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25年前、バラエティ発ユニットの本気の“ラストシングル” 「ギャグで」締めたワケ

  • 2026.1.14

2001年2月。テレビから流れてくる音楽は、どこか“きれいに整えられすぎている”ようにも感じられた。完成度の高さや洗練が当たり前になり、少しのズレや違和感は、すぐに排除されていく時代。そんな空気の中で、最後の最後に、あえて逆方向へと舵を切ったグループがいた。

野猿『Fish Fight!』(作詞・作曲:後藤次利)――2001年2月28日発売

野猿のラストシングルは、感動的な別れでも、王道の集大成でもなかった。むしろ、「ここまでやるか」と思わせるほど、徹底的に肩の力を抜いた終わり方だった。

ふざけた始まりが、本気になっていった日々

野猿は、バラエティ番組から生まれた企画ユニットだった。出発点は、音楽シーンの正統性とは無縁の場所。いわば“裏側”にいた存在だ。だが、活動を重ねるごとに、その立ち位置は少しずつ変わっていく。

ダンス、歌、そして集団としての迫力。そこには、単なる余興では済まされない熱量があった。本業ではないからこそ、全力で取り組むしかなかった彼らの姿勢が、次第に作品にもにじみ出ていった。

フナが主役になるという選択

そんな野猿が、ラストシングルとして選んだのが『Fish Fight!』だった。

主人公は魚。その中でも、フナという、決してヒーローではない存在だ。大きくもなく、強くもない。他の魚と比べてしまい、劣等感を抱えながら、それでも水の中で生きていく。

楽曲全体は、これまでのシリアス寄りな作品群と比べると、明らかにコミカルだ。TV出演時やステージでは、メンバー全員がフナのかぶりものを着けてパフォーマンスする。その光景は、一見すると完全に“笑い”に振り切っている。

だが、その裏側には、野猿らしい一貫性があった。自分たちは主役ではない。王道でもない。それでも、ここまで来た。 その自己認識を、最も素直な形で表現した結果が、この曲だったとも言える。

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2001年5月、野猿の完全撤収ライブより(C)SANKEI

「最後もギャグで」という覚悟

当時、発起人でもあるとんねるずの石橋貴明はこのラストについて、始まりがギャグだったから、最後もギャグで終えたと語っている。それは投げやりな判断ではない。むしろ、徹底して自分たちの立ち位置を理解した上での選択だった。感動的に締めることも、真面目にまとめることも、できたはずだ。それでも、そうしなかった。

笑いに見せかけて、実は一番誠実な終わり方。それが『Fish Fight!』だった。

過剰に意味づけをしない。美談にも仕立てない。ただ、「こういう存在でした」と、そのまま提示する。その潔さこそが、野猿というグループの核心だったのだろう。

きれいに終わらないから、記憶に残る

25年が経った今、野猿を思い出すとき、多くの人が同時に“心地よい違和感”を思い出すはずだ。音楽番組の中では明らかに異端。けれど、そこには常に真剣さがあった。

『Fish Fight!』は、名曲として語られるタイプの楽曲ではないかもしれない。だが、「ああ、野猿らしかったよね」と、自然に笑って思い出せるラストとして、これ以上ない着地だった。

フナのかぶりものの奥にあったのは、照れでも逃げでもなく、自分たちの歩んだ道への肯定だったのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。