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【60代エンタメ】倍賞千恵子×木村拓哉×山田洋次監督『TOKYOタクシー』は驚きと涙が連鎖するハートフルな物語

  • 2025.11.20

山田洋次監督が倍賞千恵子さんを主演、木村拓哉さんを共演に迎えた映画『TOKYOタクシー』が11月21日より全国公開されます。

山田監督91作目となる最新作は、フランス映画『パリタクシー』(2023年)が原作。“終活”に向かうおしゃべり好きのマダムと、さえないタクシー運転手。偶然出会ったふたりが東京の各所に寄り道しながら1日を過ごすうちに、ゆっくりと心通わせる様子を描いた物語です。意外な展開に驚きながら心が温かくなるヒューマンドラマの見どころを、劇中に登場するある食べ物にも注目したコラムとして紹介します。

ストーリー

毎日休みなく働いているタクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)。パートで働く妻の薫(優香)、娘の奈菜(中島瑠菜)と3 人で暮らしているが、コロナ禍以降生活は楽ではなく、娘の高校入学金や車検代、家の更新料などの資金繰りに頭を悩ませていた。そんなある日、浩二のもとに85 歳のマダム・高野すみれ(倍賞千恵子)を東京・柴又から神奈川・葉山にある高齢者施設まで送るという依頼が舞い込む。

走り出したタクシーの車中、最初は互いに無愛想だった2 人だが、会話を交わすうち次第に心を許し始めたすみれは「東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがある」と浩二に寄り道を依頼する。東京のさまざまな場所を巡りながら、すみれは自らの過去を語り始める。たった1日の旅が、やがて2人の心を、そして人生を大きく動かしていく。

【見どころ1】予想外の展開と感動の涙が押し寄せる

タクシー運転手とその乗客として偶然出会った浩二とすみれ。浩二にとってのすみれは、長距離移動のラッキーな乗客という印象でしかなかったのですが、すみれの過去を聞きながら思い出の地を寄り道するうちに心が動き、彼女の人生に思いをはせるようになります。

と、ここまでお伝えしたストーリーだと、ほんわかした物語だと思われるかもしれませんが、昭和、平成、令和とそれぞれの時代を必死で生きてきたすみれさんの人生は波乱万丈で、どんどん話に引き込まれていきます。

そして後半は思わず涙が流れるようなシーンが続き、じわじわと感動が押し寄せてきます。試写会では老若男女問わず泣いているマスコミ関係者が多数で、あちこちからすすり泣きが聞こえていたので、劇場へはぜひハンカチ持参で!

【見どころ2】木村拓哉さんのさえないタクシー運転手姿が新鮮

これまでドラマや映画で刑事、検察官、パイロット、シェフ、ボディガード、スポーツ選手、財閥の御曹司、武士、そして織田信長まで!まさにヒーローな主人公を演じてきた木村拓哉さん。『TOKYOタクシー』では、休みなく働いても毎月ギリギリで余裕のない生活をしている、さえない個人タクシーの運転手姿が新鮮です。

演じている浩二にはクラリネットが得意な一人娘がいて、夢だった音楽大学の附属高校への推薦入学が決まったものの、入学金をどう工面するか頭を悩ませています。にじみ出るかっこよさは消えませんが(笑)、生活感漂う疲れたお父さん役の木村さんもハマっているので必見です。

【見どころ3】東京の名所を巡りながら昭和史を振り返る

すみれが依頼したタクシー移動は、東京都葛飾区の柴又から神奈川県の葉山まで。高速に乗って順調にいけば1時間半の移動距離ですが、高齢者施設への入居を控えたすみれは、80年以上暮らしてきた東京の思い出の場所を巡りたいと提案。たった1日のショートトリップが始まります。

帝釈天で旅の無事を祈り、言問橋で幼少期の記憶を振り返り、その後は上野の不忍池、皇居の周辺、明治神宮外苑のいちょう並木、東京駅、東京タワー、都庁など、都内の名所を車窓から眺め、ときに寄り道しながら神奈川県へと移動していきます。映画を観たあとは、すみれさんの人生に思いをはせながら、ロケ地めぐりを楽しむのもおすすめです。

余談ですが、「寅さんシリーズ」で長年主人公の妹「さくら」役を演じてきた倍賞千恵子さんが、今作では「すみれ」さんになり、紫のコートに薄いピンクのマフラーを合わせているのが素敵。旅の出発点が、寅さんでおなじみの帝釈天というのも山田洋次監督の粋な計らいですね。

【ここにも注目!】家族に食べさせたいシュークリーム

葉山に向かう途中、ある町に寄ったふたり。そこにはシュークリームで有名なケーキ屋さんがあるらしく、娘からのリクエストを受けた浩二は家族へのお土産にしようと思っているのですが、あちこち寄っているうちに買えるかどうか怪しくなってきます。

すみれの思い出話を聞くうち、だんだん彼女の人生に寄り添うような気持ちになり、自分と家族のこれからについて真剣に考える浩二。そんなふたりの旅の終わりは? その後は? 物語の結末は、ぜひ劇場で見届けてください。

作品情報

『TOKYOタクシー』
11月21日(金)全国公開 出演:倍賞千恵子 木村拓哉
蒼井優 迫田孝也 優香 中島瑠菜
神野三鈴 イ・ジュニョン マキタスポーツ 北山雅康 木村優来
小林稔侍 笹野高史
監督:山田洋次
脚本:山田洋次 朝原雄三
原作:映画「パリタクシー」(監督 クリスチャン・カリオン)
配給:松竹
©2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会
https://movies.shochiku.co.jp/tokyotaxi-movie/

この記事を書いた人 富田夏子

雑誌ライター歴21年。得意分野はエンタメ、フード、ライフスタイル。映画ライター/映画ごはん研究家として、「映画とごはんをつなぐメディア」をSNSで展開し、映画と食に関連する情報や体験をシェアしている。日本映画ペンクラブ会員。 雑誌やWEBへの映画レビュー連載歴は14年で、俳優や映画監督のインタビューも手がける。料理取材の試食は残さず食べる食いしん坊。

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