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時計とスタイル:〈MOGI Folk Art〉のオーナー、テリー・エリスのケーススタディ

  • 2025.11.11
李朝箪笥に並ぶ時計
BRUTUS

フォークアートも〈セイコー〉も流行に左右されないもの選びを貫く

セレクトショップ〈MOGI Folk Art〉のオーナー、テリー・エリスさんの自宅には、メキシコ・オアハカのウッドカービングやアフリカのマスクなど、世界中のフォークアートが調和するように並ぶ。そんなプリミティブなものたちと同じくらい生活に欠かせないのが腕時計。

棚の上に並びエリスさん所有のアート作品や民芸品
棚上にアート作品や民藝が並ぶ。右端のお面は、西アフリカの民族、ダンのもの。右から2番目のベージュの人形は益子焼(ましこやき)の作家・中村学の作品。中央のオレンジ色の動物はオアハカの木彫り。
李朝箪笥に並ぶ時計
〈セイコー〉は李朝箪笥に収納。左棚の右端は、「プロスペックス ランドマスター スプリングドライブ」。横には「プロスペックス SBDX023」。左端は〈グランドセイコー〉「45GS」の復刻。

「約40年前にパリのショップで出会った〈ロレックス〉の『エクスプローラーⅠ』をきっかけに、腕時計に興味を持ち始めました。その後〈スウォッチ〉や、〈ハミルトン〉がかつて手がけていたデジタルウォッチ『パルサー』などのニッチな時計も収集することで、お気に入りの一本を巻くことは習慣の一つに。今や、着け忘れて外出したら家に必ず取りに戻るほど必需品です」

登板回数の多い時計たちは李朝箪笥(だんす)の引き出しに収納する。そこには〈セイコー〉をメインとする15本の腕時計が潜んでいる。

「〈セイコー〉で初めて手にしたのは、1965年製の初代ダイバーズウォッチ。高級ブランドがこの手のものを作るとゴージャス感が満載ですが、この一本は控えめなデザインなので使いやすい。アドベンチャーモデル『プロスペックス ランドマスター スプリングドライブ』は、〈セイコー〉と登山家・三浦雄一郎がエヴェレストを登頂するために作った一本で、好きなモデルの一つ。登山中の引っ掛かりを防ぐためにベゼルを省き、リューズも12時の位置にあります。この珍しいデザインを手がけているのが、〈セイコー〉のユニークなところです」

エリスさんの所有する腕時計たち
左端が、〈セイコー〉の初代ダイバーズウォッチ。左から2番目は平らなフェイスなど、田中太郎のデザインが再現された〈グランドセイコー〉の2017年モデル。その右隣は、共に店を営む北村恵子の祖父が愛用していた60年代の〈セイコー〉。ベルトをフランスのブランド〈マリア ルドマン〉のものに替えた。上は、腕時計のケース。〈ギットマンヴィンテージ〉の生地を使用。
時計を選ぶエリスさん
「李朝箪笥の浅い引き出しは、時計を収納するのにちょうどよくて」とエリスさん。この上にも、益子焼の陶芸家・大塚茂夫が手がけた「白い家」などの作品が並ぶ。

エリスさんの〈セイコー〉への愛は底知れない。特に目がないと話すのが、デザイナーの田中太郎が手がけた60年代の〈グランドセイコー〉。

「〈セイコー〉は機械式時計の最高峰の代名詞であるスイス製を追い越すために挑戦し、いい時計を作り続けていることも魅力の一つ。その象徴と言えるのが、田中太郎さんがデザインする〈グランドセイコー〉。僕が愛用するのは68年に登場した名機『45GS』モデルの復刻版ですが、デザインなどの見た目は当時のまま。彼が手がける一本は、ケースや文字盤なども含めたフェイスが平面で美しく見やすい。しかも、光を反射する鏡面仕上げを行っているから、輝きもうっとりするほど綺麗です」

デザインが美しい時計を好むエリスさんは、民藝やアートピースも同じマインドで選んでいるようだ。

「もしバスキアがクロノグラフを手がけたらこうなりそう」とエリスさんが話す〈グランドセイコー〉の一本。

「フォークアートも、直感的に美しいと感じたものを買いますし、部屋のあの一角に置きたい、と閃(ひらめ)いて購入することもある。ジャンルや国籍にとらわれずに自分の感覚で選べば、そのものに対して愛着も湧くはず。それは時計選びにも共通すること。レアなものや価値がついているものをコレクションしても、所有するだけでは本末転倒。日々の道具として愛用し続けることが腕時計の醍醐味だと思うのです」

profile

テリー・エリス(〈MOGI Folk Art〉オーナー)

1961年ジャマイカ生まれ、ロンドン育ち。2003年に〈ビームス〉で〈フェニカ〉を立ち上げる。22年に独立し、北村恵子とフォークアートやオリジナルのウェアなどを揃えるショップ〈MOGI Folk Art〉を高円寺に開店。

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