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32年前、バンド→ソロとして確立した大人気アーティスト 流行を拒み個を貫いた“真実のソロワーク”

  • 2026.1.28

1994年1月。街はどこか不安定な空気に包まれていた。派手なものは一巡し、次に何を信じればいいのか、多くの人が言葉にできない違和感を抱えていた時代。そんな空気の中で、ひとりの表現者が放った音は、説明も装飾もなく、ただ“そのまま”だった。

hide『DICE』(作詞・作曲:hide)――1994年1月21日発売

それは、バンドの看板も、文脈も必要としない。「hideという存在そのもの」を、そのままシングル盤に封じ込めたような一曲だった。

分岐点に立ったソロアーティストhide

hideは、X JAPANのギタリストとしてすでに圧倒的な存在感を放っていた。派手なビジュアル、鋭利なギタープレイ、ステージ上でのカリスマ性。そのどれもが、1990年代前半のロックシーンに強烈な印象を残している。

一方で、ソロ名義での活動は、バンドとは異なる実験と挑戦の場でもあった。

『DICE』は、ソロとして3枚目のシングル。すでに「ソロプロジェクト」という段階を越え、hide自身の音楽的美学がはっきりと輪郭を持ち始めていた時期の作品だ。

特筆すべきは、この楽曲が作詞・作曲・編曲のすべてをhide自身が手がけている点にある。誰かの意図を汲む必要も、調整役もいない。そこにあるのは、完全に自己完結した音楽だった。

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1997年、X JAPAN解散ライブより(C)SANKEI

削ぎ落とされない衝動、そのままの音像

『DICE』の魅力は、整えられすぎていないところにある。音は歪み、リズムは荒々しく、決して聴きやすさを最優先していない。それでも、不思議と耳を引きつける力がある。

それは、この曲が「完成度」よりも「衝動」を優先しているからだろう。

ギターは感情の延長として鳴り、ボーカルは技巧よりも存在感で前に出る。歌い上げるのではなく、吐き出すような質感。ロックという形式を借りながら、実際には“hide個人の感情の記録”に近い

過剰な説明や演出を排したことで、逆に音の一つひとつが生々しく立ち上がってくる。

この曲には、時代に迎合しようとする姿勢がほとんど見えない。流行の音像をなぞるのではなく、「今、自分が鳴らしたい音」を選び取っている。その潔さこそが、『DICE』を特別な一曲にしている理由だ。

ロングヒットではなく、深く刺さる一曲として

『DICE』は、クォーターミリオン(25万枚)を達成したが、いわゆる派手なヒット曲ではない。だが、hideのソロワークを語る上で欠かせない一曲として、今も確かな存在感を放っている。

この曲が支持され続けているのは、「誰にも寄せていない音」だからこそだろう。共感を狙うわけでも、分かりやすさを提示するわけでもない。それでも、聴く側の感情に直接触れてくる強度がある。

1994年という時代の空気と、hideという個人の内側が、偶然にも鋭く重なった瞬間。その記録が『DICE』だった。

余韻として残る、孤高の選択

『DICE』を聴き終えたあとに残るのは、爽快感でも安心感でもない。むしろ、少しざらついた感触と、言葉にならない余韻だ。だが、その余韻こそが、この曲の本質なのだと思う。

32年が経った今でも、この楽曲が色褪せないのは、hideが「自分の音」に嘘をつかなかったからだろう。時代が変わっても、表現者の覚悟だけは、はっきりと音に刻まれ続ける。

『DICE』は、そんな当たり前で、だからこそ難しい選択を、真正面から形にした一曲なのである。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。