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35年前、バラドルが紅白まで駆け上った“25万ヒット” ロングセラーとなった“遅咲きの名曲”

  • 2026.1.4

1991年の日本。平成3年となったが、新しい元号にまだ少し戸惑いながらも、確実に次のフェーズへ進み始めていた。街にはCDショップが増え、テレビからは次々と新曲が流れ、音楽は“大量に消費されるもの”へと変わりつつあった頃だ。そんな喧騒のなかで、静かに、しかし確実に人の心へ染み込んでいった一曲があった。

森口博子『ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜』(作詞:西脇唯・作曲:西脇唯、緒里原洋子)――1991年2月5日発売

派手なデビュー曲でも、即座にランキングを駆け上がるタイプの楽曲でもない。それでもこの曲は、時間をかけて“風のように”広がり、多くの人の記憶に残る存在となっていく。

映画とともに吹いた、決定的な追い風

森口博子にとって本作は9枚目のシングル。すでにバラエティ番組などで親しまれていた存在ではあったが、アーティストとしての評価を決定づけたのが、この曲だった。

『ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜』は、映画『機動戦士ガンダムF91』のテーマ曲として書き下ろされた楽曲である。

ガンダムシリーズは当時すでに巨大なコンテンツだったが、本作はテレビシリーズとは異なる“劇場版ならではのスケール感”と“少し大人びた余韻”をまとっていた。その世界観に寄り添う形で、この楽曲もまた、戦いやスピードではなく、未来を見つめる静かな視線を音にしている。

公開当初から爆発的なヒットを記録したわけではない。しかし映画を観た人の記憶とともに、この曲は何度も再生され、少しずつ存在感を増していった。

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1991年、「第28回ゴールデン・アロー賞」新人賞を受賞した森口博子(C)SANKEI

緊張感とスケール。強く残った旋律

この曲の魅力は、静かさではなく、一貫して保たれる緊張感とスケール感にある。

Aメロ、Bメロでは感情を抑えた語り口で進みながら、サビに入った瞬間、旋律は大きく開き、視界が一気に遠くへ引き伸ばされる。その構造が、映画『機動戦士ガンダムF91』が描いた“未来への視線”と強く呼応している。

門倉聡による編曲は、劇場作品にふさわしい奥行きと広がりを確保している。装飾を削ぎ落とすのではなく、歌が正面に立つための空間を、確かな厚みで支える設計だ。

森口博子の歌声は、芯の太い発声でテンションを落とすことなく、楽曲の最後までまっすぐに押し切る。その安定感と持続力が、楽曲に揺るぎない軸を与えている。

だからこそ『ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜』は、聴く人に解釈を委ねる内省的な楽曲ではなく、遠くの未来へ視線を向けさせる、前進のための主題歌として機能し続けてきたのだ。

じわじわと積み重なった、25万枚という数字

セールス面でも、この曲は非常に象徴的な歩みをたどっている。

発売直後に一気に火がついたわけではなく、ランキングでも徐々に順位を上げながらロングセールスを記録。最終的にはクォーターミリオン、25万枚を超えるセールスを達成した。

口コミや再評価、映画との相乗効果によって積み重なった数字だからこそ、この実績には確かな説得力がある。さらに同年末、『第42回NHK紅白歌合戦』に森口博子は本曲で初出場を果たす。ここで改めて全国的な認知を獲得し、この楽曲が“その年を代表する一曲のひとつ”として定着したことは間違いない。

時代を越えて、今も吹き続ける風

『ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜』は、派手な時代の象徴ではない。むしろ、変化の狭間で揺れていた1991年という時代に、静かに差し込んだ光のような存在だった。

強く主張しないからこそ、長く残る。

その在り方は、今の時代に聴いてもなお新鮮で、どこか安心感を与えてくれる。

あの頃、映画館で、テレビの前で、あるいは何気ない日常の中でこの曲に出会った人たちは、きっと今も心のどこかで、この“永遠の風”を感じ続けているのではないだろうか。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。