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「超えるドラマはない」放送終了から41年、日本中を虜にした『NHKの伝説作』

  • 2025.12.30

美しい言葉や理想だけでは割り切れない、人の心の奥底に渦巻く嫉妬、欲望、そして孤独。人間の清濁併せ呑むような本質や、一筋縄ではいかない複雑な関係性を生々しく描き出し、観る者に深い問いを投げかける作品の数々。今回は、そんな“綺麗事では終わらない人間模様を描いた作品”5選をセレクトしました。

本記事では第3弾として、1983年放送のドラマ『おしん』(NHK)をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

“綺麗事では終わらない人間模様を描いた作品”ドラマ『おしん』

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田中裕子(1982年頃撮影)(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):連続テレビ小説『おしん』(NHK)
  • 放送期間:1983年4月4日~1984年3月31日

あらすじ

明治34年。山形の寒村に生まれた谷村しん(小林綾子)は、貧しい家計を助けるため、わずか7歳で奉公に出されます。その後、成長したしん(田中裕子)は髪結いとしての修業に励み、結婚を経験しますが、戦争やスーパーマーケット経営など、時代の激しい変化の中で幾多の辛酸をなめることになります。

明治から現代に至る80年余りの物語の中で、晩年のしん(故・乙羽信子)に至るまで、彼女は女性としての生き方や家族の絆を模索し、必死に激動の時代を生き抜いていく―。

ドラマ『おしん』の見どころ ※ネタバレあり

NHK連続テレビ小説『おしん』は、1人の女性が激動の時代を耐え抜き、懸命に生きる姿を描いた日本を代表する感動作です。特におしんが嫁ぎ先の佐賀で経験する苦難は筆舌に尽くしがたく、出産直前まで過酷な労働を強いられた末に、独り孤独な小屋で死産を迎えるというあまりに悲劇的なエピソードは、SNSでは「地獄の展開」として今なお多くの視聴者の記憶に深く刻まれています。姑であるお清にいびられ続け、挙句の果てには我が子まで失い、身も心もボロボロになっていくおしんの姿に「ぜんぶお清のせい」と、過酷な境遇への憤りの声が相次ぎました。

その物語に圧倒的な説得力を与え、社会現象を巻き起こした大きな要因が、出演者たちの全身全霊をかけた演技です。特に、極限状態に追い込まれ、絶望の中でもがくおしんを演じた田中裕子さんには、SNSで「鬼気迫るものを感じる」「迫真の演技」「すごい女優さん」とその凄まじい存在感に圧倒される視聴者が続出しました。単なるフィクションの枠を超えて、人間の根源的な強さと悲哀を表現した演技は観る者の魂を揺さぶり、その卓越した演技力の高さを絶賛する声が止みません。

ドラマ『おしん』放送中に起きた県を挙げての異例の抗議騒動

多くの人から愛されるNHK連続テレビ小説の金字塔『おしん』。その歴史のなかで、ドラマの枠を超えて語り継がれているのが、佐賀を舞台にした「佐賀編」を巡る前代未聞の抗議騒動です。物語が進み、姑による凄まじい“おしんいびり”が連日放映されるようになると、佐賀県民の間で「佐賀のイメージダウンになる」という不快感がエスカレート。ついに1983年9月、当時の副知事が「名誉回復」を求める要望書をNHKへ提出するという、行政を巻き込んだ異例の事態へと発展したのです。本作が、いかにお茶の間の感情を揺さぶっていたかを象徴するエピソードとなっています。

「超えるドラマはない」と称されるドラマ『おしん』を観たことがない方、また本記事を読んで興味を持っていただけた方は、“1人の女性の苦難と成長を描いた不朽の名作”をぜひご覧ください!


ライター:天木拓海
映画・アニメ・ドラマなど、エンタメ作品を観ることを趣味としているライター。エンタメ関連のテーマを中心に、作品考察記事/コラム記事などを手掛ける。

※記事は執筆時点の情報です