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「二度と作れない」“規格外の挑戦”が生んだ名映画…出演女優の体当たり演技に「覚悟がすごい…」

  • 2025.12.28

映画の中には、観終わった後もしばらく席を立てなくなるほど、心に深い爪痕を残す作品があります。今回は、そんな中から"絶賛の声が相次ぐ名作"を5本セレクトしました。本記事ではその第3弾として、映画『Page30』(DCT entertainment)をご紹介します。結末の決まっていない台本と、逃げ場のない密室。4人の女優が自らの役者人生を賭けて挑んだ、虚実入り混じる演技バトルの全貌とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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映画の公開記念舞台あいさつに出席した唐田えりか(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『Page30』(DCT entertainment)
  • 上映日:2025年4月11日
  • 出演:唐田えりか(平野琴李 役)

スタジオに集められた4人の女優たちは、ラストの決まっていない30ページの台本を手に、3日間の稽古期間を経て、4日目に舞台公演を行うよう告げられます。配役が決まらないまま、スマホや時計を預けて、外の世界とのつながりを断たれた4人。戸惑いを抱えながらも、それぞれが望む役を手に入れるために、稽古に没頭します。

二流の役者、売れない役者、大根役者、そして言われるがまま演じることに疑問を抱き始めた役者……。稽古が進むにつれ、彼女たちが抱える後戻りできない事情が少しずつ明らかになり、人間の本質が露わになっていきます。

演出家も監督もいない、いわば“演技の無法地帯”で繰り広げられるのは、4人がそれぞれの人生を懸けてぶつかり合う演技バトル。そして、迎えた4日目。仮面をつけた観客たちが見守る中、彼女たちは女優として、舞台を成功させることができるのでしょうか――。

「堤幸彦×中村正人」異色のタッグが仕掛けた"規格外"の挑戦

本作は、映画という枠を超えた“イベント”であり、これまでの常識を覆す“プロジェクト”とも呼べる作品です。

企画の発端は、DREAMS COME TRUE中村正人さんが映画『イニシエーション・ラブ』『十二人の死にたい子どもたち』『私にふさわしいホテル』などで知られる堤幸彦監督にオファーを持ちかけたことでした。中村さんはあえて一般的な製作委員会方式を採らず、自ら資金を集める道を選択。それは、資金面でのしがらみをなくすことで、堤監督が秘めるシニカルな“牙”を解き放つためでした。

この熱意に堤監督も呼応。企画の立ち上げから脚本執筆、撮影まで、異例のスピードで制作が進行しました。さらに「お金には代えられない体験を届けたい」という想いから、渋谷の一等地に本作のためだけの専用テントシアター“渋谷 ドリカム シアター”を建設。映画鑑賞を一度きりの“体験”へと昇華させたこの試みは、常識を覆す“前代未聞のプロジェクト”として大きな注目を集めました。

音楽もまた、本作における重要な“キャスト”。劇中のピアノ演奏を担当したのは、中村正人さんが「5人目の女優」と絶賛する世界的ジャズピアニスト、上原ひろみさんです。上原さんは編集前の映像を徹底的に見返し、本番ではスクリーン上の演技に合わせて全編即興の“一発録り”を敢行。役者の呼吸や間、そのすべてに呼応するような渾身の演奏は、観客を作品の世界へと一気に引き込みました。

さらに、その芸術性は海を越え、第27回上海国際映画祭“SIFFラプソディー”部門への正式出品という快挙を達成。映画、音楽、演劇のトップランナーたちが集結し、商業的なリスクをも恐れずに、クリエイティブファーストで作り上げた、まさに奇跡のコラボレーションです。

「迫力に呑まれた」女優4人の体当たり演技に絶賛の声

本作の最大の見どころは、演じている女優本人の“実体験”や“経歴”を、そのまま役柄の設定として取り込んでいる点です。

例えば、元ロックバンドのボーカルで演技経験の少ないMAAKIIIさんは、劇中でも“沖縄出身のミュージシャン”という等身大の役を演じています。また、実生活で自主映画のプロデューサーとしても活動する広山詞葉さんには、プロデューサーとしての苦悩を語るセリフが与えられました。

さらに、撮影直前、堤監督は“コロナ禍で仕事ができなかった時の苦悩”など、役者のトラウマをえぐるセリフを急遽追加したといいます。

このように、フィクションの中に“現実の自分”を突きつけられ、逃げ場のない状況に追い込まれた女優たち。彼女たちが演技の枠を超えてむき出しの感情をぶつけ合う様子は、まるでドキュメンタリーを見ているかのような緊迫感に満ちています。

とりわけ大きな注目を集めたのが、主演・唐田えりかさんの熱演です。彼女が演じたのは、才能がありながら二流扱いされる苦悩の女優・平野琴李。この難役に挑むべく、唐田さんは自宅で母親を相手に膨大なセリフを読み込むなど、猛練習を重ねて撮影に臨んだといいます。

予告編で話題をさらった絶叫シーンは、実は台本にはない完全なアドリブでした。共演者のミスで芝居をやり直さなければならなくなった瞬間、役に深く入り込んだ唐田さんの感情が爆発したのだとか――。

かつてのイメージを覆す鬼気迫る姿には、「凄味を感じた」「迫真の芝居に圧倒された」「覚悟がすごい…」といった称賛の声が上がりました。

実験的な構成や、女優を極限まで追い込む演出手法に対しては、「独特すぎる」「情報量が多くて難しい」といった戸惑いの声も聞かれましたが、その一方で、「火花散る芝居合戦」「役者魂を感じた」「迫力に呑まれた」「観るべき傑作」「こんな映画二度と作れない」と、その熱量を絶賛する声が相次いでいます。

映画『Page30』は、大胆なビジョンと俳優たちの覚悟が結実した、稀有な作品です。

女優たちの実体験や葛藤が色濃く投影されたキャラクターたちは、演技を超えた“本物の感情”をスクリーンに焼き付けています。リスクを恐れず、生のリアリティに賭けた本作は、まさに“絶賛の声が相次ぐ名作”と呼ぶにふさわしい一作です。


※記事は執筆時点の情報です