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食べられるのは選ばれし100店…「世界中探しても見つからない」“幻のジャガイモ”の挑戦

  • 2025.10.30

皆さんが抱えている「なぜ?」「どうして?」を調査する、HBC「もんすけ調査隊」。
今、世界を驚かせている北海道の“ある農産物”に迫ります!

Kさん(60代・札幌)からの「倶知安にある“幻のジャガイモ”が、世界から注目されているそうです。調べてください」という依頼を深掘りします。

幻のジャガイモ「五四〇(ゴーヨンマル)」

北海道倶知安町に常識を覆す奇跡のジャガイモがあります。

その名は「五四〇(ゴーヨンマル)」。

ジャガイモの貯蔵は、通常1か月ほどですが「五四〇」はその名の通り、収穫から540日、約1年半もの長い間、低温の貯蔵庫で眠り続けるのです。

この長い眠りの中で、デンプンはすべて糖へと変わり、まるでサツマイモのようなねっとりとした甘さに。
一口食べれば、誰もが言葉を失う味だといいます。

しかし、熟成に時間を要するため、市場には出回らず、家庭ではお目にかかることができません。
味わえるのは、倶知安や札幌を中心とした、約100店舗の和食店や居酒屋などだけ。一般販売はされておらず、食べられるのは北海道の中でも限られたお店だけ…。

Sitakke

その中のひとつ、新ひだか町の「あま屋」天野洋海代表は「本当にジャガイモなのかと。食べたら何この甘さ。今までに感じたことのない体験ができる」と話します。

NISEKO浪花亭の村井隆料理長も「なんで?なぜこんなにおいしいの?というのが最初。甘くて、『これ、ジャガイモ?』と誰もが一番最初に思う」とその感動を教えてくれました。

そして今、この知られざる逸品に世界が注目しているというのです。

ドバイからの熱い視線

Sitakke
UAE・ドバイ ロウ・オン45

本間松蔵商店の本間浩規社長は「去年の年末くらいに、UAE(アラブ首長国連邦)のレストランから問い合わせがあり、興味があると言ってもらった」と話します。

世界の富豪やセレブが集まるUAE=アラブ首長国連邦の都市、ドバイ。
ミシュラン2つ星の創作フレンチレストラン「ロウ・オン45」から熱い視線が送られました。
ロウ・オン45のラフル・バブ・シュレスタ料理長は興奮しながらこう話します。

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「今まで食べたなかで最もおいしいジャガイモだったので、もうこれしかないと思ったよ。初めて口にした瞬間、まるで栗のように甘く、滑らかな口当たりだったんだ」

ロウ・オン45では、常に世界中から最高の食材を探し求めているといいます。

「世界中を探しても、このようなジャガイモは見つからない。世界でも貴重なジャガイモだ」

平坦ではない道のり

Sitakke
UAE・ドバイ 5月

しかし、期待と同時に、拭い去れない不安も…。

本間松蔵商店の本間浩規社長は「『なぜ?』と正直に思った」と話します。

そこで5月にはドバイに行って、シェフに直接会ったのだといいます。

「『君のためにお皿を空けて待っているから』と言われた」

世界への道のりは平坦ではありませんでした。
常夏のドバイまで、この繊細な甘みをどう保つか。
わずかな温度管理のミスが、命である甘さを奪ってしまいます。

本間社長は5月にドバイに行ったときに、その解決のヒントを探しました。

「日本の衛生管理とは全然違った」

Sitakke
UAE・ドバイ 5月

日本とはあまりにも異なる衛生環境…食材は野積みにされていました。

「完璧な温度管理は不可能だ」

そう絶望した本間氏に、ひとつのひらめきが訪れました。

前人未踏の挑戦

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「今回の輸出方法は、洗浄、ボイル、冷却、冷凍までしてしまいます」

本間氏が考えたのは、日本でボイルしたものを急速冷凍してドバイまで送る作戦。
ですがこの作戦、いうほど簡単なものではありません。

ジャガイモの冷凍はタブー。

水分が多いため味や食感が台無しになり、フライドポテトやマッシュポテトなど、調理方法が限定されてしまうのです。

しかし、2つ星レストランへ輸出するには、自由に調理できる品質を保たなければなりません。

「五四〇」を冷凍し、遠い海外へ送る。

それは教科書にはない、誰も成し遂げたことのない、前人未踏の挑戦でした。

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依頼を受ける前から試行錯誤を繰り返し、2年もの歳月を費やして、ついに「五四〇」ならではの「ボイル方法」と「急速冷凍の技術」を完成させたのです。

9月、ミシュラン2つ星レストランのメニューに、その名が刻まれました。
その名も「クッチャン540」。

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クッチャン540

「五四〇」の上に昆布と茗荷のジャム、大トロ、キャビアを乗せ、青柚子が香るスモーククリームを添えた、もはや芸術の一皿。

唯一無二の甘みを持つジャガイモは今、世界で輝き始めました。

本間浩規社長は「生産者も食べる人も減ってくるし、産地であり続けるために、必要だと思われる商品作りをしなければ」と意気込みます。

北海道の小さな町が生んだ幻のジャガイモ「五四〇」。世界への挑戦が始まりました。

文:HBC報道部もんすけ調査隊
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年10月3日)の情報に基づきます。

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