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「クズは旦那だけじゃないかも」「ヤバい怪しい」“違和感”は伏線か… 考察を加速させる“キーパーソン役”に注目【月10】

  • 2026.1.17

松下奈緒主演のドラマ『夫に間違いありません』は、一年前に亡くなったはずの夫の遺体を誤認していたこと、それに伴う保険金不正受給という強烈な導入から始まる。人間の弱さと醜さを容赦なく浮き彫りにするヒューマンサスペンスにおいて、SNS上でも「ヤバい怪しい」「あんまり良い母親じゃない?」「クズは旦那だけじゃないかも」と話題を呼んでいるのが、行方不明者家族の会で朝比聖子(松下奈緒)と出会う葛原紗春(桜井ユキ)である。

※以下本文には放送内容が含まれます。

苦労人なシングルマザー、その実態は?

桜井演じる紗春は、失踪した夫の帰りを待ちながら、幼い娘を育てるシングルマザーだ。昼はスーパー、夜はスナックで働き、生活は決して楽ではない。この設定だけを見れば、経済的にも精神的にもケアが必要な苦労人だろう。
しかし、紗春の言動には違和感が拭えない点が多く、それがSNS上での考察合戦を盛り上げる要因となっている。

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月10ドラマ『夫に間違いありません』第2話より(C)カンテレ・フジテレビ

とくに印象に残るのが、紗春が娘と接する場面で漂う、微妙な距離感である。子どもに対する愛情がないわけではなく、保育園で熱を出したと聞けば飛んで帰る常識さも持ち合わせている。しかし、娘と二人っきりになった瞬間に気力が削げるというか、途端にモチベーションがゼロになっているように見えるのだ。
ネグレクトしている、と判断するのは尚早だが、しかし、そう見えてしまう瞬間が確実にある。

感情の出力が巧みな女優

ただの善良な苦労人に見えて、実は裏で悪事に手を染めているのかもしれない。そんな違和感を成立させているのが、女優・桜井ユキの表情や視線の使い方である。
『しあわせは食べて寝て待て』の麦巻さとこ役、『だから私は推しました』の遠藤愛役などを見ていてもわかるが、桜井は年齢に合わせた等身大な人間像を確立させながらも、シーンに合わせた感情の出力が巧みなのだ。悲しみを訴えながら、同時に何かを隠しているようにも見える。

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月10ドラマ『夫に間違いありません』第1話より(C)カンテレ・フジテレビ

本作の紗春も、この“語っていることと、そうでないところがある”様子を上手く表出させている。
だからこそ、視聴者は紗春自身にも疑いの目を向けることになる。彼女の夫は本当に失踪しているのか、はたまた“失踪しただけ”なのだろうか? もし仮に、夫が事故や失踪ではなく、紗春自身の手で殺されていたとしたら?
もちろん現時点で、それを裏付ける事実はない。しかし、その仮説を“荒唐無稽に感じさせない”だけの説得力を、桜井の演技は持っている。

どこまで嘘を突き通せるか?

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月10ドラマ『夫に間違いありません』第2話より(C)カンテレ・フジテレビ

本作が描いているのは、“正しいかどうか”ではない。大切な人を守るためなら、どこまで嘘を突き通せるか? という問いなのだろう。
松下演じる聖子が、家族を守るために嘘をつくことを選んだように、紗春もまた、何かを守るために嘘を重ねているのかもしれない。その嘘が、生活のためだったのか、母であるためだったのか、あるいは自分自身のためだったのかは、まだ明かされていない。

2話が放送された段階で、紗春はまだ物語の中心人物ではない。それでも、彼女の存在感は確実に大きなものとなりつつある。桜井は、まだ何も決定的な事実が判明していないからこそ成立する不穏さを、丁寧に積み上げている。感情が爆発する前、倫理が崩壊する一歩手前。その危うい均衡点に、彼女は立ち続けている。

紗春は、善人かもしれないし、そうでないかもしれない。ただ一つ確かなのは、桜井の演技によって、この人物が“疑われる価値のある存在”になっているということだ。今後、物語が進むにつれ、彼女が被害者のままで終わるのか、それとも。
強い意志を宿した瞳。その奥にあるのは、怒りなのか、諦めなのか、それとも計算なのか。観る側がどれだけ覗き込もうとしても、核心までは辿り着けない。紗春は、疑われることすら受け入れているかのような佇まいをしている。それが恐ろしく、同時に目を離せなくさせる。


カンテレ制作・フジテレビ系列 月10ドラマ『夫に間違いありません』 毎週月曜よる10時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_