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古着は本当にサステナブルなのか? ファストファッション化しつつある、セカンドハンド品の消費

  • 2025.11.24
やっとの思いで手に入れた中古のシモーン・ロシャのツーピースを纏い、2026年春夏コペンハーゲン・ファッションウィークに参加した筆者のエミリー・チャン。
Street Style At Copenhagen Fashion Week SS26 - Day 2やっとの思いで手に入れた中古のシモーン・ロシャのツーピースを纏い、2026年春夏コペンハーゲン・ファッションウィークに参加した筆者のエミリー・チャン。

お気に入りのリユースサイトはインスタグラムと同じくらい、かなりの頻度でチェックしている。しかし、目的もなくただ延々と見続けているわけではなく、シモーン・ロシャSIMONE ROCHA)やチョポヴァ ロウェナCHOPOVA LOWENA)、モリー ゴダードMOLLY GODDARD)といった好きなブランドを検索し、前からマークしていたアイテムが値引きされていないかをチェックしているのだ。こうして粘り強くリユースサイトを徘徊すれば、報われることがある。今年の初めには、何カ月も前から目をつけていたシモーン・ロシャのツーピースを定価から約80パーセント引きの値段で、ようやく手に入れることができた。

狙っていたアイテムが中古で安く買えるとうれしい。だが先日、気分がどうも落ち込んでいて、憂さ晴らしにセカンドハンドの服を立て続けに3着も買ってしまった。リユース品とはいえ、これは10代のころにファストファッションにハマっていたのと同じように、服を無駄に買い漁っているだけではないのだろうか? そう疑問に思い始めた。確かに、セカンドハンド品を買うことは新品を買うよりも地球に優しいが、過剰に消費しているのであれば話は別だ。結局そのうち処分してしまうのであれば、新品ではなく中古で買っている意味はもはやない。そしてeBayやVinted、Vestiaire Collectiveなどのオンラインマーケットプレイスでの買い物からも、通常のショッピング体験と似たような高揚感を得られるため、無駄な消費につながり得る。

しかし、どこからが“過剰消費”になるのだろう? 何を基準にセカンドハンド品を買い過ぎていることになるのか? ベルリンに拠点を置くシンクタンク、Hot or Cool Instituteが2022年に行った調査によると、パリ協定で示された「産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を1.5°C未満に抑える」という目標に沿うためには、1年間の新しい服の購入を5着に抑えるする必要があるという。古着に関しては具体的な数は示されていないが、大体の目安にはなる数字だ。

「何かを“セカンドハンド”と呼べるまでに決まった期間はないです。一度人の手に渡ったものを“セカンドハンド”と言うので、商品そのものの寿命の指標にはなりません」とHot or Cool Instituteのマネージング・ディレクターであるルイス・アケンジは以前語ってくれた。「なので、古着を5着のうちにカウントする必要はないと思います。かと言って0.5着でもないですね」

大量に買ってはすぐに手放す、ファストファッションのような消費サイクル

2026年春夏コペンハーゲン・ファッションウィークにて。着ているのはセカンドハンドで購入したチョポヴァ ロウェナのドレス。
2026年春夏コペンハーゲン・ファッションウィークにて。着ているのはセカンドハンドで購入したチョポヴァ ロウェナのドレス。

レシートをすべて見返してみたところ、今年はこれまでに10点のセカンドハンドアイテムを買っていることがわかった。この前の散財を考えると、心配していたほど多くはないが、妥当な消費量だとも言い難い。そして『VOGUE』のオフィスでアンケートを取ったところ、深夜にリユースサイトをチェックする習慣があるのは私だけではないことがわかり、同僚たちのほとんどは、自分たちがいかに多くのものを買っているかに驚いていた。

「大きな買い物はあまりしていないので、『今年はセーブしている』と自分に言い聞かせていました」と、現時点で22着の古着を購入しているファッション・ライターのオリビア・アレンは言う。一方、今年すでに約30点のセカンドハンド品を購入しているUK版『VOGUE』のショッピング・エディターであるジョイ・モンゴメリーは「リユース品であれば、買い物をしているうちに入らない」とついつい都合良く考えてしまうと認めた。「リユース品を優先して買うことのほうが地球にも環境にも優しいと思っています。でも、新品であろうとなかろうと、衝動買いは衝動買いです。後々後悔することは経験上わかっています」と彼女は振り返る。

話を聞いた同僚のほとんどは、あまり新品でものを買わない傾向がある(私もアップサイクルのレザーコートを含めた2着以外は、すべてセカンドハンドを買っている)。しかし残念ながら、私たちのような消費者はどうやら少数派のようだ。今年10月、『Nature』誌に掲載された研究によると、セカンドハンドのファッションを買う人は、新品でも中古でも、ほかの消費者と比べてより多くの服を買う傾向があるという。「こういった消費者は服を手放すサイクルが非常に早いのです。新しい服を買うために、大量に買ってはすぐに手放します。要するにファストファッションです」と研究論文の主執筆者であるイェール大学のマイタル・ペレグ・ミズラチ博士研究員は説明する。

多くの人は、セカンドハンドのファッションは本質的にサステナブルであると考えるが、購入されている服の量とそれらがリユース販売されているスピードを思うと、必ずしもそうではない。ペレグ・ミズラチらが行った研究の対象者の大半は、不要になった服は新品中古問わず、売りに出すのではなく寄付していると答えた。となると、これらの不要品の多くは、おそらくガーナ、チリ、インド、パキスタンといった“グローバルサウス(南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称)”の国々の埋立地に廃棄されている。現にイギリスでは、チャリティショップに寄付された服のうち、実際に再販されるのはわずか10〜30パーセントだ。

「セカンドハンドのものを買う人は、普通に新品を買う消費者よりも多くの繊維廃棄物を生み出しています」とペレグ・ミズラチは続ける。「消費を減らすこと。それが唯一の効果的な解決策です。お金の使い道を変えるだけで、気候危機から抜け出すことはできません」。もちろん、新品ではなく中古品を買うことは、既存の衣料品を循環させ、二酸化炭素排出量を削減するのに役立つ。ただし、それは新たな消費を帳消しにできる場合のみだ。

重要なのは、昔からはびこる過剰消費主義に踊らされるのではなく、しっかりと自分の意思で買う買わないを決めることだ。UK版『VOGUE』のシニア・ショッピング・ライターのアリス・ケーリーは、衝動買いはほとんどせず、ときには何カ月も考えてから購入を決めることもあると言う。彼女は今年、バレンシアガBALENCIAGA)の「ル シティ」バッグプラダPRADA)の「フレーム」シューズフィービー・ファイロ時代のセリーヌCELINE)のパンプスを含むヴィンテージピースを買ったそうだ。「今年買ったセカンドハンドのアイテムのほとんどは、かなり前からずっと欲しかったものです。着ない日はないくらい愛用するものでないと、基本買いません」

アリス同様に、私もここ数年で買った古着を一番よく着ている。おそらく、どれもよく吟味してから買ったアイテムだからだろう。リユース品を買う楽しみのひとつは、一生大切にしたいと思うアイテムと巡り会えることを辛抱強く待つことだ。確かに最近の私は全体的に少し買い過ぎかもしれないが、買ったものはちゃんと長く愛用して着古したいと思う。

Text: Emily Chan Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.CO.UK

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