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11月1日開業の伊豆リトリート 熱川粋光 by 温故知新へ──源泉かけ流しの美人の湯と絶景と冬の花火

  • 2025.11.29

次なるリトリートは懐かしさと新しさが響き合う、熱川温泉へ

伊豆半島の海岸沿いに南北に細長く延びる熱川温泉郷。「昭和の温泉街」の風情を残す。
伊豆半島の海岸沿いに南北に細長く延びる熱川温泉郷。「昭和の温泉街」の風情を残す。

「温故知新」の最新プロパティが気になって、数十年ぶりに伊豆熱川を訪れた。東京駅で踊り子号に乗り込み、観光客で溢れかえる熱海を横目に、2時間20分ほどで伊豆熱川駅に到着した。小さな駅は乗降客も少なく、駅前で白い煙を吐く大きなヤグラだけが眼を引いた。ホテルの迎えのクラシックカーで5分ほど走ると、坂の上の岸壁に建つ「伊豆リトリート 熱川粋光 by 温故知新」に到着した。

伊豆熱川駅に降り立った瞬間から、ノスタルジックな世界へ。
伊豆熱川駅に降り立った瞬間から、ノスタルジックな世界へ。
エントランスロビーは絶好のオーシャンビューポイント。滞在はここからスタート。
エントランスロビーは絶好のオーシャンビューポイント。滞在はここからスタート。

海に向かってずらりと椅子が並べられたロビーで、のどかな景色を目の前に、ウェルカムのスイーツとぐり茶をいただきながらチェックイン。ノスタルジック・ラグジュアリーというホテルのコンセプトが頭をよぎったが、正直なところ、この時はまだ“ラグジュアリー”という言葉がしっくりとこなかった。

伊豆熱川駅前のシンボル。高さ7メートルの木製温泉櫓から立ち上る湯けむりが、温泉街の風情を醸し出す。
伊豆熱川駅前のシンボル。高さ7メートルの木製温泉櫓から立ち上る湯けむりが、温泉街の風情を醸し出す。

そもそも東伊豆・熱川温泉は、昭和期に温泉街として栄えた歴史を持ちながら、現在はむしろ静けさが際立つ。面積当たりの数が日本一を誇る、13本もの温泉櫓が立ち、源泉の温度は温泉卵が15分でゆで上がる約100度、湯量は毎分200リットルという指折りの温泉地にもかかわらず、観光地化されずにいる。ただ、東京から2時間余りとアクセスも抜群で、人気の観光地となるポテンシャルを秘めているのは確かだろう。

すべての客室に加えて、館内の至るところから東伊豆の海景色を一望する。
すべての客室に加えて、館内の至るところから東伊豆の海景色を一望する。

その静かな温泉街に、今年温故知新が新しい宿をオープンした。客室はスイートルーム4室をはじめ、全部で6タイプ・16室。今回宿泊したスタンダードでも約90㎡という贅沢な広さで、ゆったりと寛げるソファースペース、寝そべって海を眺められるビッグサイズのベッド、PC作業も快適に行える長いカウンターが配されていて、使い勝手のよさは申し分ない。

大きな窓から伊豆の東海岸を一望する約90㎡のスタンダードルーム。
大きな窓から伊豆の東海岸を一望する約90㎡のスタンダードルーム。

ヘアケアのアメニティは「uka」、スキンケアはオーガニック&サスティナブルな「Be」。「cado」のスタイリッシュな除菌&加湿器も全室に置かれ、さすが温故知新のセレクションできわめて快適。音楽もこのホテルのテーマのひとつで、客室にはボーズのスピーカーが設置されている。コンセントなどの配線も抜かりなく、ストレスフリーの客室だった。

湯けむりとともに愉しむ、東伊豆の海と空

全16室がすべて源泉露天風呂付きのオーシャンビュー。
全16室がすべて源泉露天風呂付きのオーシャンビュー。

そして何よりの贅沢が心と身体を癒してくれる絶景と、源泉かけ流しの温泉。全室に備えられた展望露天風呂には、たっぷりの湯が満たされ、いい具合に湯気が上がっている。川洞温泉と一本松温泉の2本の自家源泉を持ち、その泉質は、肌のターンオーバーを促すと言われるメタケイ酸を多く含む美人の湯。疲労回復、冷え性改善、神経痛や筋肉痛の緩和などの効能もあり、心身ともに整うことができるのだ。

