に大切な場所なのです。このプロジェクトは、単に新しいものをつくり出すのではないと私たちは考えました。今から30年後、また改修することがあるかもしれませんが、その時はまた別の建築家やデザイナーがこのフィロソフィを理解して継いでくれたらいいですね」

<写真>左から、スタジオ ジュアン マンクのパトリック・ジュアンとサンジット・マンク。

Park Hyatt Tokyo, Jouin Manku © Yongjoon Choi

摩天楼の素晴らしいパノラマを楽しめること。都市の活気を感じつつ、客室では静けさに包まれること。ゲストの感情を動かしてきたいくつもの魅力が、スタジオ ジュアン マンクの仕事によって磨かれ、次の時代へと受け継がれていく。

「ひと息つきたい時、人生をスローダウンしたい、そんな時に『パーク ハイアット 東京』でのステイはいいかもしれません」とスタジオ ジュアン マンクの2人。上質な輝きを伴って再びそのドアを開いた安らぎの場所。以下に写真で紹介しよう。

<写真>スイートの一室に設けられたソファスペース。多くのアートがホテルのパブリックスペースのみならず、客室にも飾られている。

Courtesy of Park Hyatt Tokyo


<写真>客室に向かうゲストの目を楽しませる、41階のライブラリーも開業時のままに保たれた。約2,000冊の書籍が美しく陳列され、ゲストの動線を彩る手法は当時新鮮だった。

Courtesy of Park Hyatt Tokyo

<写真>45階と47階に位置するスパ&フィットネスクラブ「クラブ オン ザ パーク」。47階にあるプールでは、建築美も満喫できる。デザインは変更されず、床や壁などの建材や家具が新しくなった。

Park Hyatt Tokyo, Jouin Manku © Yongjoon Choi

<写真>客室のバスルームは新しくデザインされた。ルームタイプによって配置やデザインは異なるが、ベージュの色調の大理石を基本とし、落ち着ける空間に仕上げられている。スイートの中には、大理石やヒノキのバスタブが備えられているタイプもある。

Park Hyatt Tokyo, Jouin Manku © Yongjoon Choi

<写真>テレビボードに一体化して設計されたミニバーの造作家具。ラウンドした黒い扉を開けると、コーヒーや茶器、グラス類がすっきりと収められている。差し色のペールグリーンも絶妙。

Park Hyatt Tokyo, Jouin Manku © Yongjoon Choi

<写真>アームチェア、テーブル、ベッド、照明、アートとバランスよく考えられ、居心地のいい客室ができている。

パーク ハイアット 東京
東京都新宿区西新宿3-7-1-2

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