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強迫性障害が治るヒントは「向き合う」ことではなくて…当事者の心に訪れた変化とは

  • 2025.12.7

「ちょっとルーズになってみませんか?」

日常のふとしたことから、強い不安に心が囚われてしまう人たちがいます。
『強迫性障害』。

札幌にあるカウンセリング施設「こころsofa」の太田滋春さんは強迫性障害を専門とする、臨床心理士です。

前回、取材を進めるHBC・熊谷七海記者が「強迫性障害の『不安』とどう向き合ったらいいですか」と聞きました。
その「ヒント」を太田さんはこう話します。

「向き合わない方が多分いいんですよ。ちょっと話半分で、ちょっとルーズになってみませんか?という感じ」

たとえ不安が生じても、無視するように受け流す。
そして、何も起こらない体験を重ねていく。

それが強迫性障害を治療する手立ての一つ『暴露反応妨害法』です。

取材を担当した熊谷記者の場合、『強迫性障害』を伝える報道を目にしたことで、不安との向き合い方に気づき、解消されていきました。

Sitakke

「この病を知ってもらいたい…」

太田さんは『パンダ先生』と名乗り情報を発信しています。
YouTube配信という形で、心を縛られ、自分を追い詰めてしまう脅迫症の人たちへメッセージを届けるためです。

「強迫性障害は、確実に治る病気です。良くなった場合は、再発もかなり少ないといわれています。ぜひ希望に向かって一緒に足を進めていきたいと思います」

元看護師が描いた体験記

Sitakke

鹿児島県に暮らす、元看護師の『つくしゆか』さん。
16年にわたり、強迫性障害と向き合ってきました。

そして、つくしさんは、自身が体験した強迫性障害を漫画で描き、3年前に『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』(燦燦舎)を出版。

今年10月には、2冊目となる『強迫性障害とともに生きてみた。不安が軽くなる30のヒント』(ラグーナ出版)も出しました。

Sitakke
つくしゆかさんが描いた漫画の一部

・「(4という数字を見た)きょう、帰りに事故に遭うかもしれない…」
・「窓!エアコン!コンロ!」

つくしゆかさんが当時の気持ちを教えてくれました。

「手のひらにばい菌が残っていたら、次の患者にうつすんじゃないかと怖くなって…もう何回も20分くらい手洗いをしてしまったりとか」

「職場の上司に自分はこういう病気だってことを打ち明けるんですけど、それは治そうとする努力が足りないからだとか…ちょっと心ないことを言われたことがあって…」

Sitakke
つくしゆかさんが描いた漫画の一部

職場では、薬の瓶を何度も確認。そして帰宅すると、戸締りの確認を繰り返しました。その行動は周囲に理解されず、つくしさんは孤立していったのです。

どうしようもないことは起きてしまう

Sitakke
漫画家 つくし ゆかさん

治療を受けるなか、父親が病に倒れたことで、つくしさんの心境に変化が現れました。

「私は、なるべく慎重に生きていたのに、『父の死』というこんなにどうしようもないことって起こってしまうんだな…と気づいて。それだったら今を中心に、生きていったほうがいいかなと考えが変わって」

不安に囚われても、できることは限られている。

そう気づいたことで、少しずつ心が落ち着いていったのです。

「絶対にこの病気は治る病気だから、自分のペースで治療をしていけば、必ず長いトンネルから出られるよと言いたいです」

『安心』を求めるあまり自らを追い詰めてしまう心の病。それが強迫性障害です。

強迫性障害の息子を持つ母親が重い口調で話します。

「息子とは今、強迫性障害については、ほとんど話さないです。客観的に苦しんでいる姿を見ていたので、その姿が家族の記憶にも焼き付いているんです」

Sitakke

「何かのきっかけで、また戻ってしまったら、どうしようと当事者も家族も、そうした不安を抱えている。強迫性障害という心の病があって、本人はその行動を好きでやっているじゃなくて、すごく苦しみながらやっていることを理解してほしいです」

回復への道は、この病を恐れず、理解することから始まります。

心配性との違い

Sitakke

外出先で、カギや火の元が心配になることはありますが、俗にいう心配性などと片づけられない、明確な違いがあるのでしょうか。

例えば、鍵を掛けた後も、何度も開けたり閉めしたり、汚れを落とそうと、洗うことを止められなかったり―。

そうした確認行動から抜け出せず、不安を解消できない状態が何時間も続くと【強迫性障害】と診断されるとのことです。

ただ、専門的な医療機関が、まだ十分ではない…との現状もあります。

当事者と家族が混乱から抜け出すために

まだまだ理解が広まっていないなか、当事者や家族は、診断されるまでは、混乱に置かれることになります。
取材した女性の息子さんは、症状も落ち着き、現在は仕事にも就いているとのことです。

また、自身の体験から当事者や、その家族を結ぶ『北海道OCDの会』という集まりで活動を続けています。
『OCD』とは強迫性障害を意味します。

『北海道OCDの会』のホームページには、匿名で相談できるチャットなども設けられているとのことです。

個人個人で症状の程度はもちろん違います。
しかし、自身の闘病記を漫画に描いた元看護師のつくしゆかさんの言葉にもあった通り、それぞれ当事者によってペースは違っても、必ず治る心の病だということに、少し明るい希望が持てるのではないでしょうか。

強迫性障害については、今後も取材を続けて、またお伝えしたいと思います。

取材協力:北海道OCDの会

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年11月17日)の情報に基づきます。

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