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40年前、張り詰めた夜が静かに燃えた“硬質なロマン” 年明けに放たれた“孤高の存在感”

  • 2026.1.19

40年前、年が変わる瞬間の空気を覚えているだろうか。祝祭と高揚が街を包む一方で、どこか張り詰めた静けさが漂う、特別な時間帯。1986年の幕開けもまた、そんな独特の緊張感をまとって始まった。その元日に、まるで夜の闇に一本の火を灯すようにリリースされた楽曲がある。

吉川晃司『キャンドルの瞳』(作詞:安藤秀樹・作曲:原田真二)――1986年1月1日発売

7枚目にして際立つ、揺るがない輪郭

『キャンドルの瞳』は、吉川晃司にとって7枚目のシングル。デビューから数年を経て、彼はすでに“一過性の存在”ではないことをはっきりと示していた。

この時期の吉川晃司は、派手なアクションやビジュアルの印象だけで語られがちだったが、音楽面では一貫してシリアスで硬質な表現を選び続けている。流行に合わせて形を変えるのではなく、自身の立ち位置を固めていく段階にあった。

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1984年、第26回日本レコード大賞で新人賞を受賞した吉川晃司(C)SANKEI

夜を切り取る、研ぎ澄まされたサウンド

作曲を手がけたのは原田真二。メロディは過剰に盛り上がることなく、一定の緊張感を保ったまま進行していく。その構成が、この曲に独特の“夜の温度”を与えている。

派手な装飾よりも、リズムと旋律の輪郭をはっきりと際立たせることで、静かな圧を生み出している。この設計によって、曲は聴き手に寄り添うのではなく、一定の距離を保ったまま存在感を放つ。

吉川晃司のボーカルもまた、感情を前面に押し出さない。熱を誇張しないからこそ、内側に灯る火がより強く感じられる、そんな歌声だった。

元日に放たれた、静かな選択

1986年1月1日発売という日付は、この楽曲の印象をさらに際立たせる。祝賀ムードに満ちたタイミングでありながら、『キャンドルの瞳』は決して浮かれた表情を見せない。

このリリースタイミングは、吉川晃司という表現者のスタンスを象徴しているようにも映る。華やかな場に身を置きながら、あえて硬質でストイックな作品を提示する。その選択が、彼を“唯一無二”の存在として際立たせていた。

当時の音楽シーンには、明るさや勢いを前面に出した楽曲も多かった。その中で、この曲が放つ静かな緊張感は、異質でありながら確かな説得力を持っていた。

揺らがない美学が残した余韻

『キャンドルの瞳』は、時代を代表する大ヒット曲として語られるタイプの作品ではない。だが、吉川晃司のキャリアを振り返るとき、この曲が示していた方向性は決して小さくない。

40年経った今聴いても、この曲が古びないのは、流行よりも美学を優先していたからだ。静かに燃え続ける一本のキャンドルのように。

『キャンドルの瞳』は、1986年の始まりに刻まれた、揺るがない意志の記録として、今もひそやかに光を放っている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。