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20年前、真冬の街を貫いた“研ぎ澄まされた美学” 進化を止めないカリスマが放った“大人の色気”

  • 2026.2.13

世の中は急速にデジタル化の波に呑み込まれ、携帯電話で音楽を聴くことが当たり前になりつつあった2006年2月。街の景色はどこか記号化され、スピード感ばかりが求められていたけれど、私たちの心は、いつだって「本物」の響きを渇望していた。

そんな冬の冷え切った空気の中に、あまりにも鋭く、そして熱い旋律が放たれた。

氷室京介『EASY LOVE』(作詞:松井五郎・作曲:氷室京介)――2006年2月8日発売

静寂を切り裂く、氷のような鋭さと熱狂

2006年2月8日にリリースされたこの曲は、氷室京介にとって24枚目のシングルにあたる。冬の朝、窓を開けた瞬間に肌を刺す冷気のような、凛とした緊張感がこの曲には漂っている。

冒頭、氷室のボーカルが流れた瞬間、リスナーは一気に彼の独壇場へと引き摺り込まれてしまう。

それは、単なるロックナンバーという言葉では片付けられない、緻密に計算し尽くされた音の粒子が作り出す世界だ。特筆すべきは、氷室京介自身が作曲のみならず、編曲までも手がけている点である。

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2004年、東京・代々木第一体育館でライブをおこなった氷室京介(C)SANKEI

活動の拠点をロサンゼルスに置いていた彼は、現地の最新鋭のサウンドを吸収しながらも、日本人としての叙情性を決して失うことはなかった。

デジタルとアナログが交錯するサウンドメイキングは、まさに時代の分岐点に立っていた2006年という年を象徴しているかのようだ。

贅肉を削ぎ落としたタイトなビートと、重厚でありながら透明感のあるギターの重なり。その中心で、氷のような硬質さと、マグマのような熱量を併せ持った歌声が、縦横無尽に駆け抜けていく。

時を超えて鳴り響く、変わらぬ魂の鼓動

リリースから20年という月日が流れた今、改めてこの曲を聴き返してみる。音楽シーンのトレンドは移り変わり、再生デバイスも様変わりしたけれど、この曲から放たれる「鮮度」は全くと言っていいほど失われていない。

良い音楽は、発表された瞬間に完成するのではなく、リスナーの記憶の中で熟成されていくものなのかもしれない。

真冬の寒さの中で、どこか遠くを見つめていたあの頃の自分。『EASY LOVE』の鋭い旋律は、そんな忘れていたはずの記憶の断片を、鮮やかに呼び覚ましてくれる。

たとえ世界がどんなに変わっても、私たちが求める「真実」は、こうした妥協のない音の中にこそ宿っている。20年前、真冬の街を貫いたあの熱い鼓動は、今も私たちの心の中で静かに、そして力強く脈打ち続けているのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。