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NHK夜ドラで“再現度の高さ”に絶賛の声続出「ハマり役」「そのまますぎる」第14話のラストで魅せた“言葉以上の演技”

  • 2025.12.3
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夜ドラ『ひらやすみ』第3週(C)NHK

NHKで放送中の夜ドラ『ひらやすみ』が、ほのぼのとした世界観と、原作漫画の再現度の高さから大きな話題となっている。中でも、ヒロト(岡山天音)の親友・ヒデキとして登場する吉村界人の演技には「ハマり役」「そのまますぎる」「ヒデキを演じるために生まれたのでは?」という絶賛が多数寄せられており、存在感は抜群だ。本記事では、そんな吉村界人が作品にもたらしている魅力を深掘りしていく。

※以下本文には放送内容が含まれます。

“変身できる俳優”吉村界人の真価

吉村は、2024年に話題を呼んだNetflix『地面師たち』でNo.1ホスト・楓を演じ、その強烈な存在感を視聴者に刻みつけた。楓はホストとして女性へ甘い言葉を囁く一方、風俗や買春の斡旋にも手を染める危うい人物。光庵寺の住職・川井菜摘(松岡依都美)を巧みに誘惑し、さらには地面師グループの辻本(綾野剛)が特殊メイクで施したケロイド顔を「キモ」と吐き捨てるなど、悪どさが際立つ役どころだった。

しかし、出演映画『Welcome Back』(2025)では異なる姿も見せる。そこでは、コミュニケーションに難がある友原勉(三河悠冴)と兄弟のように育った新人王候補のボクサー・冴木輝彦を演じ、敗北からの再起を描く役をシリアスかつ繊細に体現した。軽薄さが印象的な楓とは対照的に、内面の葛藤と成長が滲む静かな熱量が印象的だ。

軽薄な悪役から不器用な青年まで振り幅広く演じ分ける吉村界人。役に応じてあらゆる表情を見せ、作品の温度を汲み取ることのできる俳優であることは、すでに疑いようがない。

横顔で語られたもの:第14話のヒデキ

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夜ドラ『ひらやすみ』第3週(C)NHK

原作再現度の高さは、同シーンを原作と並べて視聴するファンもいるほどで、その“憑依ぶり”が話題となっている。

見た目や表情だけでなく、ヒデキという人物に血を通わせているのは、呼吸の間合いや眼差しの揺れが生む繊細な演技だ。原作のヒデキは少しキザで、自分の価値観を強く持つキャラクターとして描かれ、子育てを通じて徐々に妻との関係に違和感を抱き始める。その揺らぎがドラマでも丁寧に表現されている。

第14話のラスト。ヒデキは後部座席に妻と幼い子を乗せ、ヒロトの家から車を走らせる。バックミラーに映る眠る家族を見つめ、ふと口元をほころばせる。しかしその直後、笑顔でも落胆でもない“どちらとも言えない影”が表情に差す。その刹那の変化が、言葉以上に物語を語っていた。あの横顔は今後の展開を大きく揺らす伏線であり、見逃せない重要なフックになっている。

深刻にしすぎれば本作の魅力である朗らかさや余白が壊れる。しかし吉村の演技は、柔らかな空気のまま心のざわめきだけを確かに刻みつける。その数秒だけで“ヒデキの今”と“これから”を滲ませる演技に、思わず唸るほかない。

この一瞬の表情だけで、彼という人物の奥行きを感じさせる。第14話は、吉村界人の表現力と今後の物語への期待をさらに強くさせた回だった。

次の放送では、また新しい表情が見られるかもしれない。ゆるやかに続く物語の中で、ヒデキの変化も追っていきたい。


NHK夜ドラ『ひらやすみ』毎週月曜~木曜よる10時45分放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:山田あゆみ
Web媒体を中心に映画コラム、インタビュー記事執筆やオフィシャルライターとして活動。X:@AyumiSand