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27年前、“異色のお仕事ドラマ”で響いた「なにしてんの」 “問いかけ”が呼んだ共鳴の渦

  • 2026.2.19

「夜の街に灯るネオンが、今よりも少しだけ熱を帯びて見えたあの頃を覚えている?」

1999年。世紀末という言葉が日常に溶け込み、どこか落ち着かない空気が漂うなかで、私たちはテレビの画面越しに、ある「究極のプロフェッショナル」の姿に釘付けになっていた。

派手な夜の世界を舞台にしながら、その実態は驚くほどに熱く、真っ直ぐな「スポ根」の物語。そんな異色のドラマを象徴する、小気味よいサウンドが印象的な一曲があった。

SURFACE『なにしてんの』(作詞:椎名慶治・作曲:椎名慶治、永谷喬夫)――1999年2月3日発売

不況の空気を突き抜ける“女の中の女”の美学

1999年の冬、お茶の間の視線を釘付けにしたのが、財前直見が主演を務めたフジテレビ系ドラマ『お水の花道』だ。城戸口静・原作、理花・作画の人気漫画を実写化したこの作品は、単なる水商売の裏側を描くドラマではなかった。物語の核にあるのは、主人公・明菜(財前直見)が体現する「お水道」という高潔な精神である。

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1ドラマ『お水の花道』記者発表より。(前列右から)藤崎奈々子、原沙知絵、財前直見、一色紗英、井上晴美(後列左から)戸田恵子、上川隆也、阿部寛-1998年撮影(C)SANKEI

このドラマにおけるホステスとは、単に酒を供する存在ではない。客にとっての恋人であり、時には母親のような慈しみを持って接する、いわば「スーパーレディ」なのだ。彼女たちが自らのプライドを懸けて突き進むその姿は、不況に喘いでいた当時の日本において、生き抜くために必要な「女の中の女」の道として描かれた。

ド演歌的とも言える泥臭い人間模様を、あえて体育会系ノリの軽快なテンポで描き出す手法は非常に斬新で、多くの視聴者を熱狂させた。

出演陣も豪華で、財前直見を中心に、上川隆也、一色紗英、原沙知絵、井上晴美、藤崎奈々子、戸田恵子、阿部寛といった個性豊かな俳優たちが脇を固め、夜の世界で繰り広げられる「スポ根サクセスストーリー」を盛り上げた。仕事に対してどこまでも真摯で、決して妥協を許さない。そんな彼女たちの生き様が、SURFACEが奏でるエッジの効いたサウンドと見事に共鳴していたのである。

核心を突く“問いかけ”が呼んだ共鳴の渦

SURFACEというユニットが持つ最大の武器は、ボーカル・椎名慶治による「突き放すようでいて、どこか核心を突く」独特の言語感覚にある。この楽曲においても、その才能は遺憾なく発揮されている。楽曲が鳴り響いた瞬間、聴き手は一気に彼らの世界へと引きずり込まれる。都会的で洗練されたアレンジのなかに、隠しきれないほどの熱量と焦燥感が同居しているのが特徴だ。

特に印象的なのは、タイトルにもなっているフレーズが繰り返されるそのリズムだ。それは、ドラマの中で「お水道」を極めようと奮闘する女性たちが、ふとした瞬間に鏡の中の自分へ投げかける言葉のようにも聞こえる。また、深夜の繁華街を一人歩くときに感じる、あの独特の虚無感や解放感を代弁しているかのようでもある。

迷いさえもエネルギーに変える“強さ”の記憶

『お水の花道』が放送された1999年は、日本中が「これからどうなるのか」という不安を抱えていた時期でもある。だからこそ、自分の仕事に誇りを持ち、全力で走り続ける明菜たちの姿は、最高のエンターテインメントとして受け入れられた。そして、その物語を飾るこの曲の疾走感は、迷っている暇などないのだと、背中を叩いてくれるような響きを持っていた。

「なにしてんの」という問いは、決して答えを求めているわけではない。それは、立ち止まりそうな自分を奮い立たせ、再び戦いの場所へと戻るための合図なのだ。ドラマの中でネオンの海へと消えていくヒロインたちの背中と、椎名の突き抜けるようなボーカル。その二つが重なったとき、私たちは明日を生きるための小さな活力を得ていた。

リリースから27年。時代は変わり、夜の街の風景も一変した。それでも、この曲を聴けば、あの頃の私たちが抱いていた「何者かになりたい」という切実な願いや、不器用ながらも一生懸命に生きていた感触が、鮮やかに蘇ってくる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。