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ジェーン・バーキンが選んだ“自由に纏う”生き方。伝説のドレスに隠された物語

  • 2025.10.29

自由奔放でエフォートレス。それでいてどこかシックで、気品がある。ジェーン・バーキンといえば、カルチャー史に名を刻む、誰もが憧れる永遠のミューズだ。

フレアジーンズ、ストローバスケットバッグ、そして額でで切り揃えれた“パリジェンヌ風バングス”。彼女が生み出したスタイルは数えきれない。なかでもひときわアイコニックで、伝説的な装いのひとつといえば、胸もとが大胆に開いたクロシェドレスだろう。実はこのドレスには、あまり知られていない“もうひとつの物語”がある。

“前後逆”。自由を象徴するクロシェドレス

1969年、パリ。ジェーン・バーキンは、当時の恋人であり音楽のパートナーでもあったセルジュ・ゲンズブールとともに「ユニオン・デ・ザルティスト」のガラに姿を見せた。彼女が纏っていたのは、胸もとが深くVに開いた白のクロシェドレス。ウエストを留めるのは、黒い花のブローチひとつだけ。大胆でありながらも、どこか無邪気さを感じさせるその装いは、当時のファッションシーンでもひときわ視線を集めた。

いまもなお、ジェーン・バーキンのアイコニックなスタイルとして語り継がれるこのドレスだが、その裏には知られざるストーリーがある。実はこのドレスは、本来の着方ではなかった。彼女はドレスを“前後逆”に纏っていたのだ。大きくV字に開いたバックデザインを、あえてフロントに。自ら選んだアクセサリーをウエストに添え、唯一無二のドレススタイルを完成させていた。その姿は、彼女の感性と自由さが自然に滲み出た、“ジェーン・バーキン”という生き方そのものの象徴だった。

1969年、「ユニオン・デ・ザルティスト」のガラにて。当時の恋人セルジュ・ゲンズブールとともに出席したジェーン・バーキンは、深いVネックが印象的なホワイトクロシェドレスを纏って登場。 Getty Images
Serge Gainsbourg et Jane Birkin à Cannes en 19691969年、「ユニオン・デ・ザルティスト」のガラにて。当時の恋人セルジュ・ゲンズブールとともに出席したジェーン・バーキンは、深いVネックが印象的なホワイトクロシェドレスを纏って登場。 Getty Images

ロンドンとパリ。当時世界のカルチャーの中心だった2つの街を往来しながら、誰もが憧れるスタイルアイコンとして名を馳せていたジェーン・バーキン。しかし、そんな彼女のイメージを決定づけたのは、この日見せた当時としては大胆すぎるこの装いだ。あるいは、同年の映画『スローガン』(1969)のプレミアで披露した、カメラのフラッシュに照らされて透けたという伝説のミニドレスかもしれない。肌を透かすドレスも、背中を前にした一着も——どれも彼女にとっては、“自由”という名のスタイルの一部だった。

“自由”と“自然体”という名の美学

「彼女のファッションは時にスキャンダラスでしたが、それこそが、どこまでも自由で、自らのスタイルを貫いたジェーン・バーキンを、唯一無二の存在へと押し上げたのです」と、新著『It Girl: The Life and Legacy of Jane Birkin(=イット・ガール──ジェーン・バーキン、その人生とレガシー)』の著者、マリサ・メルツァーは『VOGUE』に語る。

「彼女のファッションが特別に映ったのは、それが演出ではなかったから。どんなドレスやフォーマルな装いも、彼女が纏えば、まるでいつものペザントブラウスやミニスカートのように自然になじんでしまうんです。」メルツァーはさらにこう続ける。「ジェーン・バーキンが着ると、どんな服もたちまち“ジェーン・バーキンの服”になる。彼女はロンドンのユースファッションと、パリのラグジュアリーを、自分の感性でしなやかに融合させていたのです。」

彼女のファッションを貫くのは、“自然体”というしなやかなスタンス。その揺るぎない軸があるからこそ、ジェーン・バーキンのスタイルは今もなお、世界中で愛され続けている。近年のボヘミアンリバイバルの流れを思えば、現代のItガールたちがこのガラルックを再現しても不思議ではない。けれど、ジェーン・バーキンのように着こなせる人は、きっといないだろう。

Text: Emily Chan Adaptation: Mei Fujita, Saori Yoshida

From: VOGUE.UK

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