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40年前、大人気ユニットが“変革した”伝説のシングル ヒットメーカーへ踏み出す“決意のサウンド”

  • 2026.1.16

「40年前、まだ朝になりきらない街で、何を聴いていた?」

1986年2月。夜と朝の境目が曖昧な時間帯、街にはまだ昨日の熱が残り、次の時代を予感させるざわめきが漂っていた。そんな空気の中で鳴り響いたのは、従来のフォークでもバラードでもない、鋭く、前のめりなサウンドだった。

チャゲ&飛鳥『モーニングムーン』(作詞・作曲:飛鳥涼)――1986年2月5日発売

このタイトルが示すのは、爽やかな朝ではない。むしろ、夜を引きずったまま迎える、覚醒直前の時間。当時のチャゲ&飛鳥(後のCHAGE and ASKA)が向き合っていた“変化の瞬間”そのものだった。

夜明け前に鳴らされたシングル

『モーニングムーン』は、チャゲ&飛鳥にとって14枚目のシングルにあたる。デビュー当初のフォークデュオとしてのイメージは、この頃すでに過去のものになりつつあった。飛鳥涼が手がける楽曲は、より構築的に、より刺激的に変化していく。

この楽曲で特徴的なのは、打ち込みを積極的に取り入れたロック・テイストのビートだ。生演奏の温度感を残しながらも、デジタルの輪郭を隠さない。派手に鳴り響くシンセ・サウンドが前面に出ることで、楽曲全体に鋭い緊張感が生まれている。

編曲を担当したのは佐藤準。当時、ポップスとデジタルサウンドの橋渡し役として存在感を強めていた人物だ。彼の手腕によって、この曲は単なるロックナンバーではなく、時代の加速をそのまま音にしたような仕上がりを見せている。ちなみに、飛鳥涼と佐藤潤の組み合わせは、後に光GENJI『STAR LIGHT』や『パラダイス銀河』という大ヒット曲も生み出している

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1990年、東京都・日本武道館でコンサートをおこなったチャゲ&飛鳥(C)SANKEI

攻めたサウンドが生んだ、アグレッシヴな魅力

『モーニングムーン』の魅力は、迷いのなさにある。メロディ・ラインは直線的で、装飾よりも推進力を優先している。音が次の音を引っ張り、リスナーを立ち止まらせない。どこか落ち着かないのに、耳を離せない感覚が、曲全体を支配している。

2人のボーカルも、この楽曲では感情を溜め込むより、外へ放つ方向に振り切られている。声は鋭く、フレーズごとに緊張を孕み、サウンドの波に真正面から乗っていく。その姿勢は、従来の叙情的なイメージとは異なり、よりアーティスト然とした佇まいを強く印象づけた。

打ち込みと生音がぶつかり合うことで生まれる、やや荒削りな質感。それこそが、この曲を80年代半ばの象徴的な一曲として際立たせている。

時代の空気とリンクした、デジタルへの接近

1986年という年は、日本の音楽シーンにとって転換点のひとつだった。デジタル機材が急速に普及し、制作現場では新しい音作りが次々と試されていく。『モーニングムーン』は、その流れに対して慎重になるのではなく、あえて前に出た作品だ。

フォーク出身のデュオが、ここまで明確にデジタルサウンドを取り込んだことは、当時としては決して無難な選択ではなかった。それでもこの楽曲は、チャゲ&飛鳥が“次のステージへ進む”意思表示のように鳴っている。

この姿勢は、のちに続く彼らの作品群へと確実につながっていく。叙情と構築、感情とシステム。その両立を模索するプロセスの中で、『モーニングムーン』は重要な通過点だったと言えるだろう。

夜と朝のあいだで鳴り続ける音

『モーニングムーン』を聴くと、完成された安心感よりも、変化の途中にある不安定さが先に立つ。だが、その不安定さこそが、この曲を今も新鮮に感じさせる理由だ。

夜明け前の空気は、いつの時代も少し張り詰めている。何かが終わり、何かが始まる直前の感覚。40年前、この曲が鳴っていた街にも、同じ空気が流れていたはずだ。

次の瞬間へ踏み出していく音楽。『モーニングムーン』は、そんな“強さ”を刻み込んだ一曲として、今も確かに息づいている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。