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「億タワマン」を買った30代夫婦を悩ませる切実な問題…資産価値でもローン金額でもない「家購入の落とし穴」

  • 2025.10.28

夫婦が家購入を成功させるためには何が重要なのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「相談を受ける夫婦の希望や世帯年収はさまざまだが、どの夫婦も、なぜ賃貸ではなく『購入』したいのかをあらためて考えてほしい」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

拡大レンズの下の紙の家
※写真はイメージです
「家を持ちたい」相談に来た2組の夫婦

新築マンションの値上がりが続く中、東京都心では中古マンションも高騰が続いています。東京都全体では、9年前に比べて中古マンションの平均売買価格が約67%上昇しているという調査結果もあり(マンションリサーチ「東京23区中古マンション価格推移と価格上昇率ランキング【2025年10月最新】」)、今後も上昇基調は続く見込みです。

そんな“マンション価格高騰時代”に「家を持ちたい!」と相談にきた2組の夫婦の例から、共働きカップルの賢い物件の選び方を考えます。

さまざまな調査で都心部のマンション価格は値上がり傾向が続くと言われていますが、ファイナンシャルプランナーの私も同じように捉えています。特に港区や千代田区といった資産価値の高い人気エリアでは、中古マンションであっても値崩れの気配はほとんどありません。

私自身、思い起こしてみても、直近で価格が下落したのは東日本大震災時しか記憶になく、当時、表参道にある2DKの中古マンションが7000万円ほどで売りに出されていました(ちなみに現在、この物件は1億2000万円くらいまで高騰しています)。

つまり、利便性の良い、高い資産価値のある中古マンションにおいては、値下がりを待ってもその時は訪れない可能性が高いのです。

都内でマンションを持つのは諦めるしかないのか――。そんな風に思われるかもしれませんが、まずは皆さん、「そもそも(特に都内に)家を持つ必要があるか?」ということに立ち返ってほしいと思うのです。そこで、私のもとに相談にきた2組のご夫婦の例をお話します。

タワマンを手に入れたのに「生活がすさんでいる」

パワーカップルの酒井さん(仮名)は、30代で夫・妻共に年収1000万円を超えていました。夫妻は出産前に23区内の物件を探していて、私のもとに相談にきたのです。そして妻はすでに、1億円超えのタワマンに狙いを定めていました。たしかにその物件は資産価値としても申し分なく、彼女は産後も仕事を続けていく意思が強かったことから、月々約24万円のローン返済も可能な範囲でした。しかし……。

タワマン購入後に無事子どもが生まれたものの、妻の体調が悪化。希望していた職場復帰も叶わず、世帯収入は激減してしまいます。夫の片働きの収入だけでもローン返済は可能ですが、旅行といったふだんのレジャーは我慢せざるを得ず、「生活がすさんでいる」ということでした。

売りに出すにはローン残債が多すぎる

考えられる策は、タワマンを売りに出してしまうことですが、住みはじめて2年ほどしか経っていないためローン残債が多く、物件を所有してから5年以内に売却して利益が出た場合(「短期譲渡所得」と言います)、譲渡所得に対して39%もの税金がかかってしまう落とし穴もあり、今すぐには身動きが取れない状態です。ただ、所有から5年を超えると税率は20%とぐっと下がるので、物件購入時には覚えておきましょう。

木のテーブルの上に木のパーセンテージと家の看板のシンボルアイコン
※写真はイメージです

そして私が何より一番気になったのが、タワマン購入に乗り気だったのが妻だけだった、ということです。後に聞いたところ、夫はそこまでハイスペックな家を求めなかったそうなのです。この件は、2例目の町田さん夫妻(仮名)をご紹介した後に、その“マズさ”を解説します。

「中央線沿線に家が欲しい」世帯年収1000万円夫婦

高収入の酒井夫妻の一方、30代の町田夫妻は、駆け出しのフリーランスデザイナーと会社員というカップルでした。彼らの希望は、「中央線沿線に家が欲しい」というもの。特に、阿佐ヶ谷や高円寺がお気に入りで、エリアへの愛が相当に強かったのですが、予算をお聞きすると、3000万円。世帯年収も1000万円ほどだったので、予算としては妥当でした。

ただ、ご存知のとおり、23区内の中央線沿線は都内でも屈指の人気エリアのひとつです。言葉を選びながら、「お二人の予算から物件を考えると、エリアとしては23区外か埼玉県といった隣接県が安全でしょう」とお伝えしたところ、一気に町田夫妻のテンションが下がっていくのがわかりました。

希望のマンションを購入したものの、家庭の経済状況が大きく変化してしまったことで、生活がすさんでしまった酒井夫妻。予算と住みたい場所のマッチングが叶わず、家を買えなかった町田夫妻という2例をご紹介しました。

なぜ家を「買う」必要があるのか

ここで、マイホーム購入時にもっとも皆さんに考えていただきたいのが、「家を買う目的」です。酒井さん夫婦のケースでは、タワマンに住みたい妻と、ハイスペックな家を求めていない夫との間で価値観のズレが生じていたにもかかわらず、その差を埋めないまま購入に至っていました。そして結局、夫は望まない家のローン返済を一人で負うことになっているわけですから、これではハッピーとはいえませんよね。また、町田さん夫妻の場合、エリアへのこだわりは強かったものの、家を「購入」する目的が明確ではありませんでした。

そして、家を買う目的を家族間で明確にしたうえで考慮すべきなのが、ライフプランです。お子さんを持つことをきっかけにマイホームの購入を考える方は多いですが、子どもを持つということは、良くも悪くも、「不確定要素」が増えることになります。酒井さんのように、産後体調を崩して思うように働けなくなったり、子どもの特性によって教育環境を変えたくなったりなど、夫婦ふたり暮らしよりも変化が生じやすくなるのは当然でしょう。すべての変化を予測することができない以上、お子さんを持ちたいならば特に、余裕を持った資金計画を考えていただきたいと思います。

家での時間を楽しむ家族
※写真はイメージです
値下がりを待っている間に金利が上がる可能性も

また、少しでも資産価値の高い物件を狙っている方は多いと思いますが、冒頭に申し上げたように、都内のマンション価格の値下がりは考えにくい状況です。だからといって、「物件価格」が下がるのを待っていると、その間に金利が上がる可能性も十分ありえます。仮に少し物件価格が下がったとしても、今より金利が上がった状態で購入となれば、結局、物件価格が高くとも、金利が低いタイミングで購入していた方がお得だった、となりかねません。

加えて、住宅ローンにまつわる税制も毎年のように改正されるため、値下がりを待っている間に、減税や控除といった恩恵が受けられなくなってしまうケースもあるでしょう。

いろいろと申し上げましたが、やはり重要なのは、「賃貸ではなく、なぜ家を買いたいのか?」という目的の部分です。それこそ、「ライフプランを考えても今後住み替えることはない」と思えば、売却時の心配はないわけですから、そこまで資産価値にこだわる必要もないでしょう。

いつも私も悩むのですが、ファイナンシャルプランナーという職業上、最終的に、長期間無理なく幸せに暮らせそうなご提案に落ち着きます。マイホーム選びは、資産性と感情の両方が入り混じるもの。ニュースや業者に煽られることなく、冷静に、慎重に、ご家族と「目的」に何度も立ち返って考えてみていただきたいと思います。

構成=小泉なつみ

高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年前後のお金の強化書』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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