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「夫婦は言わなくても伝わる」を信じた母。父の葬儀を終えた母からこぼれた『取り返しのつかない後悔』

  • 2025.12.2

「言葉にしなくても通じ合える」──そんな関係に、憧れる人も多いのではないでしょうか。しかし、一見信頼の証のようにも思えるその「沈黙」が、時に深い後悔を生むこともあるようです。今回は筆者の知人のエピソードをご紹介します。

画像: 「夫婦は言わなくても伝わる」を信じた母。父の葬儀を終えた母からこぼれた『取り返しのつかない後悔』

理想に見えた夫婦のかたち

私にとって両親は、理想の夫婦でした。

子どものころから、2人が喧嘩をする姿を見た記憶がありません。
食卓では、父が黙々と食事をして、母がその横で「今日は雨が降りそうね」などと穏やかに話しかけるのが常でした。

私は、2人が多くの言葉を交わさなくても通じ合っているのだとずっと信じていましたし、子ども心に、そんな大人の関係が素敵だと思っていたのです。

母がこぼしたひと言

けれど、父が亡くなった直後、母の口から出たのは意外な言葉でした。
葬儀を終えて帰宅したあと、台所の椅子に座った母は、昔を思い出すようにぽつりと呟きました。

「結局、何も話してこなかったのよね、私たち」

沈黙の中にあった“甘え”

「お父さんの仕事のことも、体のことも、何も聞かなかった。『疲れた?』って聞くだけで満足してたの。もっと話せばよかった。もっと、聞けばよかった」

母は、後悔の念を深く滲ませていました。

「お父さん、無口だったから」と私が言うと、母は「そうね。でも、私もそれに甘えてた。話さなくても通じるなんて、思い上がりだったのかもしれない」と続けました。

思い返せば、父が病気で入院した頃も、母はいつも通り「頑張ってね」としか言っておらず、父も「うん」とだけ答えていました。

その時、お互いにもっと聞きたいことや、伝えたいことがたくさんあったのかもしれないと、私は胸が締め付けられる思いでした。

言葉にする大切さ

「最後くらい、“ありがとう”って言えばよかったなぁ」

そうつぶやいて寂しそうに笑った母の様子が、忘れられません。

それ以来、私は夫との関係を少し変えました。
「今日どうだった?」「ごはんおいしいね」そんな何気ない会話を、以前よりも意識して交わすようにしたのです。

そして、恥ずかしくても、「ありがとう」や「好きだよ」といった大切な気持ちを、きちんと言葉で伝えるようにしています。

母の後悔が、私の“これから”を、少し優しく、そして豊かなものにしてくれた気がします。
言葉にすることの大切さを、改めて教えてもらったのです。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。

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