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25年前、洋楽をカバーした“じわじわ”20万ヒット 新たな歌姫像を提示した“飛躍の一曲”

  • 2026.1.16

2001年2月。少し先の春を待ちながら、ファッションも音楽も「次の段階」へ進もうとしていた時代。そんな空気の中で、不意に耳に残る軽やかなビートと、凛とした女性ボーカルが流れ始める。

島谷ひとみ『パピヨン』(作詞・作曲:Janet Jackson、James Harris III、Terry Lewis/日本語詞:康珍化)――2001年2月7日発売

翻訳ではなく、再構築という選択

『パピヨン』は、島谷ひとみにとって3枚目のシングルにあたる作品だ。2000年にリリースされたジャネット・ジャクソン『Doesn’t Really Matter』を原曲としたカバーだが、ここで行われているのは単なる日本語化ではない。

日本語詞を手がけた康珍化は、原曲の恋愛観をなぞることをせず、「アジア」というモチーフを前面に押し出した新たな世界観を構築している。異国情緒や精神性をまとわせることで、この楽曲は日本のポップスとして自立した存在感を獲得した。

当時、海外ヒット曲のカバーは決して珍しくなかった。しかし、その多くは原曲のイメージを忠実に移植する形にとどまっていた。その中で『パピヨン』は、原曲の強度を保ったまま、別の文化圏の物語として生まれ変わったという点で、明確に一線を画している。

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島谷ひとみ-2000年撮影(C)SANKEI

羽のように軽く、それでいて芯のある音像

サウンド面でこの曲を支えているのが、大槻”KALTA”英宣と上野圭市による編曲だ。原曲が持つR&Bのグルーヴを軸にしながらも、音の重心はあくまで軽やか。ビートはシャープだが、過度に攻撃的ではなく、身体に自然と馴染む設計になっている。

そこに重なる島谷ひとみのボーカルは、当時すでに確立されつつあった“透明感”を武器にしながらも、この曲ではより意志的だ。甘さに寄りかからず、かといって強さを誇示しすぎることもない。そのバランスが、楽曲全体に洗練された印象を与えている。

軽快なのに軽薄ではない。この感触こそが、『パピヨン』の最大の魅力だろう。

ロングセラーが証明した「時代との接点」

『パピヨン』は、派手な一発ヒットというよりも、時間をかけて支持を広げていった楽曲だった。結果的に20万枚を超えるセールスを記録し、島谷ひとみの代表曲として定着していく。

2001年前後の音楽シーンは、J-POPが細分化し、R&Bやダンスミュージックの要素が本格的に浸透し始めた時期でもある。その流れの中で、『パピヨン』は「海外のトレンド」と「日本的な感性」を無理なく接続した、ひとつの理想形として受け入れられた。

この曲の成功は、島谷ひとみ自身のキャリアにおいても重要な意味を持つ。以降、彼女は単なるポップシンガーではなく、エスニックやダンスの要素を取り込んだ表現者として、独自のポジションを築いていくことになる。その起点に、この3枚目のシングルがあったことは見逃せない。

変化の入口に立っていた、あの頃の記憶

25年という時間が経った今、あらためて『パピヨン』を聴くと、そこには2000年代初頭特有の高揚感と、次の時代へ進もうとする予感が封じ込められていることに気づく。

大きく羽ばたく直前の、わずかな助走。その瞬間のきらめきを、ポップスとして記録した一曲。『パピヨン』は、時代とアーティストの関係性を、軽やかな羽音とともに今も伝え続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。