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22年前、突如“活動休止”を発表したラストシングル 沈黙の果てに放たれた“世界基準のサウンド”

  • 2026.2.18
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

2004年という年は、音楽の聴き方がCDからデジタルへと緩やかに移り変わり、それまでの常識が音を立てて更新され始めていた時期だった。街には親しみやすいポップソングが溢れていたけれど、それだけでは埋められない心の空洞に、鋭利なノイズと圧倒的な重低音を求めていた人も多かったはず。

そんな中、世界を股にかけて戦い続けていた「最強の3人」が、一つの到達点ともいえる一撃を放つ。

THE MAD CAPSULE MARKETS『SCARY -Delete streamin' freq. from fear side-』(作詞・作曲:TAKESHI UEDA)――2004年2月4日発売

日本のラウドロック界に革命を起こしたTHE MAD CAPSULE MARKETSが、その活動に幕を下ろしてから2026年でちょうど20年。彼らが到達した「デジタル・ハードコア」の極致は、今なお後進のバンドやクリエイターたちに多大な影響を与え続けている。

解散ではなく「活動休止」という形のまま、伝説として語り継がれる彼ら。そのキャリア最終盤に放たれた衝撃作『SCARY』を、四半世紀近い時を経た今、改めて解剖していく。

世界を熱狂の渦に叩き込んできた“音の開拓者”

THE MAD CAPSULE MARKETS。デビュー以来、パンク、ハードコア、そしてデジタルサウンドを融合させ、常に日本のロックシーンの最前線を切り拓いてきた。特に2000年代初頭の彼らは、まさに世界基準のバンドとして全盛期を謳歌していた時期でもある。

彼らが放つ音は、単なる音楽という枠を超えて、聴く者の細胞を根底から揺さぶるような「現象」だった。

通算17枚目のシングルとしてリリースされた本作は、そんな彼らが海外ツアーなどを経て、満を持して世に問うた最新のオリジナルサウンドだった。当時、多くのファンが待ち望んでいたのは、さらなる進化を遂げた「マッド」の鼓動。届けられた『SCARY』は、その期待を遥かに超えるほどに、ストイックで冷徹な美学に貫かれた作品に仕上がっていた。

音の中に宿る“究極の緊張感”

サウンドの核心に触れると、そこにはTAKESHI UEDAの凄まじいまでの職人魂が息づいている。重厚なベースラインと、そこにMOTOKATSU MIYAGAMIによる胸を打ち付けるビート。KYONOの感情を排したかのような、それでいて内圧の極めて高いボーカルが重なる。

「恐怖を消し去る」というニュアンスを含んだサブタイトルが示唆するように、この曲は単に不安を煽るものではない。むしろ、自分を取り巻くノイズを冷徹に分析し、それを力へと変えていくような、強靭な精神性が貫かれている。

1990年代のパンキッシュな衝動から、2000年代のデジタル・ハードコアへの進化。その到達点として、この『SCARY』は、彼らが世界中のビッグ・フェスティバルで喝采を浴びてきた理由を、饒舌に物語っていた。

伝説の終焉を告げた“美しき別れ”

本作がリリースされた2004年は、彼らにとって一つの大きなターニングポイントでもあった。このシングルを含むアルバム『CiSTm K0nFLiqT...』の発表後、バンドはさらにその先へと突き進むかと思われたが、2006年に突如として活動休止を発表する。結果として、この『SCARY』が彼らにとってキャリア最後を飾るシングル作品となった事実は、今振り返ると深い感慨を抱かせる。

彼らが追求してきたのは、既存のジャンルに安住することではなく、常に「自分たちの鳴らしたい音」を研ぎ澄ませていくことだった。長年にわたり走り続けてきたバンドが、その最終章の入り口で鳴らしたこの音は、少しも守りに入っていない。むしろ、新時代のテクノロジーを誰よりも過激に乗りこなし、自らの限界を突破しようとする挑戦的な姿勢が、音の粒一つひとつに刻まれている。

22年経っても色褪せない“未来への遺言”

あれから22年という月日が流れた。音楽を取り巻く環境は激変し、音の作り方も聴き方も全く異なるものになった。しかし、この曲が流れた瞬間に全身を駆け抜ける、あのビリビリとした「未知の振動」は、今なお少しも失われていない。むしろ、情報の濁流に飲み込まれそうな現代においてこのサウンドは、より一層のリアリティを持って響く。

時代に迎合せず、ただ己の信じる音だけを信じた男たちの足跡。それは、私たちが日々の生活の中で忘れかけていた「純粋な表現」の熱量を、今も静かに思い出させてくれる。未来を先取りしすぎた彼らの音楽は、2026年という今この瞬間も、私たちの現在地を鋭く、そして美しく照らし出し続けているのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。



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