1. トップ
  2. 朝ドラの幸せなシーンの裏で映した“残酷な現実”「かわいそう」「気づいてあげて」重要人物に視聴者からの“同情が集まる”

朝ドラの幸せなシーンの裏で映した“残酷な現実”「かわいそう」「気づいてあげて」重要人物に視聴者からの“同情が集まる”

  • 2026.1.16
undefined
『ばけばけ』第15週(C)NHK

髙石あかりがヒロインを務める朝ドラ『ばけばけ』。第15週「マツノケ、ヤリカタ。」は、トキ(髙石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)の新婚生活がスタートした一方で、その幸福を“外側から見つめる存在”も浮かび上がった週だった。トキの友人・サワ(円井わん)は、ふたりの結婚と引越し祝いのために屋敷を訪れるが、なんとも言えない焦燥に駆られて早々に立ち去ってしまう。SNS上でも「かわいそう」「気づいてあげて」と声があがっていたシーンを中心に振り返りたい。

※以下本文には放送内容が含まれます。

同じ場所にいたはずの“親友”だったのに……

undefined
『ばけばけ』第15週(C)NHK

第15週で描かれたのは、トキとヘブンの新婚生活という、ひとつの到達点である。結婚披露パーティも済ませ、新しい武家屋敷で家族4人で始まる暮らし。ヘブンの手配によって整えられた家や家具、そして松江の人々から寄せられる祝福。それらはすべて、トキが苦労の末に辿り着いた、輝かしい今を象徴しているようにも見える。

しかし、この週を別の角度から照らす存在がいる。トキの友人・サワだ。引っ越し祝いとして松野家が暮らす屋敷を訪れた彼女は、玄関先に飾られた立派な花瓶と、溢れるような贈り物を目にする。その瞬間、サワは自分がこしらえてきた小さな花束が、まるで粗末な仏花のように思えてしまったのかもしれない。思わず玄関先にその花束を捨て、トキと相対する。

サワは、嫉妬しているのだろうか。祝福の気持ちはあるはずだが、しかし、同じ場所にいたはずの親友が、もう自分の知らないステージに立っていることを痛感してしまったのだろう。一緒に橋の向こうに行こう、と野望を語り合っていたふたり。その橋を、トキだけが渡り切ってしまったのだ。

見せつけられる余裕と、置き去りにされる感情

丁寧にもてなされ、美味しい菓子が出される。新しい松野家で過ごす時間は、必ずしもサワを落ち着かせない。示される優しさ以上に、これまでとは違う圧倒的な距離を感じさせる時間でもあった。

決定的だったのは、借金取りが訪れ、母のフミ(池脇千鶴)やトキがまとめて100円を返済してみせた場面だろう。かつて松野家がどれほど困窮していたかを知っているサワにとって、その光景はあまりに現実離れしていた。経済的な余裕は、そのまま“もう同じ世界にはいない”という証明のようにも映る。

その場にいられなくなったサワは早々に立ち去り、橋を隔てたトキに対して“違う世界みたいだった”と告げるしかない。祝福の心はありながら、しかし自分のいる場所がもうどこにもないと悟ったとき、人は静かに距離を取るしかないのだ。

果たされなかった約束のゆくえ

undefined
『ばけばけ』第15週(C)NHK

この週のもう一つの軸である、トキとヘブンのすれ違いと和解は、サワの物語と対照的だ。相手を思うがゆえに嘘を重ねてしまったヘブンと、それに傷ついたトキ。ふたりは必要な衝突を経て、本音を語り合い、夫婦として一歩前に進んだ。異文化を受け入れ、歩み寄ることで、関係は確かに更新されている。

しかし、その更新の影で、サワは立ち止まったままだ。トキが前に進んだ分、彼女との距離は広がってしまった。友情とは、同じ場所にいるから続くものではない。しかし、お互いの人生の速度や立つ場所が変わったとき、その友情をどう保てばいいのかは、誰も教えてくれない。

サワは悪者ではない。卑屈になっているわけでもない。ただ、現実を直視してしまっただけだ。第15週は、トキとヘブンの絆が深まった週であると同時に、サワという存在によって、“祝福の裏側”に生まれる感情を可視化した週でもあった。

今後、彼女はどんな思いや行動を経て、トキとの距離感を見つめなおすのだろう。そのゆくえをそっと気にかけたくなるのは、この週が静かに、彼女の心も無視せずに捉えようとしていたからである。


連続テレビ小説『ばけばけ』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_