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「凶器が入っているかも」5分おきに確認し外出できない…強迫性障害が蝕んだ家族の日常

  • 2025.12.7

日常のふとしたことから、強い不安に心が囚われてしまう人たちがいます。
『強迫性障害』。当事者と家族の声から、回復の道を探ります。

強迫性障害という心の病

鍵をかけ、何度確認しても不安が消えない。

洗っても、洗っても手の汚れが落ちたと思えない。

不安を打ち消そうと繰り返すほど自分を追い詰めてしまう―。
『強迫性障害』と呼ばれる、心の病があります。

強迫性障害の息子を持つ母親が話してくれました。

Sitakke

「もう誰も治せない。自分を治すことはできないし、一生このままで苦しんでいくなら毎晩殺してくれと毎晩言われました」

就職を控えた春、大学生の息子に異変が現れます。
抑えがたい不安に、息子の心が覆われていったのです。

「外出する前に荷物やポケットに凶器が入っていないかをどうかを確認するんです、全部。すべて確認してからでないと、外に出られない」

Sitakke

「立ち上がったら外へ出ていって、誰かを加害してしまうかもしれないって言うので…息子は、部屋に座ったまま動けない状態で、窓のそばとか玄関には、絶対に近寄ろうとしなくなりました」

自分はちゃんと部屋に留まっているのか。

5分おきに確認しなければ、不安を拭えなくなりました。それだけではありません。

「自分から目を離さないで…」

Sitakke

「スマホやペン、パソコンを自分の視界に入れる場所にはおかないでくれ…と。例えば脅迫文とか、人に危害を加えるような事件を思わせる書き込みをしてしまうかもしれないという恐怖が、息子の中で、どんどん湧いてきたみたいで…絶対にしないんですけれど」

自分はネット上に、危険な書き込みをしてしまうかもしれない…。

そんな不安も抱えるようになっていきました。

以前は、明るく元気だったわが子。女性のノートには当時、息子から投げかけられた言葉が綴られていました。

「一緒にいるときに自分から目を離さないでくれ…」

息子は外出を恐れ部屋に閉じこもり、結局、就職も諦めざるを得なくなりました。

「自分で何回確認しても納得できないので、私に凶器が入ってるか確認してって…『ちゃんと中まで見て!』って言われて。一日中、振り回されている感じですよね」

息子と病院を訪ね歩き2年

Sitakke

そして、不安に心を縛られた息子の行動は、次第にエスカレートしていき、家族を巻き込んでいきました。

「強迫性障害の診断を受ける前だったので、家族も対応が理解できていない段階だった。言うことを聞かないと、本人がパニックになって大声を出したりするので、それが恐怖だし、かわいそうだし…息子が寝ているとき以外は、こっちも張り詰めているような感じでした」

どうして息子は、こんなにも不安にとらわれるようになったのか。

女性は、いくつもの医療機関を息子を連れて訪ね歩きました。
そして2年が経ったのち、ようやく『強迫性障害』と診断されたのです。

意味がないとわかっていても

Sitakke

札幌にあるカウンセリング施設「こころsofa」。太田滋春さんは強迫性障害を専門とする、臨床心理士です。

「強迫症については、あまり理解が得られないので、説得とか説教をされてしまう。本人はそう言われても、頭では分かっていても、自分だって意味がないとか分かっているけれど止められない…と苦しんでいる人が結構います」

ひと月に60人もの当事者が、太田さんのカウンセリング施設を訪れます。
患者の割合は人口の2%から4%。発症の多くは20歳前後です。

日常生活の、ふとした行為をきっかけに、押さえようのない不安が生じ、何度も確認を繰り返してしまう。

◇4や9、13といった数字を不吉だと恐れる【縁起恐怖】
◇必ず左右対称や、いつもの配置でなければ落ち着かない【不完全恐怖】
◇汚れが取れない気がして体を洗い続ける【不潔恐怖・汚染恐怖】
◇外出先で誰かを傷つけたのではないか【加害恐怖】
◇いつもの手順で進めないと悪い事態が起きると思い込む【儀式】

その衝動を引き起こす引き金は、実に様々です。

実は、取材を進めるHBC・熊谷七海記者にも10代のころ、思い当たる記憶がありました。

「私の指が、スイッチに当たった位置によって、自分のいつものルーティンの位置から外れてしまったら『火事になるんじゃないか』…そうした不安が自分の中であって」

「過去には、そこに触れられないと何回もスイッチを付けたり、消したりを繰り返してしまうことがあって…そうした不安と、どうやって向き合っていけばいいんでしょうか」

そんな記者に太田さんは「今話した言葉にヒントがあった」といいます。

次回の記事では、その「ヒント」と強迫性障害当事者だった元看護師の女性の心が落ち着いていったきっかけについてお伝えします。

取材協力:北海道OCDの会

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年11月17日)の情報に基づきます。

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