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32年前、メジャーデビューを果たした“荒削りな歌声” ヒットメーカーが仕掛けた“ドラマティックなサウンド”

  • 2026.2.19
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

1994年2月。どこか懐かしくも新しい、真っ直ぐな響きを持つユニットが産声を上げた。冷たい冬の空気の中、ラジオやショップの片隅で、その歌声は静かに、けれど確実に聴く者の心へと浸透していった。派手な演出や過剰な宣伝に頼ることなく、純粋なメロディの力だけでリスナーの足を止めさせたこの曲。それは、彼ら独自の瑞々しさを放っていた。

BEREEVE『君から目を離せない』(作詞:冴木裕志、井辺清・作曲:石川寛門、安藤高弘)――1994年2月2日発売

派手な演出や過剰な宣伝に頼ることなく、純粋なメロディの力だけでリスナーの足を止めさせたこの曲。それは、彼ら独自の瑞々しさを放っていた。

荒削りな輝きを放つ“二人の呼吸”

BEREEVE(ビリーヴ)は、ボーカルの冴木裕志とギターの石井直人(後に石井ヒトシに改名)による男性二人組ユニットだ。1994年のこの日、彼らは本作でメジャーデビューという大きな一歩を踏み出す。

彼らの音楽性の根底にあるのは、90年代のJ-POPシーンを席巻していた、キャッチーでありながら骨太なロックサウンド。しかし、BEREEVEが持つそれは、どこか繊細で、都会の孤独を優しく包み込むような温かさがあった。

このデビュー曲には、そんな彼らの魅力が凝縮されている。ボーカルの冴木が持つ、少しハスキーでいて突き抜けるような高音。そして、石井の鳴らす、感情に寄り添うようなギターフレーズ。まだ何者でもなかった彼らが、未来への期待と不安を音に託したような、ひたむきなエネルギーがそこには宿っていたのだ。

言葉にならない想いを預けた“旋律の魔力”

『君から目を離せない』を聴いて、まず耳を奪われるのは、冒頭の歌いだしから一気に物語の主役へと引き込むようなドラマティックな音作りだ。

アレンジャーには、数々のヒット曲に関わってきた鷹羽仁を迎え、ギターと鍵盤、そして力強いリズム隊が絶妙なバランスで混ざり合っている。全体を包むのは、90年代特有の煌びやかさと、一筋の哀愁が同居したサウンドスケープ。

楽曲の魅力の核心は、決して奇をてらわない、正統派のメロディラインにある。Aメロ、Bメロと積み重ねていく期待感が、サビの解放感とともに一気に弾ける。その瞬間、聴き手は自分の心の中にあったはずの、けれど名前を付けられずにいた感情を、この歌が代弁してくれているような錯覚に陥るのだ。

過剰な装飾を削ぎ落としたからこそ、メロディの美しさがより際立ち、何度もリピートしたくなる中毒性を生んでいた。

時代を越えて響き続ける“静かな決意”

あれから32年。時代は移ろい、音楽の聴き方も、流行の形も劇的に変わった。街の景色は一変し、1994年の冬を肌で知る者も少しずつ減っているのかもしれない。

それでも、今改めて『君から目を離せない』に耳を傾けると、当時の青い熱量が少しも色褪せていないことに驚かされる。それはこの曲が、時代のトレンドを追うことよりも、「いつの時代も変わらない人の情熱」を芯に据えていたからではないだろうか。

不器用で、けれど真っ直ぐな、あの頃の自分。そんな記憶の断片を、この曲は鮮やかに呼び起こしてくれる。夜の静寂の中で、あるいは移動中のふとした瞬間に、この旋律は今も誰かの心をそっとノックし続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。