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30年前、本格ロックバンドが手がけた“大人気アニメ主題歌” 大人からも受け入れられたワケ

  • 2026.1.9
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1993年撮影、ブルーハーツ・コンサート 甲本ヒロト(C)SANKEI

1996年2月、何気ない朝や放課後、テレビから流れてきた短いイントロに、理由もなく心が跳ねた記憶はないだろうか。1996年の街は、まだ情報はテレビやラジオが運んできた。そんな日常の中で、一瞬で空気を変えるロックが、静かに、しかし確実に入り込んでくる。

↑THE HIGH-LOWS↓『胸がドキドキ』(作詞:甲本ヒロト・真島昌利)――1996年2月21日発売

この曲は、気づけば毎週決まった時間に流れ、知らないうちに生活のリズムの一部になっていった。

新しいバンド、新しい役割

↑THE HIGH-LOWS↓(ザ・ハイロウズ)は、THE BLUE HEARTSの解散後、甲本ヒロトと真島昌利が中心となって結成されたバンドだ。前身バンドの圧倒的な存在感を背負いながらも、彼らは過去をなぞるのではなく、新しい形でロックを鳴らそうとしていた。

『胸がドキドキ』は、その↑THE HIGH-LOWS↓にとって4枚目のシングル。日本テレビ系テレビアニメ『名探偵コナン』の初代オープニングテーマとして起用されたことで、ロックファン以外の層にも一気に届くことになる。同アニメの主題歌といえばビーイング系アーティストのイメージが強い人もいるかもしれないが、実は初代は↑THE HIGH-LOWS↓なのだ。

アニメの世界観と結びつきながらも、楽曲自体はあくまでシンプルで、バンドの素のエネルギーを保っていた。

余計なものを削ぎ落とした疾走感

この曲の魅力は、サウンドが持つパワーだろう。短い演奏時間の中で、ギター、ベース、ドラムが一直線に走り抜ける。その勢いを先導するのは、甲本ヒロトの伸びやかなボーカルだ。力任せに叫ぶのではなく、軽やかに、しかし確かな熱を伴って前へ進んでいく。

メロディは親しみやすく、テンポはやや速い。それなのに、どこか肩の力が抜けている。このバランス感覚こそが、子どもから大人まで自然に受け入れられた理由だった。アニメ枠で流れても違和感がなく、それでいてロックの芯は失われていない。

日常とロックが交差した瞬間

1996年当時、アニメの主題歌はタイアップの枠を超え、作品の顔として強い役割を持ち始めていた。その中で『胸がドキドキ』は、作品を説明しすぎることなく、ただ高揚感だけを残す存在だった。物語の始まりを告げる合図として、視聴者の感情を一段階引き上げる。

結果としてこの曲は、特定のシーンよりも、「あの時間帯」や「テレビの前の空気」と結びついて記憶されている人も多いだろう。ロックが生活の一部として鳴っていた、そんな時代の象徴のような一曲だ。

走り続ける鼓動の余韻

『胸がドキドキ』は、聴き終えたあとに残る軽い高揚感が、また次を聴きたくさせる。始まりを告げ、背中を押し、余韻だけを残して去っていく。その潔さが、30年経った今でも色あせない理由なのだろう。

日常の中でふと流れた瞬間、今でも胸が少しだけ高鳴る。その感覚こそが、この曲が生き続けている証拠だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。