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30年前、8年ぶりの紅白へ導いた“70万ヒット” 謎解きドラマを彩った“再点火の疾走曲”

  • 2026.1.8

「30年前、あの夜のテレビに何を感じていた?」

1996年2月。土曜の夜、テレビの前でこのドラマを観ていた人は、きっと少なくないはずだ。週末のざわめきの中、画面から流れてきたのは、どこか危うく、それでいて高揚感のあるメロディだった。

90年代半ば、日本の空気は静かに変わり始めていた。派手さよりも刺激、安心よりもスリル。そんな感覚と呼応するように、この曲は夜の時間帯に強く刻まれていった。

近藤真彦『ミッドナイト・シャッフル』(作詞:沢ちひろ・作曲:ジョー・リノイエ)――1996年2月21日発売

夜を駆け抜けた40枚目のシングル

『ミッドナイト・シャッフル』は、近藤真彦にとって40枚目のシングルにあたる。1980年代からトップを走り続けてきた彼にとって、90年代半ばは、キャリアの中でも特別なフェーズだった。

この楽曲は、日本テレビ系ドラマ『銀狼怪奇ファイル〜二つの頭脳を持つ少年〜』の主題歌として制作され、堂本光一が主演を務めたことでも大きな話題を呼んだ。

ドラマの持つスリリングでミステリアスな世界観と、この曲の持つスピード感は、放送開始と同時に強く結びついていく。主題歌として流れるたびに、物語の緊張感が一段階引き上げられるような感覚があった。

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近藤真彦-2022年撮影(C)SANKEI

走り続けることで生まれた“熱”

この曲の最大の特徴は、イントロから終盤まで一貫して保たれる疾走感にある。テンポは速いが、荒々しさに振り切らず、洗練されたラインを維持している点が印象的だ。

武富士のCMソング『SYNCHRONIZED LOVE』などで知られるジョー・リノイエによるメロディは、90年代的なクールさを帯びながらも、どこか身体的な熱を感じさせる構造になっている。イントロから駆け抜けていく鈴川真樹のギターは、この曲において欠かせないスパイスとなっている。

近藤真彦のボーカルも、この楽曲では力を抜かない。若さを誇示するのではなく、経験を重ねた声だからこそ出せる張りと余裕が、楽曲全体に説得力を与えている。

派手なシャウトや過剰な感情表現に頼らず、一定のスピードで夜を駆け抜けていく。その姿勢が、当時のリスナーに「まだ走れる」という印象を強く残した。

70万枚超が示した“復活”という事実

このシングルは、結果として70万枚を超えるセールスを記録し、近藤真彦にとって久々の大ヒット作となった。

重要なのは、単なる懐かしさや過去の人気に支えられた数字ではなかったという点だ。ドラマとの相乗効果、楽曲の完成度、そして90年代半ばという時代性が、自然に重なり合った結果だった。

このヒットを受け、同年末には『第47回NHK紅白歌合戦』への出場も果たす。これは『第39回NHK紅白歌合戦』以来、実に8年ぶりのカムバックだった。

再び大きな舞台に立つに足る理由が、この1曲には確かにあったと言える。

夜の記憶として残る一曲

『ミッドナイト・シャッフル』は、近藤真彦のキャリアにおいて「再浮上」を象徴する楽曲として語られることが多い。だが、それ以上に、この曲は90年代の夜そのものを封じ込めた存在でもある。

少し危険で、少し大人びていて、それでも前に進もうとするエネルギー。夜のテレビ、静まり返った街、心拍数を上げる音楽。そのすべてが重なった瞬間を思い出させるからこそ、この曲は今も、聴く人の記憶を鮮明に呼び起こす。

30年経った今でも、このイントロが流れれば、あの夜の空気は確かに戻ってくるのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。