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20年前、若き才能が放った“鮮烈な火花” 学園ドラマと共鳴した“全力疾走のポップサウンド”

  • 2026.2.16

2006年。携帯電話は折り畳み式が主流で、放課後の教室にはまだアナログな熱気も漂っていた。SNSが普及する前の私たちは、ドラマの主題歌やテレビから流れる音楽を共通言語にして、明日へのエネルギーをチャージしていたように思う。

何かに抗いたいけれど、その方法がわからない。そんなもどかしい青い衝動を抱えていた季節に、突き抜けるような冬の青空を連想させる一曲が届いた。

AAA『ハレルヤ』(作詞:菜穂・作曲:h-wonder)――2006年2月8日発売

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2011年撮影、音楽グループ「AAA」トリプルエーの元メンバー・西島隆弘

衝動を音に閉じ込めた“始まりの合図”

デビューから間もなく、驚異的なスピードでシングルを連発していた彼らが、5枚目の作品として放ったのがこの楽曲だった。当時の彼らは、まだ何者でもないという危うさと、これから世界を塗り替えていくのだという不遜なほどの自信を併せ持っていた。

サウンドプロデュースを手がけたのは、数々のヒット曲を生み出してきたh-wonder。彼の得意とするキャッチーなメロディラインと、疾走感あふれるアレンジが、デビュー間もないグループの瑞々しいエネルギーをこれ以上ないほど鮮明に引き出している。

イントロが鳴った瞬間に視界が開けるような、あの開放感。重厚なギターサウンドと弾けるようなデジタル音が混ざり合い、聴く者の背中を強引に、けれど優しく押し出す。それは、変化を恐れていた当時の自分たちにとって、最高に心地よい「煽り」だったのかもしれない。

教室の空気を震わせた“七人の群像劇”

この楽曲を語る上で欠かせないのが、TBS系ドラマ『ガチバカ!』との共鳴だ。熱血教師と落ちこぼれの生徒たちがぶつかり合う学園ドラマのオープニングを飾ったこの曲は、単なるタイアップの枠を超えて、物語の一部として機能していた。

男女混成グループという、当時の音楽シーンでも異彩を放っていた彼らのスタイルは、ドラマの中の多様な生徒たちの姿とも重なった。力強い男性ボーカルと、華やかで透明感のある女性ボーカルが交差する構成は、一人ひとりが主人公であることを高らかに宣言しているようでもあった。

サビで全員の声が重なったときの爆発的なパワーは、まるで放課後の屋上で叫んでいるような解放感をもたらしてくれる。誰にも届かないと思っていた叫びが、この歌に乗せることでどこまでも遠くへ飛んでいけるような、そんな根拠のない希望を私たちは抱いていた。

言葉の刃が切り拓く“新たなリズム”

楽曲の中で、ひときわ鋭い輝きを放っているのがラップパートだ。現在、SKY-HIとして日本の音楽シーンを牽引する日高光啓が繰り出すフロウは、当時のアイドルポップスの常識を軽やかに塗り替えていった。

単なる楽曲のアクセントとしてのラップではなく、旋律と対等に渡り合い、楽曲のメッセージをより強固なものにする。流れるようなフロウと、意思の強いライミング。彼が言葉を放つたびに、楽曲に一本の太い芯が通るような感覚を覚える。

このラップパートがあったからこそ、この曲は単なるキラキラしたポップソングに留まらず、どこか泥臭く、必死に生きる若者たちのリアルを映し出すことができた。若さゆえの焦燥感や、見えない壁を壊そうとする意志が、その短い数小節に凝縮されていた。

記憶の中で鳴り止まない“青春の残像”

20年という月日が流れ、私たちの環境は劇的に変わった。折り畳み携帯はスマートフォンに変わり、放課後の教室にいた私たちは、それぞれの場所で大人としての日常を生きている。

それでも、ふとした瞬間にこの曲のイントロが耳をかすめると、一瞬にして2006年のあの風が吹き抜ける。それは、ただの懐かしさではない。まだ何者でもなかった自分たちが、全力で明日を信じようとしていたあの頃の熱量が、音の隙間から溢れ出してくるのだ。


r※この記事は執筆時点の情報に基づいています。