1. トップ
  2. 「冒頭1分だけ?」 主人公が“わずか数分”のみの出演回に騒然…「毎朝の楽しみだった」ロス相次いだNHKドラマ

「冒頭1分だけ?」 主人公が“わずか数分”のみの出演回に騒然…「毎朝の楽しみだった」ロス相次いだNHKドラマ

  • 2025.12.22

ドラマや映画の中には、放送が終わっても長く愛され続ける作品があります。今回は、そんな中から"絶賛の声が相次ぐ名作"を5本セレクトしました。

本記事ではその第1弾として、連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)をご紹介します。植物を愛し抜いた主人公と、その妻の波乱万丈な人生。「主人公がほとんど出ない」という異例の回が話題を呼んだ、その理由とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

undefined
第67回ブルーリボン賞授賞式 神木隆之介(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)
  • 放送期間:2023年4月3日~9月29日
  • 出演:神木隆之介(槙野万太郎 役)

明治の世、高知の裕福な造り酒屋「峰屋」の跡取りとして生まれた槙野万太郎(神木隆之介)。しかし彼は、家業よりも植物への情熱を抑えきれず、姉の綾(佐久間由衣)に店を託して上京します。目指すは、日本の植物を網羅した図鑑を作ること。

東京で菓子屋の娘・寿恵子(浜辺美波)と運命的な出会いを果たし、夫婦となった二人。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。東京大学植物学教室からの追放、貧乏生活、愛娘の死、そして関東大震災…。次々と襲いかかる試練にも負けず、二人は手を取り合い、誰も見たことのない“植物学”という荒野を切り拓いていくのでした――。

「捨てキャラがいない」と大絶賛――偉人伝を超えた人間ドラマ

『らんまん』は、「日本の植物学の父」と称される牧野富太郎をモデルにしたオリジナルストーリーです。脚本を手がけたのは、登場人物一人ひとりを丁寧に描く群像劇に定評がある長田育恵さん。単なる偉人の成功物語ではなく、夫婦が人生という荒波を乗り越えていく「冒険」として描き、多くの視聴者を惹きつけました。

天真爛漫さと研究への情熱をあわせ持つ万太郎を演じたのは神木隆之介さんです。そして、そんな夫を支える妻・寿恵子を演じたのは浜辺美波さん。浜辺さんは従来の「耐える妻」ではなく、共に戦い、道を切り拓く「パートナー」としてのヒロインを演じました。

万太郎の研究はお金にならず、家計は常に火の車。しかし、寿恵子はただ嘆くのではなく、万太郎が植物に注ぐ情熱と、その先にある可能性を理解し、自分の人生として引き受ける選択をします。

借金取りに追われ、住む場所さえ危うくなる中でも、機転と行動力で道を切り開いていく寿恵子の姿は「最強のヒロイン」とSNSでも話題になりました。

安定よりも覚悟を選び、夫と共に歩むことを決めた寿恵子。万太郎の夢は、いつしか彼女自身の夢へと変わっていきます。そんな寿恵子を演じた浜辺美波さんは、その熱演が高く評価され、32橋田賞新人賞を受賞しました。

また、本作は「捨てキャラがいない」と言われるほど、脇役たちの人生も濃厚に描かれています。万太郎の生家を守る姉・綾と、万太郎の最高のパートナーであり、後に綾と結ばれる竹雄(志尊淳)。東大で万太郎と対立しながらも植物愛で共鳴する田邊教授(要潤)など、それぞれの葛藤と成長が涙を誘いました。

加えて、語りをつとめた宮﨑あおいさんの柔らかな声と、あいみょんさんが歌う主題歌「愛の花」が物語に深みを添えています。

主人公不在の異例回

『らんまん』を語る上で欠かせないのが、視聴者を驚かせた第103回です。なんとこの回では、主人公・万太郎が回想シーンを除いてほとんど登場しないという、連続テレビ小説としては極めて異例の構成でした。

描かれたのは、家計の危機に瀕した寿恵子の奮闘。万太郎の研究を続けるため、寿恵子は叔母のみえ(宮澤エマ)を頼り、料亭「巳佐登」で仲居として働くことを決意します。放送直後、SNSでは「主人公が冒頭1分だけ?」と驚きの声が。

しかし、この演出にはある意図がありました。

万太郎の研究は、彼一人の力では決して成り立たない――。この回は、妻である寿恵子という存在がいかに万太郎の夢を支え、現実の生活を支える大切な存在だったかを伝えています。従来の「偉人伝(夫を陰で支える妻)」という構図を覆し、寿恵子を「対等のパートナー」として描き切った脚本と演出に、「最高の相棒」「二人の深い愛を感じた」「朝から幸せすぎる」と称賛の声が相次ぎました。

そして迎えた最終回。万太郎は長年の夢だった図鑑を完成させます。最後のページを飾ったのは、妻・寿恵子への感謝を込めて名付けた新種「スエコザサ」。縁側で図鑑を手に語り合うふたりは、互いの人生を慈しむように微笑み合います。「寿恵ちゃん、わしを信じてくれて、ありがとう」――その言葉とともに描かれた夫婦の最期は、多くの視聴者に感動を届けました。

「終わらないで…」――SNSに溢れた“らんまんロス”の声

「毎朝の楽しみだった」「終わってほしくない」――。最終回に向け、SNSでは“らんまんロス”を嘆く声があふれました。

『らんまん』がこれほどまでに愛され、「名作」と呼ばれる理由は、牧野富太郎という偉人の功績をなぞるだけでなく、その影にある苦悩や、彼を支えた人々の人間ドラマを誠実に描いた点にあります。とくに、主人公の不在回で見せたような、主人公を「支える側」へのリスペクトは、現代を生きる多くの視聴者の心を動かしました。

好きなものに情熱を注ぐ尊さと、それを支え抜く愛――。「雑草」のように踏まれても立ち上がる人々の姿を描いた本作は、視聴者の心にいつまでも咲き続ける、まさに“絶賛の声が相次ぐ名作”と呼ぶにふさわしい一作です。


※記事は執筆時点の情報です