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35年前、5人が仕掛けた“早すぎたポップス” 等身大を脱ぎ捨てて放たれた“四つ打ちの衝撃”

  • 2026.1.19

1991年元日、街はまだバブルの余韻をまといながら、新しい年を迎えていた。華やかな装い、浮き足立つ空気、そしてテレビから流れてくるのは、いつもより少し特別な音楽。そんな中で、ふと耳を留めた人も多かったはずだ。それまでのアイドルのイメージとは、少し違うビートが鳴っていた。

CoCo『Live Version』(作詞:田口俊・作曲:都志見隆)――1991年1月1日発売

アイドルらしい可憐さや親しみやすさをまとってきた彼女たちが、四つ打ちのハウスサウンドを真正面から取り入れた。その事実は、当時の空気を知るほどに、少し大胆で、少し先を急いだ選択にも見えてくる。

テレビから生まれたCoCo、その立ち位置

CoCoは、フジテレビ系のバラエティ番組『パラダイスGoGo!!』のアイドル養成講座「乙女塾」から誕生した5人組アイドルグループだ。明るさ、親近感、そして“等身大”という言葉が似合う存在で、1980年代末のアイドルシーンに自然体で溶け込んでいた。

決して尖りすぎず、誰かを置いていかない。その安心感こそが、CoCoの魅力だったと言っていい。

そんな彼女たちにとって、『Live Version』は5枚目のシングル。活動が安定期に入り、次の一手が問われるタイミングでもあった。だからこそ、この楽曲は「変化」ではなく、「試み」として世に出た一曲だったのだろう。

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1994年、CoCoの卒業パーティーより。左からから宮前真樹、三浦理恵子、大野幹代、羽田惠理香(C)SANKEI

軽快なビートが運んできた、時代の匂い

『Live Version』の最大の特徴は、四つ打ちを軸にしたハウスサウンド。そのリズムは、当時の日本のメインストリームではまだ珍しく、どこかクラブカルチャーの気配を感じさせるものだった。

テンポは軽やかで、音の配置もシンプル。重たさはなく、風通しのいいサウンドが全体を支配している。

この音像が面白いのは、CoCoのボーカルが“無理に大人びていない”点だ。背伸びをせず、これまでと同じ距離感の声が、そのままビートの上に置かれている。

だからこそ、この曲は攻めすぎず、でも確実に新しい。リスナーは戸惑いながらも、「時代が少し動いた瞬間」を感じ取ったのではないだろうか。

早すぎたのか、それとも正直だったのか

CoCoは、この曲で何かを大きく変えたわけではない。けれど、変わる可能性を拒まなかった。その姿勢自体が、今聴くととても誠実に映る。

『Live Version』は流行のど真ん中ではなかった。大きなムーブメントを起こしたわけでもない。それでも、この曲には無理がない。背伸びした“大人化”でも、話題先行の実験でもなく、「今、できることを素直にやった」感触がある。

アイドルが時代の音をどう受け取るか、その模索の過程が、そのまま音に残っているのだ。

軽快なリズムに身を委ねながら、まだ定義されきっていない未来を、少しだけ先取りしてみる。その一歩が、『Live Version』だった。

35年経った今、この曲は派手な名曲として語られることは少ない。だが、当時の空気を静かに閉じ込めた一曲として、確かにここに残っている。

時代が追いつく前に鳴っていた、軽やかな足音。その感触を思い出させてくれる楽曲だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。