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25年前、“脱・かわいい”で30万ヒットした4人 少女たちが選んだ“表現者への更新”

  • 2026.1.8

2001年2月。街にはまだCDショップの試聴機が並び、アイドルソングとJ-POPが同じ棚に置かれていた時代だ。テレビから流れる音楽は明るく、軽やかで、「かわいい」がひとつの正解として機能していた。そんな空気の中で、少しだけ手触りの違う音が鳴り始める。

タンポポ『恋をしちゃいました!』(作詞・作曲:つんく)――2001年2月21日発売

それは、彼女たちが“次の段階”へ進もうとする意志を、真正面から刻んだ1曲だった。

少女からユニットへ、確かに変わった立ち位置

タンポポは、モーニング娘。の派生ユニットとして誕生しながら、単なるスピンオフにとどまらない存在感を築いてきた。初期の柔らかなポップ路線を経て、前作『乙女 パスタに感動』で音楽的な輪郭は一段くっきりとする。そしてこの『恋をしちゃいました!』で、その流れは決定的になる。

6枚目のシングルとしてリリースされた本作は、30万枚を超えるセールスを記録。数字以上に重要だったのは、「タンポポはここで止まらない」というメッセージが、はっきりと鳴っていたことだ。

かわいいの中に宿る骨太なポップ・ロック

この楽曲の最大の特徴は、サウンドの質感にある。ポップでありながら、輪郭は太く、リズムは前へ前へと進む。編曲を手がけた渡部チェルによる音作りは、装飾よりも芯を重視し、歌声を真正面から受け止める構造になっている。

歌唱面でも、甘さに寄りかかりすぎないトーンが貫かれている。無理に背伸びをするのではなく、「今の自分たちで、かっこよく立つ」ことを選んだ声だ。その選択が、楽曲全体に不思議な説得力を与えている。

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2000年、神奈川・横浜ランドマークタワーで歌うタンポポ(C)SANKEI

制作背景にあった“確信”

プロデューサーであるつんくは、この曲を「より強いポップ・ロック」として構想した。海外で吸収したブリティッシュ・ロックの感覚を下敷きにしながら、オケは徹底的に骨太に、歌は「かわいい」ではなく「かっこいい」を軸に据える。

レコーディングでは、メンバーそれぞれの成長がはっきりと表れたという。短いテイクで完成に至った事実は、準備と集中力が噛み合っていた証拠だろう。ここには、ユニットとしての成熟が確かに刻まれている。

その先へ進むための1曲

『恋をしちゃいました!』は、タンポポの代表曲として語られることは多くないかもしれない。だが、グループが“変わる瞬間”を封じ込めた楽曲として、これほど明確な作品もない

かわいさを手放すことは、否定ではなく更新だった。少女の延長線ではなく、表現者として立つための選択。その決断が、25年経った今も、この曲を少しだけ凛とした存在にしている。

季節の終わりに吹く冷たい風のように、当時の空気を思い出させながら、『恋をしちゃいました!』は静かに、しかし確かに鳴り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。