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ファッションと映画が出合うとき──『VOGUE JAPAN』2025年12月号、エディターズレター

  • 2025.11.12

フェードイン。ロケ地はパラマウント・ピクチャーズ・スタジオ。バックロット(屋外の撮影エリア)にキャットウォークが設けられている。スポットライトがアスファルトを照らし、床に引きずるほど長いドレスが行き交う。夢の中の一場面のように感じられる瞬間。

ファッションがファンタジーのストーリーだとしたら、映画はまさに完璧な相手役でしょう。というわけで、年に一度の映画館とランウェイが出合うファッションストーリーの舞台に、私たちはハリウッドでも最も長い歴史を誇るパラマウント・ピクチャーズ・スタジオを選びました。「VOGUE WORLD HOLLYWOOD」と銘打ったこのスペシャル企画は、映画のフィルムとリアルな世界の両方で輝く美への讃歌です。

シーン1:ロンドン、リナの早替わり。場面はロンドンの撮影セット。今月の表紙を飾ったシンガーにして俳優、事業家でもあるリナ・サワヤマが、まるで映画の場面転換のようにやすやすと、さまざまなムードをまとっていきます。ある瞬間は、サテンのドレスに身を包み、触れたら切れそうなほどシャープなアイライナーが印象的な1950年代のセイレーン(妖婦)に。でも次の瞬間には、リードを手に街を闊歩。さらには2000年代のサイバーパンク・スリラーの主役を気取り、スタジオにも嵐を巻き起こしました。スタイルを変えるたびに、アティテュードが研ぎ澄まされていきます。役を演じるのではなく、その人物になりきるのがリナの持ち味。日本と世界を結ぶ存在であり、グローバルな才能を誇る彼女は、いわば撮影されたばかりの映画のフィルム。ヴォーグ・ワールドでのクローズアップにも見事に応えてくれます(p.146)。

シーン2:東京、永遠の主役。最新作『TOKYOタクシー』で、彼はメガホンをとった山田洋次監督、そして日本映画の変わらぬ持ち味である抒情性に敬意を表しました。セットを離れても、その引力は圧倒的。人を惹きつけ、つい目が離せなくなります。年月を重ねてなお“キムタク”の魅力は色あせず、変わるところがありません。エフォートレスで永遠なのです(p.182)。

シーン3:ひときわ輝くダイヤモンド。毎年恒例のジュエリー&ウォッチスペシャルの主役は福島リラ。今ではミュウミュウのミューズを務め、「ジョン・ウィック」シリーズ最新作『バレリーナ:The World of John Wick』への出演も記憶に新しいですね。映画の撮影現場とキャンペーンを飛び回る彼女の輝きは、身にまとうダイヤモンドをはるかに超えています!(p.77)

3つのシーンを貫くテーマ:「曖昧になる境界線と、書き換えられる役割」です。今月号の主役たちは、みなアジアにルーツを持ち、音楽、映画、ファッション、ビューティーの垣根を越えて、軽やかに動き回っています。グローバルなスターには、もはや字幕は必要ありません。さらに今月はビューティーセクションでも、日本をクローズアップ。日本酒の発酵成分、米エキス、富士山を望むスパリゾートなど、日本の「和」のテイストを取り入れたリチュアルを紹介しました。これもまた、スキンケアという「脚本」をもとにした映画のシーンと言えるかもしれません。

場面転換、カメラの反対側にいる私の姿:さあ、これでおしまいです! 今月号は、私がヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントとして手がける最後の号になります。読者の皆さん、私たちを見守り、一緒に夢を見、信じてくれてありがとうございました。とはいえ、ヴォーグではエンドロールが流れることは決してありません。一つのシーンが終わっても、次も必ず、わくわくするシーンが待っているからです。

愛をこめて、フェードアウト。

Photo: Sean and Seng Translation: Tomoko Nagasawa Text: Tiffany Godoy

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