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30年前、静かに胸を締めつけた“別れの予感” クォーターミリオンを超えて届いた“止まらない余韻”

  • 2026.1.7

1996年2月。街はまだ冷えているのに、夜の空気だけが少し緩み始めていた。強い言葉や過激な音が溢れていた1996年のロックシーンで、感情を過剰に煽らず、それでも確かに胸に残る曲が静かに広がっていく。

黒夢というバンドが持っていた、危うさと誠実さ。その両方が、ひとつの形になったシングルがこの時期に届けられた。

黒夢『SEE YOU』(作詞:清春・作曲:人時)――1996年2月21日発売

黒夢が鳴らしていた「静」と「熱」のあいだ

黒夢は当時、激しさや攻撃性で語られることの多い存在だった。だがその一方で、彼らは常に「引くこと」「余白を残すこと」にも意識的なバンドだった。

『SEE YOU』は、そのバランス感覚が最も端的に表れたシングルのひとつだ。6枚目のシングルというキャリアの中盤でありながら、次のフェーズを予感させる佇まいを持っている。

この曲が特別視される理由のひとつが、シングル表題曲の作曲をベースの人時が手がけている点にある。その事実自体が、この楽曲に込められた意思の強さを物語っている。

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1997年、新宿アルタ前で行われた黒夢ライブ(C)SANKEI

静かに始まり、確かに高まる構造

『SEE YOU』は、最初から感情を解放する曲ではない。序盤は、重心の低いメロディと抑えたリズムが続き、感情は内側に溜め込まれていく。音数は多くないが、隙間が空いているわけでもない。張りつめた状態が、淡々と維持されている。

だが、この曲は決して平坦ではない。サビに入った瞬間、メロディは大きく開き、感情が一段階、外へと踏み出す。溜め込まれていたものが、ようやく言葉と音になって現れる。その盛り上がりは確かで、だからこそ印象に残る。

清春のボーカルも同様だ。Aメロでは感情を抱え込むように歌い、サビでその輪郭をはっきりさせる。「ここで伝える」という瞬間を、きちんと用意している歌唱だ。

数字が示した“静かな支持”

『SEE YOU』は、結果として25万枚を超えるセールスを記録した。クォーターミリオンという数字は、ロックバンドの楽曲として見ても決して軽くない。

しかもこのヒットは、一瞬の話題性によるものではなく、時間をかけて支持が積み重なった結果だった。

刺激的な音や分かりやすいメッセージが求められる時代にあって、この曲は感情の揺れを丁寧に追いかけた。だからこそ、特定の層だけでなく、それぞれの「別れ」や「終わり」を抱えた聴き手に長く届き続けたのだろう。

終わらせないまま、去っていくということ

『SEE YOU』という言葉は、はっきりとした別れでも、再会の約束でもない。その曖昧さが、この曲の余韻を決定づけている。

何かが終わったわけではない。でも、同じ場所には戻れない。その感覚を、黒夢は過剰な説明なしに音で残した。

30年が経った今も、この曲は色褪せない。強く主張しないからこそ、聴くたびに違う感情が浮かび上がる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。