1. トップ
  2. 恋愛
  3. 「週3でいいから親父の面倒見て」元気な60代と結婚した30歳女性がわずか半年で離婚を決めた"想定外"の事情

「週3でいいから親父の面倒見て」元気な60代と結婚した30歳女性がわずか半年で離婚を決めた"想定外"の事情

  • 2025.10.28

年の差婚では、何に気を付けておいたらいいのか。離婚や男女問題に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「結婚生活は、相手の家族の問題を避けて通ることはできない。特に年の差婚は、相手の親が、自分の祖父母世代かもしれないという視点を持っておく必要がある」という――。

※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。

結婚式
※写真はイメージです
「若くておしゃれな60代男性」と結婚した30歳女性

A子さん(30歳・会社員)は、60代の男性と結婚しました。

夫とは、行きつけの飲み屋で知り合いました。最初の妻とは死別していて子どももなく、しばらく独身だったそうです。見た目は若くておしゃれで、A子さんとは映画という共通の趣味があって、話も弾みました。

飲み仲間として接するうちに、一緒に映画を見に行くようになり、さらに交際に発展して、気がつけば半年ほどで結婚を決めていました。

飲み屋の常連仲間からは祝福されましたが、職場の同僚や学生時代の友達からは、「親子みたいに年上の人と結婚して大丈夫?」「介護になったら大変そうじゃない?」と心配されました。

「年の差はあるけど、本人は若くて健康だし、介護とかはまだまだ先の話でしょ」と言っていたA子さんでしたが、結婚して一緒に暮らすようになるとすぐに、現実の重さを痛感することになりました。

突然「親父の面倒見に行って」

結婚するとすぐに、夫はさらりと言いました。

「少し仕事セーブして、親父の面倒見に行ってやってくれない? 週2、3回でいいから」

A子さんは驚きました。夫の母は3年前に亡くなっています。父は存命でしたが、すでに80代後半で、高齢だからということで結婚前にも特に挨拶をしていませんでした。

義父はてっきり老人ホームに入っていると思っていたのですが、話を聞くと、近くに一人で住んでいるそうです。かなり認知症が進んでいて、身の回りの世話が必要な状態で、夫がたまに面倒を見ていたと聞かされました。

そのことを初めて知り、「私が介護するってことなの?」と思わず言いましたが、夫は「親の介護は嫁がやるものだろう」と言って、まったく取り合いません。

見た目は若いが保守的だった夫

また、結婚してわかったことでしたが、夫は家事を全く手伝ってくれません。見た目の若さとは裏腹に、いわゆる「男は外で働くもの、女は家を守るもの」という強い価値観の持ち主でした。

義母が生きているうちは掃除に来てもらっていて、食事は全て外食で、A子さんがいると皿を下げることすらしないタイプです。だから飲み屋にいつもいたのか……とA子さんは納得しました。

そんな夫だから、結婚したら父親の介護も当然妻がやるものと思っていたのです。

A子さんは一度は仕事をセーブして頑張ろうとしました。

しかし、仕事と家事をこなす上に慣れない義父の介護をするのは、想像以上に負担が大きいものでした。

夫は何も手伝ってくれません。会話は噛み合わず、何を言っても「昔はみんなそうだった」「甘えすぎ」と言われるばかりです。

義父の介護は想定外だった

夫婦の会話は減っていき、共通の趣味の映画を楽しむどころではありません。A子さんは次第に心がすり減っていきました。

このまま義父に本格的な介護が必要になったら、仕事を辞めて介護に専念しないといけなくなる……。

限界を感じたA子さんは夫に離婚したいと言いましたが、「親父を見捨てるのか」と言われて、応じてもらえません。

A子さんは実家に帰って別居を始めて、私の事務所に離婚の相談にいらっしゃいました。

A子さんは年の差は覚悟していたけれど、義父の介護は想定外だったと話しました。「義父の介護が数年で終わったとしても、そこからまた数年で夫の介護が始まるかもしれないと思うと、やっていける気がしません」とおっしゃいました。

夫「母が亡くなり不便だから結婚」

夫とのLINEを見せてもらうと、夫は頑なに離婚に反対していました。依頼を受けて離婚協議を始めても、夫は離婚を拒みました。

「人として未熟だ」「親の面倒も見られないようなやつと結婚した覚えはない」と言い、さらに「もともと3年前に母が亡くなって、不便だから結婚相手を探していた。なのに離婚されると話が違う」と言い出したのです。

夫は別居前までは生活費を渡していましたが、A子さんが別居すると生活費の支払いを止めました。

本来であれば離婚の成立まで別居中の生活費(婚姻費用)を請求することができますが、A子さんはそれでも早く縁を切りたいという気持ちが強く、金銭的な条件にはこだわらず、離婚成立を優先したいと言いました。

婚姻期間は半年と短いので財産分与もないため、粘り強く夫との交渉を重ねて、最終的に離婚を成立することができました。

離婚届を突きつける女性
※写真はイメージです
「年の差婚」と介護問題

年の差婚では、価値観の違いが問題になります。年齢が10歳違うだけでも育ってきた時代背景や男女観はかなり異なりますが、さらに大きくのしかかってくるのが、家族関係やライフステージの違いです。

特に、義両親との年齢差はそのまま介護の問題としてすぐに現れます。

同世代の人と結婚する場合と比べて、年の差婚の場合は、相手の両親の状況をあまり気にしないことが多いそうです。自分とは祖父母ほど年が離れている相手だから嫁姑問題はないだろうと思いきや、すぐに介護の問題が出てきてしまうのです。

「見た目が若いから大丈夫」「趣味が合うからなんとかなる」と思っていても、実際に生活を始めると、ちょっとした感覚の違い、埋めがたい価値観の違いが次々に浮き彫りになります。

そこに介護のような重いテーマが絡むと、一気に離婚の引き金になることもあります。

車椅子を押して歩いている介護者
※写真はイメージです
相手の親は自分の祖父母世代かもしれない

年上の人と結婚すること自体は悪いことではありません。

けれど、その人の親は自分の祖父母世代かもしれないという視点を持っておくことが大切です。

恋愛関係としては成り立っても、結婚生活は日々の現実の積み重ねです。家族の問題を避けて通ることはできません。

だからこそ、年の差婚を考える際は、本人の見た目や性格だけで判断せず、家族も含めた10年後、20年後の生活まで想像してみることが必要です。

堀井 亜生(ほりい・あおい)
弁護士
北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。

元記事で読む
の記事をもっとみる