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25年前、大ヒット後に放たれた“爽やかサウンド” 「空」を連想させるワケ

  • 2026.1.9

25年前、Every Little Thingは、ひとつの大きな成功を手にした直後にいた。2001年2月。2人体制になって以降、最大級のヒットとなった『fragile』が、長く街に鳴り続けていた時期だ。その余韻がまだ色濃く残る中で、次にどんな曲を出すのか。そこには、自然と視線が集まっていた。

Every Little Thing『Graceful World』(作詞:持田香織・作曲:大谷靖夫)――2001年2月21日発売

この曲は、『fragile』の延長線上にあるようで、実は向いている方向が違う。内側に沈み込むのではなく、視界がひらけていく。重さではなく、風通しのよさを選んだ一曲だった。

『fragile』の次に、何を鳴らすかという選択

『Graceful World』は、Every Little Thingにとって18枚目のシングル。その直前にリリースされた『fragile』は、2人体制になってからのELTを象徴する大ヒット曲だった。繊細で切実な感情を前面に出した楽曲が、多くのリスナーの心に深く残った。

だからこそ、その次に置かれた『Graceful World』の立ち位置は重要だった。

同じ温度で続けることもできたはずだが、ELTはそうしなかった。感情を内に向けるのではなく、もう一度、外の世界に目を向ける。その意思が、この曲にははっきりと表れている。

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2003年、「a-nation2003」に出演したEvery Little Thing(C)SANKEI

空港ドラマに重なった、さわやかなサウンド

『Graceful World』は、TBS系ドラマ『ビッグウイング』の主題歌として制作された。空港を舞台に、人と人の交差や、仕事と人生の選択を描いた作品。その世界観に、この曲のサウンドは驚くほどよく馴染んでいた。

イントロから漂うのは、軽やかで澄んだ空気感。過度に感情を煽らず、視界が開けていくような音像は、まさに「空」を連想させる。離陸前の静かな高揚感に近いと言ってもいい。

大谷靖夫が描いたメロディは、流れるように進み、どこか遠くへ連れていく感覚を持っている。『fragile』で立ち止まった心が、この曲では再び歩き出す。その対比が、とても自然だ。

持田香織の歌声が映した、前向きな軽さ

持田香織のボーカルも、この曲では明らかに表情が違う。『fragile』で見せた張りつめた声ではなく、肩の力が抜けた、透明感のあるトーン。無理に感情を込めず、言葉をまっすぐ届ける歌い方が、楽曲のさわやかさを際立たせている。

感情を吐き出したあとに残る、少し軽くなった自分。『Graceful World』が描いているのは、まさにその状態だ。

“ピークの次”に選ばれた、もう一つの正解

大ヒットの直後に、同じ路線をなぞらない。Every Little Thingは、このタイミングでそれを選ばなかった。『Graceful World』は、派手な話題性を持つ曲ではないが、ユニットの歩幅を整える役割を確実に果たした。

空港を舞台にしたドラマで流れながら、視聴者の気持ちを次の一週間へ送り出す。その役割を、過不足なく担った主題歌だった。

25年経った今、この曲を聴くと、ピークの裏側で交わされていた静かな選択が見えてくる。Every Little Thingは、この曲で、立ち止まらず、走りすぎず、きちんと前を向く方法を提示していたのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。