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29年前、人気ロックバンドが放った“50万ヒット” 「情熱と切なさ」の黄金比率とは

  • 2025.12.15

「29年前の冬って、どんな景色が広がっていたか覚えてる?」

白い息が夜の街に溶け、コンビニの前を通り過ぎる学生たちの笑い声がやけに響いていた1996年。ポケットに入れた音楽プレーヤーからは、当時のJ-POPを象徴するような、熱と切なさが共存したサウンドが溢れていた。あの頃、街のどこかで必ず耳にした一曲がある。

GLAY『グロリアス』(作詞・作曲:TAKURO)――1996年1月17日発売

リリースから時間が経った今も、あのイントロが鳴るだけで、一気に“冬の光景”が胸の奥に蘇る。それほどまでに、この曲は90年代半ばの空気を、瑞々しく閉じ込めている。

心に火を灯すように生まれた、GLAYの“確信”

『グロリアス』は、GLAYの8枚目のシングル。まだ“国民的バンド”として定着する前の、上昇気流が一気に速度を上げ始めた時期にリリースされた。

冬の澄んだ空気の中、彼らが放ったこの一曲は、明るさと熱量を両手いっぱいに抱えながら、同時にどこか切なさの残る独特のムードを持っていた。

作詞・作曲を手がけたTAKUROが描くメロディは、初期GLAY特有の“まっすぐな情熱”が真ん中にある。そのうえで、メンバー全員の演奏が曲のエネルギーと透明感を引き上げ、イントロの瞬間に世界が一気に開けるような高揚感を生み出している。

まさに、バンドとしての“未来の形”を示した一曲だった。

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GLAY(C)SANKEI

あの頃の街に響いた、凍てつく風と温かい歌声

冬のリリースでありながら、『グロリアス』は寒さの象徴ではなく、寒さの中に差し込む“温度”を帯びていた。TERUの歌声は力強さと柔らかさが同居し、聴く人の感情をそっと包み込んでくれる。

特にAメロでの透明感あるボーカルは、夜の帰り道のような静けさを思わせる。それがサビで一気に解き放たれ、空に向かって伸びていくような広がりがある。そのメリハリこそが、多くのリスナーに「聴くたびに前向きになる」という感覚を残し続けているのだ

この“温かい疾走感”は、GLAYというバンドの持つ根源的な魅力でもあり、時代を越えて愛される理由でもある。

輝き続ける名メロディと、J-POP黄金期の風景

成長期のGLAYが放った『グロリアス』は、彼らの作品の中でも屈指の人気を誇る楽曲となり、最終的に50万枚以上を売り上げるヒットを記録した。まだCDショップの試聴機に行列ができ、街中に新譜のポスターが貼られていた時代。音楽が“空気そのもの”だった頃の熱気を、確かに体現していた。

この楽曲が象徴するのは、J-POPが急速にスケールを増し、バンドシーンが再び中心へと浮上していった90年代半ばの熱量。それは今振り返っても特別で、どこか眩しい記憶として多くの人の胸に残り続けている。

『グロリアス』は、GLAYの名をさらに広げるきっかけになっただけでなく、J-POP黄金期の“キラキラとした瞬間”を象徴する存在でもある。

今も変わらず心を照らす、あの日の光

季節が巡っても、環境が変わっても、街を歩いていてふと『グロリアス』が流れてくると、いつかの冬の匂いや空気を思い出す。あの頃の自分も、ちょっと頑張れていた気がする……そんな気持ちさえ引き出してくれる。

それは、この曲が単なるヒットソングではなく、聴く人それぞれに“冬の希望”を残してくれたからだろう。これからも寒い季節になるたびに、『グロリアス』は静かに、しかし確かな輝きでもって、心の奥を温め続けるはずだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。