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24年前、新世紀の空気を変えた“軽快なグルーヴ” 軽やかなのに耳にのこるワケ

  • 2025.12.15

「24年前の元日、あなたはどんな景色を見ていた?」

街を歩くと、まだ眠ったままの大通りに、ひんやりとした空気が広がっていた。2001年の幕開けは、どこか特別だった気がする。“新しい時代の扉が開いた瞬間”を、街の空気そのものが祝福していたようだった。ちょうどその頃、スピーカーから流れてきたのが、軽やかで、それでいて芯の通ったロックサウンドだった。

氷室京介『Girls Be Glamorous』(作詞:森雪之丞・作曲:氷室京介)――2001年1月1日発売

新世紀の最初の日にふさわしく、どこか光沢を帯びたようなサウンド。聴いた瞬間に「始まったな」と思わせる鮮烈な空気があった。

音に宿る“新時代のヒムロック”

氷室京介の作品といえば、強烈なエッジの効いたロックチューンから、重心の低いバラードまで幅広いが、『Girls Be Glamorous』はそのどれにも寄りきらない、“軽やかで都会的なロック”という独自の魅力を放っている。

作詞は森雪之丞。氷室との相性の良さは多くのファンに知られているが、この曲でもその世界観が研ぎ澄まされており、言葉のリズムとサウンドの流れが自然に絡み合う。

2000年代に入った氷室の音楽は、90年代の圧倒的なロック感から一歩距離を置き、より解像度の高い“音の輪郭”を追求していった時期。そのニュアンスが、この曲の随所に息づいている。

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2000年、東京・日本武道館でライブをおこなった氷室京介(C)SANKEI

心地よさの奥にある、洗練された疾走感

『Girls Be Glamorous』は、ロックでありながら決して荒ぶらない。ギターの歯切れ良さ、リズム隊のタイトさ、そして氷室のボーカルの抜け感が、“体を預けたくなるような自然なグルーヴ”を生み出している

聴いていて息苦しくならない。聴き流せるほど軽くもない。その絶妙なバランスが、当時のJ-POPシーンではむしろ新鮮だった。

資生堂「ピエヌ」のCMソングとしてオンエアされ、氷室本人が出演した映像のクールさと相まって、楽曲の持つ都会的な温度がさらに引き立った。音も映像も含めて“スタイリッシュなロック像”が提示されていたのだ。

都会の風のように、時代にそっと寄り添う曲

2001年という年は、日本の音楽シーンが大きく転換し始めたタイミングでもあった。

90年代の巨大ムーブメントから距離を置き、アーティストがそれぞれ“次のフェーズ”を模索し始めた頃。氷室京介も例外ではなく、『Girls Be Glamorous』の軽やかさは、まさにその変化の象徴のひとつだった。音数を詰め込むのではなく、空気の抜け感や配置の美しさを大切にするアプローチ。それが、曲全体に漂う心地よさをつくり上げている。

“軽やかで洗練されたロックが持つ快感”を、これほど自然に届けた楽曲は多くない。2001年の街の空気とリンクするように、この曲は聴く人のそばをスッと通り抜け、でもなぜか耳に残る。

あの元日の静けさや澄んだ空気、そして“新世紀が始まった”というあの感覚を、さりげなく封じ込めたような存在だ。

軽快で、都会的で、でも温度はクールすぎない。そんな絶妙なロックサウンドは、今聴いても瑞々しさを失っていない。そしてこれからも、きっとひっそりと誰かの“新しい始まり”に寄り添い続けるのだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。