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25年前、自然体で放った“声と言葉”の引力 飾らない言葉で届いた“確信のナンバー”

  • 2026.1.3

2001年2月、CDショップの店頭には多様な音楽が並び、派手なタイアップ曲や強いフックを持つ楽曲が目立つ時代。その中で、声とメロディだけがまっすぐ前に出てくるような1曲が、静かに存在感を放っていた。

平井堅『Miracles』(作詞・作曲:平井堅)――2001年2月15日発売

大きな仕掛けも、過剰な演出もない。それでも、聴いた瞬間に「これは信じられる」と思わせる何かがあった。『Miracles』は、そんな不思議な説得力を持った楽曲だった。

まっすぐに書かれた、平井堅という輪郭

『Miracles』は、平井堅にとって12枚目のシングル。2000年前後の平井堅は、バラードの評価を確実に積み重ねながらも、R&B的な歌唱、ソウルの影響、そしてJ-POPとしての親しみやすさ。そのどれか一つに収まることなく、“平井堅らしさ”が少しずつ形を持ちはじめていたタイミングで届けられたのが、この『Miracles』だった。

技巧的な誇示やジャンル的な主張はほとんどない。むしろ、余計なものを削ぎ落とし、「歌」と「言葉」の関係性だけを丁寧に並べていく。その姿勢自体が、当時の平井堅の立ち位置をよく表している。

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2003年、東京・西麻布でミニライブを開催した平井堅(C)SANKEI

派手ではないのに、確信だけが残る音

『Miracles』のサウンドは、穏やかで軽やかだ。リズムは前に出すぎず、アレンジも過度な色付けをしない。MAESTRO-Tによる編曲は、楽曲を装飾するというより、ボーカルが自然に呼吸できる空間を整えることに徹している。

平井堅の歌声も、この曲では過剰に感情を盛り上げない。力強さはあるが、押しつけがましくはない。高揚感がありながら、どこか落ち着いている。そのバランスが、聴き手に安心感を与える。

だからこの曲は、「すごい曲だ」と思わせる前に、「いい曲だな」と自然に感じさせる。無理に心を動かそうとしないからこそ、気づいたときには深く残っている。そんなタイプの楽曲だ。

シングルという形で示した、方向性の確認

それまでの楽曲で培ってきた表現力や歌唱力を、「自然体のポップス」という形でまとめあげた一曲。派手な挑戦ではなく、自分の現在地を確かめるような作品だったとも言える。

この後、平井堅はさらに多くの人に届く楽曲を生み出していくが、その土台には、「声と言葉を信じる」という姿勢が一貫して存在している。その姿勢が、すでにこの『Miracles』の中に、はっきりと刻まれている。

さりげなく、でも確かに残る余韻

25年が経った今、『Miracles』を聴き返すと、その控えめさがむしろ新鮮に響く。時代に寄り添いすぎず、流行を追いかけすぎなかったからこそ、色褪せにくい。

大きな感動を煽るわけでも、劇的な展開があるわけでもない。けれど、聴き終わったあとに残るのは、前向きな静けさと、確かな手応えだ。

『Miracles』は、奇跡を大声で語らない。ただ、「信じていい」と、静かに差し出してくる。その距離感こそが、この曲が25年後も心地よく響く理由なのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。