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20年前、友人の死をきっかけに制作された“人生ソング” 「懐かしくて新しい」旋律

  • 2026.1.8
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2006年撮影、息の合った演奏で買い物客も聴き入らせた女性2人組ユニット、ナナムジカの西島梢(右)と松藤由里(左)(C)SANKEI

2006年2月。冷えた空気の中で、街の明かりが少しだけ滲んで見えたあの頃。恋や人生について、声高に語るよりも、胸の奥でそっと考える時間が増えていた。そんな時代の空気に、驚くほど自然に溶け込んだ一曲があった。

ナナムジカ『くるりくるり』(作詞:西島梢・作曲:松藤由里)――2006年2月15日発売

ほどけるように始まった、二人組ユニットの現在地

ナナムジカは、西島梢と松藤由里による2人組ユニット。『くるりくるり』はセカンド・シングルにあたる作品で、アコースティック楽器を主体とした、温度のあるバンド・サウンドが印象的だった。

中心にあるのは、西島梢のまっすぐで飾り気のない歌声。強く押し出すことも、過剰に感情を煽ることもなく、言葉をひとつひとつ確かめるように旋律に乗せていく。その佇まいは、2000年代のJ-POPが次第に“声量や勢い”から“質感や余白”へと重心を移していた流れとも重なっていた。

「くるりくるり」が描いた、終わらない循環

この楽曲の大きな特徴は、タイトルが示す通り“巡る”という感覚にある。歌詞の中では、命や出会い、別れが一直線に進むものではなく、形を変えながら繰り返されていくものとして描かれている。

ここでは、輪廻転生というモチーフが、宗教的でも観念的でもなく、とても個人的で、日常に近い感覚として置かれている。大切な存在は失われた瞬間に消えてしまうのではなく、見えないかたちでどこかに残り、巡り続ける。そう信じることで、人は前に進めるのかもしれない……そんな静かな肯定が、全体に流れている。

この曲が、ナナムジカの友人の死をきっかけに制作されたとされている背景を知ると、その言葉の選び方や距離感にも自然と納得がいく。悲しみを直接的に語らない代わりに、循環という構造の中にそっと置く。その姿勢が、聴き手それぞれの記憶や経験と重なっていく。

ドラマと音楽が交わった、ちょうどいい場所

『くるりくるり』は、唐沢寿明主演のドラマ『小早川伸木の恋』の主題歌として広く知られることになった。原作は柴門ふみのコミックスで、人生の選択を丁寧に描いた作品だ。

このドラマの世界観と、『くるりくるり』の持つ穏やかな循環性は、過不足なく噛み合っていた。物語の余韻として流れることで、登場人物たちの迷いや後悔、そして小さな希望が、音楽によって静かに包み直される。

原作者である柴門ふみが「ちょっとなつかしい気持ちになるような面白い曲」と評したという言葉も象徴的だ。この楽曲が喚起するのは、特定の出来事ではなく、誰の中にもある“思い出の手触り”そのものなのだろう。

強くないからこそ、長く残る

『くるりくるり』は、夜にひとりで歩くときや、ふと立ち止まった瞬間に思い出される、不思議な持続力を持っている。それはきっと、この曲が「答え」ではなく「循環」を描いたからだ。悲しみも喜びも、出会いも別れも、すべてが巡りながら続いていく。そう考えるだけで、今いる場所が少しだけ肯定される。

20年が経った今も、『くるりくるり』は静かに回り続けている。誰かの心の中で、また別の誰かの記憶と重なりながら。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。