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「間違いなく国宝級ドラマ」放送から8年“冷めないファンの熱量”…至極の完成度で魅せる秀逸作

  • 2025.12.18

人の心に長く残るドラマや映画には、派手な事件や劇的な展開があるからではなく、日常のすき間にそっと置かれた“余韻”がある、毎朝の生活に溶け込む温度感を持ちながら、どこか不思議で、くすっと笑えるまさにそんな忘れられない朝ドラのような昨品があります。

今回は、そんな作品の中から2017年に放送されたドラマ『カルテット』(TBS系)をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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映画「ファーストキス」初日舞台挨拶 松たか子(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『カルテット』(TBS系)
  • 放送期間:2017年1月17日~3月21日

偶然に見えてどこか必然のように、30代の男女4人が冬の軽井沢で出会い、弦楽四重奏団(カルテット)を組むことになる。第1ヴァイオリンの巻真紀(松たか子)、ヴィオラ奏者の家森諭高(高橋一生)、第2ヴァイオリンの別府司(松田龍平)、そしてチェリストの世吹すずめ(満島ひかり)。それぞれが音楽への夢を胸に秘めながらも、現実には“食べていけないミュージシャン”という不安と、誰にも言えない個人的な事情を抱えている。

4人は軽井沢の別荘で共同生活を送りつつ、細々と演奏の仕事をこなしていく。しかし、表面上穏やかに見える日常の裏で、メンバーそれぞれの嘘や秘密が少しずつ明らかになり、関係は揺らぎ始める。
なかでも、真紀の夫の失踪をめぐる謎や、すずめの“ある目的”は物語に緊張をもたらし、4人は音楽だけでなく、“誰かと一緒に生きること”そのものと向き合うことになる。

静かな会話とユーモア、そしてほろ苦い人間関係が積み重なっていくなかで、4人はやがて「夢を諦めるのではなく、形を変えて抱え続ける」という大人の現実に気づいていく――。
これは、音楽に救われ、時に裏切られながらも、それでも人とつながろうとする4人の小さな奇跡の物語である。

わずかな出番でも物語に“揺らぎ”をもたらす——中島歩さんの圧倒的存在感

本作の中で、とりわけ印象深いのが中島歩さんの登場シーンです。第2話で、別府司の同僚・九篠結衣(菊池亜希子)の新郎役として出演しました。出演時間は決して長くないにもかかわらず、彼が画面に現れるだけで場面の空気が一変し、物語の奥行きがぐっと深まります。その理由は、中島さんが常に“キャラクターの見えない部分”まで含めて演じる俳優であり中島さんのこれまでの出演作を振り返ると、その強みが改めてよく分かります。


社会的テーマを軽妙なコメディに落とし込みつつも、人間の弱さを丁寧に描いたドラマ『不適切にも程がある』では、時代の価値観に翻弄されながらもどこか憎めない人物像を体現し、物語のアクセントとなりました。また、実在の人物を描いた連続テレビ小説『あんぱん』では、華やかさよりも内面の熱量を大切にした演技で、思慮深さと繊細さを併せ持つキャラクターを静かに輝かせています。さらに、すれ違うことすらないはずの2人が出会い、大きな隔たりを越えて惹かれ合うラブストーリー『愛の、がっこう。』では、爽やかな外見と柔らかい物腰のハイスペック男子ながらどこか滑稽でひとクセある人物を演じ、高く評価されました。

これらの作品に共通するのは、中島さんが“説明しすぎない存在感”を持っているということです。セリフや動作の大きさではなく、ちょっとした目の動きや体の向き、その場に立つだけでにじむ“背景のにおい”で観客を引き込みます。そして本作でも、その魅力は遺憾なく発揮されています。たとえ登場シーンが短くても、中島さんが現れる瞬間、物語の重心が少しだけ揺れ、登場人物たちの関係性が別の角度から照らされるような感覚が生まれます。


「この人物には裏に何があるのか」「次にどんな影響を及ぼすのか」と、観客に自然と想像させる力。それこそが、中島歩さんが“短い出番でも忘れられない俳優”と評される理由でしょう。本作でも、まさにその真骨頂。中島歩さんの存在によって物語に深みと緊張感、そしてわずかな余韻が加わり、全体の印象を豊かにする“見逃せない見どころ”となっています。

静かに積み上がる“違和感”が一気に反転する——緊張と謎が絡み合うサスペンス構造

本作のもう一つの大きな見どころは、物語全体に張り巡らされた“静かな緊張感”と“違和感の積み重ね”です。派手なアクションや急展開に頼るのではなく、些細な言動、何気ない視線、場面の陰影といった細部によって不穏さがじわじわと拡大していきます。そのため、観客は常に「この裏に何があるのか?」という疑念を抱えながら物語を追うことになり、自然と作品世界に引き込まれていきます。

序盤では日常の中に潜む微妙な“ずれ”がほのめかされ、中盤になると登場人物同士の関係や事件の断片が複雑に絡みはじめます。バラバラだったピースが偶然のようで必然的に重なり、少しずつ“見えていなかったもの”の輪郭が浮かび上がってくる過程は、サスペンスならではの緊張と快感が両立した瞬間です。

また、伏線配置の巧みさも本作の大きな特徴です。会話の端々に潜む意味深な一言、印象的なカットの余白、音楽が消える瞬間など、あとになって「ここにすでにヒントがあったのか」と気づく仕掛けが随所に散りばめられています。クライマックスに向かってその伏線が一気に回収される展開は、まさに心臓を握られるような緊迫感と爽快感が同居しています。

さらに、キャラクターたちの“真意”が二重、三重のレイヤーで描かれている点も見逃せません。それぞれが抱える秘密や嘘、あるいは沈黙に隠された感情が、物語を大きく揺るがす鍵となり、観客の予想を鮮やかに裏切ります。見終わったあと、再度観返したくなるような仕掛けの数々も本作の魅力です。

SNSでも、「演出も脚本も俳優陣の演技も完成されてる」「世界で1番大好き」「間違いなく国宝級ドラマ」「この完成度が地上波で…」と、心動かされる視聴者が続出。放送終了後に配信を観て新たにファンになった方も多く、未だ愛され続けている名作ドラマです。

日常の風景の裏側に潜む“狂気”や“真相”へとゆっくり導かれていくこのサスペンス構造は、本作にたまらない緊張感と深い満足感を与える、間違いなく重要な見どころです。


※記事は執筆時点の情報です