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32年前、ローラースケートのイメージを超えた“表現力” リレハンメルの熱狂を背負った“勇気のアンセム”

  • 2026.1.29

1994年、冬季オリンピックがノルウェーのリレハンメルで開催された。日本中が、競技の結果だけでなく、その舞台に立つこと自体の意味を見つめていた時代だ。

白い息が街に溶け、テレビから異国の雪景色が流れてきたあの頃。スポーツニュースもバラエティも、どこか同じ言葉を共有していた気がする。「がんばれ」というより、もっと大きな、もっと前向きな合図が必要だった時代だ。そんな空気のなかで鳴り響いたのが、この一曲だった。

光GENJI『BRAVO! Nippon 〜雪と氷のファンタジー〜』(作詞:平井森太郎・作曲:馬飼野康二)――1994年1月21日発売

それは静かに背中を押す応援歌ではない。胸を張り、声を上げるための音楽だった。

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Google Geminiにて作成(イメージ)

雪と氷の向こうにあったもの

『BRAVO! Nippon 〜雪と氷のファンタジー〜』は、リレハンメルオリンピックの高揚感と一体化するように制作された、光GENJIの24枚目のシングルである。

当時の光GENJIは、ローラースケートという強烈なアイコンを超え、グループとしての表現力を広げていた時期にあった。ポップで華やかなイメージを保ちつつ、社会的なムードと真正面から結びつく楽曲を担う存在へと移行しつつあった、その現在地がこの曲には刻まれている。

高揚を設計したサウンドの力

作曲を手がけたのは馬飼野康二。長年にわたり日本のポップスを支えてきた作家らしく、この曲でも“分かりやすい強さ”が徹底されている。

イントロから広がるスケール感、明確なリズムの推進力、そして一体感を生むコーラスワーク。どれもが、聴き手の感情を自然に引き上げていく構造だ。

編曲は小西貴雄。シンセサウンドとブラス的な響きを効果的に配置し、寒冷地のイメージと祝祭感を同時に成立させている。冷たい空気のなかでこそ、音楽はより大きく、より鮮やかに鳴る。そんな感覚が、音像そのものから伝わってくる。

この曲は、個人の感情に寄り添うのではなく、「みんなで同じ方向を見る」ために作られている。だからこそ、メロディは迷わず、テンポは止まらない。

光GENJIという存在が担った役割

1990年代前半、アイドルという存在は変化の只中にあった。個性や物語性がより強く求められ、単なる人気だけでは立ち続けられなくなっていた時代だ。

そのなかで光GENJIは、時代的なイベントや社会的なムードと結びつくことで、グループとしての役割を更新していった。

『BRAVO! Nippon 〜雪と氷のファンタジー〜』は、まさにその象徴的な一曲である。

ステージの上で完結する音楽ではなく、テレビの向こう、街の空気、国全体の気分とリンクする楽曲。「今、この瞬間を共有している」という感覚を、音楽として成立させていた。

あの冬に残った余韻

この曲を聴くと、具体的な競技や選手の名前よりも、あの冬の空気感が先に蘇る。夜のニュース番組、ストーブの匂い、画面越しに見る白銀の世界。そのすべてと一緒に、この曲は記憶に刻まれている。

派手さはある。だが、それ以上にあるのは、時代と真正面から向き合った誠実さだ。だからこそ、『BRAVO! Nippon 〜雪と氷のファンタジー〜』は、単なるキャンペーンソングとして消費されることなく、今も“あの頃の日本”を思い出させる音として残っている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。