自家源泉を2本所有し、毎分200リットルの豊富な湯量を堪能できる。
自家源泉を2本所有し、毎分200リットルの豊富な湯量を堪能できる。

大きくゆったりとした湯船に浸かり、遮るもののない海を眺めながらのんびりと湯に身を委ねる。喧噪とは全く無縁。違和感のある人工的な景色はなにひとつない。なんとも幸せな時間だ。

浴室のアメニティは植物由来の成分の「uka」。森林保全の一環として採取されたクロモジなどを原料にしている。
浴室のアメニティは植物由来の成分の「uka」。森林保全の一環として採取されたクロモジなどを原料にしている。

伊豆の風土と旬が味わえる極上の和食

レストラン「汐と杯」では、金目鯛、伊勢海老、黒むつをはじめ、伊豆の食材を活かした和食を用意。
レストラン「汐と杯」では、金目鯛、伊勢海老、黒むつをはじめ、伊豆の食材を活かした和食を用意。

食事は、伊豆近海の地魚、干物、伊豆味噌などを重ねた和食をレストラン「汐と杯」で。海を見渡すカウンター席、テーブル席、ふすまで仕切る半個室の全48席のゆったりした空間だ。半個室で海を眺めながら、一人でのんびりといただく食事も最高だった。

希少ワインや地酒など、和食と響き合うペアリングをソムリエが提案。お酒が苦手な人には、ノンアルコールのペアリングも。
希少ワインや地酒など、和食と響き合うペアリングをソムリエが提案。お酒が苦手な人には、ノンアルコールのペアリングも。
地元静岡の名産を活かした料理長の料理がルームサービスでも楽しめる。
地元静岡の名産を活かした料理長の料理がルームサービスでも楽しめる。

食の素晴らしさはレストランに限らない。客室に用意されたこだわりのブレンド茶に加えて、冷蔵庫には地元ブランドのクラフトビールから、ラムネや瓶牛乳までストックされ、全て無料。さらに、ルームサービスもアルコールを除けばすべてインクルーシブ。ローストビーフやチーズの盛り合わせ、それに温かいご飯にたっぷりのオカカを載せて、静岡産の擦りたてのワサビを添えた「天城わさび丼」、シェフこだわりの「昔なつかしプリン」まで、滞在中は、15時から23時までの間いつでも無料で注文できるのだ。

露天風呂に浸かりながら、ドリンクや軽食が楽しめる「茶出し風呂」をルームサービスとして提供。
露天風呂に浸かりながら、ドリンクや軽食が楽しめる「茶出し風呂」をルームサービスとして提供。

遊び心が冴える洗練のラウンジバー

ロビーではスペシャルティコーヒーのサービスやシャンパンのフリーフローを提供。
ロビーではスペシャルティコーヒーのサービスやシャンパンのフリーフローを提供。

ロビーでは、伊豆半島の海岸沿いに佇む小さな焙煎所「東伊豆珈琲焙煎所」のスペシャルティコーヒーを、ハンドドリップで一杯ずつ淹れてくれる。ディナーの前にはシャンパンのフリーフローも。ここにきて、ラグジュアリーという言葉がしっくりとなじんできた。派手な演出こそないが、体験してこそ実感できる、ゲストがこの地の恵みを堪能できる仕掛けがいたるところにあるのだ。

ラウンジバーでは、昭和・平成の懐かしい音楽をアナログレコードで。
ラウンジバーでは、昭和・平成の懐かしい音楽をアナログレコードで。
月の光が海面に映し出すムーンロード。その神秘的な光景を客室の露天風呂から。
月の光が海面に映し出すムーンロード。その神秘的な光景を客室の露天風呂から。

カップルには月の光が海面に描くムーンロードや、冬のロマンティックな花火など、愛する人と素敵な時間を送れる特別な演出もあるが、個人的にはここで過ごしたひとり時間が素晴らしすぎた。時が止まったようなノスタルジックな雰囲気も、今ではとてもしっくりきている。良泉にのんびり浸かり、おいしいものを心ゆくまで味わい、静かな時間を過ごすという至福。一度味わったら、クセになる。こんな天国のような場所を、隠れ家にひとつ持っておくのもよさそうだ。

伊豆リトリート 熱川粋光by 温故知新

静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本1271-2

Tel./0557-23-2345

料金/1室1泊94,500円~(2食付・2名1室利用)※2025年11月現在

https://suiko.by-onko-chishin.com/

Photos: Courtesy of Onko Chisin Text: Yuka Kumano Editor: Mayumi Numao

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